ゴーレム工房営業開始
「で、仕事って何なんだ?」
イスに座り、幸作はそばに立つサンディを見る。
「えーと。今回のお仕事は、街の美化運動に使えるゴーレムの作成です」
「街のってことは、かなり大きい仕事じゃないか。よく取ってこられたな」
幸作は職人としての地位が低い。
この街に居着いてから日が浅いことと、後ろ楯や職人仲間がいないことが影響しているのだが、全てを失って転生しているので仕方ないことだと幸作は割りきっていた。
「はい! 頑張りました! ……でも、実はご主人様に確定したわけではなくてですね」
サンディは言葉尻を濁し、眉をハの字に下げた。
「どういうことだ?」
サンディが言いにくそうにしていたので、幸作は聞き返して先を促す。
「……今回のお仕事は他の職人たちも参加することになってまして、作成したゴーレムを見てどのゴーレムを使うか決定するそうです」
「ああ、つまりコンテストみたいな……」
「はい……。すでに参加者が決まっているところに掛け合って、どうにか参加権利だけは取ってきたんです……」
サンディはショボンとする。
「何故そこでテンションを落とす。参加をねじ込んできたんだから十分凄いじゃないか」
幸作は手を伸ばしてサンディの頭を撫でた。
「そうですか?」
サンディはうつむきがちのまま、上目使いで幸作を見た。
男とはいえサンディの可愛さは抜群で、潤んだ瞳がさらに可愛さを演出する。
「お、おう」
思わず心臓が跳ねたが、幸作はそれを無理やり頭から追い出した。
「それに、俺は別に働きたくな……ゴホンゴホン」
本音を言いそうになり、幸作は咳払いで慌ててごまかした。
「ありがとうございますご主人様! やはりご主人様はお優しい人です!」
サンディがギュッと幸作に抱きつく。
「はいはい」
幸作はサンディの背中をポンポンと柔らかく叩いてあげた。
「大好きです!」
「はいはい」
「結婚して下さい!」
「はいは……おい」
「……ちっ。おしい」
サンディは舌打ちをして、幸作から離れた。
「えーと、それでコンテストまでの期限は一週間です。他の参加者はもう準備期間中で、ご主人様は日数的な不利がありますが、そこはボクがいますので大丈夫ですよね?」
「まあ、そうだな」
サンディは3Dプリンターの付喪神だけあって、3Dプリンターの能力を有していた。
このゴーレム工房に置いてある美少女フィギュアも、サンディで作ったのである。
サンディのおかげで、幸作は異世界でもオタクライフをそこそこ楽しめていた。
「ボク頑張ります」
サンディはこぶしを上げて、フンと鼻息荒く気合いを入れた。
「おう、頼むぞ」
ゴーレム工房営業開始である。