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花火の下で 詞織ver.

作者: TITAN

 おはこんばんちわ! なんだか夏にこれと同じ話で男視点の作品を書きましたが......。


 そのときに前書きで"時間があれば視点変更して書きます"と書いたなーと思い、出来た作品です。

 後日談? 書きますよ、時間があれば......。

 その日は、夏祭りまで後少し、というそれだけの何もない普通の日でした。

 ただ、友だちの浜松(はままつ) 向日葵(ひまわり)――ヒマから、電話が掛かってきて話していた途中に、いきなりヒマからこんなことを言われるまでは。

 ちょっと思い出せば、こんな感じだったと思います。


  ◇  ◇  ◇


『もしもしー、元気してる~?』

「元気だよ。ヒマは? どうしたの?」

『元気元気、ありがと。いやさ、夏休みももう終わりだねーって思って』

「そっか。うん……そう、だね」

『でも、八月最後の日の夏祭り? 行くよね?』

「うん。今年も家族とかな」

『はい!? ……あんたさ、折角だから誘いなよ』

「っ……。だ、誰を?」

『決まってるじゃなぁい! も・ろ・ぼ・し君!』

「! ふぇっ……」


  ◇  ◇  ◇


 あの後私はすぐに通話を切ってしまいました。それから、その後にきたヒマからの電話も無視してしまいました。

 そ、それより私は、諸星(もろぼし)のことなんか……うぅ。

 ……。小学校の頃から好き……かもですけど、嫌われているはずなんです。

 だって、彼と目が合うと緊張して、キツい言い方になってしまうし、目つきも鋭くなっちゃうから。

 絶対よく思われてないよー……。


 けど、ヒマの言うことももっともです。今度は私から、ヒマに電話をかけました。

 私は自分でも分かるくらい顔を真っ赤にして、彼女に頼みました。


 「えっと……その、お祭りに……諸星のこと誘って欲し、い……んだけど」

 

 それに対して、ヒマは自分のことのようにすごく喜んでくれました。

 そして通話は切れて、数分後にまた電話が来ました。

 内容は、私が来ることを教えてないこと、それと宿題を貸すので私に代わりに渡してほしいとのこと。

 これは私を思ってのことなんだろうけど、きっとまた失敗しちゃうな、と心のどこかで悟っていました。


  ◇  ◇  ◇


 次の日、私はヒマから受け取った紙袋を持って、駅で待っていました。紙袋の中には宿題が入っています。

 そわそわしながら待っていると諸星の姿が見えました。私は、彼が気づいてないのを良いことにずっと見つめてしまいました。

 それのおかげ――せいで、目があってしまいました。私は昨日ヒマに言われたことを思い返しました。


 『笑顔が大事だからね! 笑顔だよ!』


 下を向いて、笑顔、笑顔……と繰り返しているうちに彼は目の前に来ていました。

 

 きゃー! なんだか胸の奥がきゅう......ってなって、もう、心臓の音が周りの人に聞こえているんじゃないか、ってほど心臓が動いてました。

 顔が近づいただけでもこんなになるほどなのに、話しかけられてしまいました。


「なぁ、浜松見てないか?」


 そう言われて、少しヒマに嫉妬してしまいました。いえ、これが不相応な感情だってことくらい自分でも分かります。

 だって、諸星はヒマと約束をしてここにきたのです。決して、私に会いに来たのではありません。でも、少しくらい私に興味を持ってもいいと思うのです。せっかくおしゃれしてきた……あっ、うー……、せっかくおしゃれしてきたのに!


「あの、市姫(いちひめ)?」


 ずっと下を向いていたからでしょう。諸星は私の目の前で、手をぶんぶんさせています。

 名前を呼ばれて驚いた私は、手に持っていた紙袋を諸星に突き付けてしまいました。あんなに笑顔で、


「ヒマは今日用事が出来たから私が来たの」


 って言う練習をしていたのに。……諦めよう。

 私にはそんなハードルの高いことは出来ません。でも、せめて笑顔になれたらなぁ……。

 そんな私の願いに反して私は余計なことを言ってしまいました。


「ヒマ、体調崩したって……。だから、私が」

「そうか、ありがとな。浜松大丈夫なのか?」

「っ……。別にあんたに心配されるほどじゃない。宿題写すとか……馬鹿じゃん?」


 あー! 違うよー! こんなこと言いたいんじゃないの!

 私はいたたまれなくなって、速歩きで逃げ出してしまいました。角を曲がったところには、ヒマがいます。彼女は私の心配をしてここから見てくれていました。

 さっきの一部始終を見ていたヒマに言われました。


「あんなに練習したのにねぇ……」

「あぅ。ご、ごめんなさい......」

「いいよ。素直になれないところも可愛いしね。ところで詞織、浴衣持ってる?」

「え? ううん。持ってないよ」

「じゃ、買いにいこう」


 え? え? なんで、どうして? 分からないままお店に連れていかれた私は、そのときの店員さんの一言で理解しました。


「あら、もしかして......夏祭りに彼と行くの?」


 私は固まってしまいました。否定しようとしたらすでにヒマが、

 「そーなんですよー。もー本当この子ったら素直になれなくってー、ようやくデート出来るんですよねぇー」

 と、笑いながら答えているではありませんか。

 デ、デートじゃないよ……デートじゃないもん……。でも、諸星と一緒に出掛けられたらきっと楽しいだろうなぁ……。迷惑かけてばっかになっちゃいそうだけど……。


 浴衣を買った後も、ヒマと色々なお店を見て回り、楽しみました。

 この浴衣は似合ってるのかなあ。ヒマは、これで諸星もイチコロだね! なんて言ってくれたけど……。


  ◇  ◇  ◇


 次の日は登校日でした。これは31日に祭りに参加してもらいたいから、だそうです。けれど去年までは、縁がありませんでした。

 というのも、えっと、諸星のことが好、き……なのは小学校のときあることがあったからなんです。

 けど、中学校は違う学校だったし、高校で逢ったときも最初分からなくて……。だから人生で初めて、その……男の子と夏祭りに行くんです! 


 この日は、誰かを祭りに誘うチャンスなのですが、守川くんの近くにはたくさんの女の子がいました。その後ろでは諸星が帰りの支度をしています。

 ホントは、私から言いたいんだけどなぁ……。でも、残念なことに私の周りにも、同じクラスや違うクラス、上の学年の男子がたくさんいます。

 この人たちを一斉に振って諸星を追いかけるようなことは、私には出来ません。


 私よりも、いい人はいっぱいいるのに、なんでだろう。それに、私はこの人たちの誰かを好きになることはきっとないでしょう。つまり、彼らは報われない恋をしているということになります。そしてそれは私も同じ。

 きっと諸星が私を好きになることはないでしょう。

 でも、この小学生のときからあるこの気持ちだけは伝えたいのです。

 それに、結果がどうであれ、私には夢があるんです――。


 その日は、疲れていて家についた途端寝てしまいました。


  ◇  ◇  ◇


 私は小さい頃から――小学校のときに出来た夢は、告白するときは花火のとき、と決めていました。そして、それを今日叶えるつもりです。

 

 私には、父親がいません。それは、私が小学生のとき離婚したからです。

 ええと……確かあれは小学校4、5年生のときだったでしょうか。離婚(それ)のせいで私の名字は井田から市姫になりました。出席番号が変わることはありませんでしたが。

 そのとき、いじめられていた私をよく助けてくれたのが諸星――冬くんです。


 早い話、冬くんのことが好きになりました。

 子どものころは冬くん、冬くんって話しかけることが出来たのに……何で出来なくなっちゃったんだろ。


 いろいろと考えながらヒマと一緒に浴衣に着替えました。

 お母さんもヒマも、可愛いって言ってくれたけど……諸星はどう思うかな?

 可愛いって言ってほしいなぁ……なんて。

 

 ヒマが教えてくれた場所に行くと、諸星がいました。

 足音で気づいたのか諸星が振り向きました。

 そして、その顔はすぐに何故ここにいるの? っていう表情になりました。当然です。私がいることは知らないのですから。


 諸星は怪訝な顔をしながらも話しかけてくれます。

「よ、よう市姫、どうしたんだ?」


 えぇっと、確か笑顔、笑顔……。  

「……えがお……」


 あっ! 口に出ちゃってるよう。聞こえてない、よね……?


「あの」


 諸星は、何かを言いたそうにしています。


「っ! こん、ばんは」


 うわー、ちゃんと話せないよぅ。どうしよ、どうしよ。

 それでも、諸星は話しかけてくれます。

 でも、これって話すっていうのかな。


「? ……ああ、こんばんわ」


 もう帰りたくなってきちゃったなぁと思ったとき、後ろで声がしました。

「詞織ー! 諸星くーん!」

「っと、浜松」

「ごめんね、ホントは別の子が来るはずで」

「そうか……」


 ヒマが嘘の状況を説明してくれました。でも諸星は、


「帰ってもいいか?」


 なんて言いました。でも私には帰らないで! とも言えません。それにもヒマが対応してくれました。

 帰っちゃ嫌です……。けれど、それも仕方ないことですよね。だって諸星は私に苦手意識を持っているのですから。なら、私と一緒に居たくない理由も分かります。


「なんでさ?」

「だって友だちと二人でいた方が楽しいだろう?」

「……うーん、せっかくだから行こうよ! それで楽しくなかったら……その、帰ってもいいから」

「分かった」


 諸星は渋々納得してくれました。でも、楽しくなければ帰っちゃうそうです……。


「な、なあ市姫ってさ兄弟とかいるのか?」

「……別に」

「じゃあ家族は? 仲いいのか?」

「……私、父親がいないの。小学生のとき離婚したから」

「……そうですか」


 こんな感じで諸星は話題を振ってくれたのに、特に進展もせず、むしろ後退してしまいました……。


 兄弟がいないのは仕方ないとして、家族がいないのはわざわざ言う必要もなかったのに。

 ましてや、離婚の話なんてもっとどうでもいい話です。それからは、ヒマがいろいろしてくれました。

 けど、さっきの話で気分が下がってしまい、つい携帯をいじってしまいました。ちなみに携帯の画面には『気になる人との接近方法10!』という、頼りになるのかならないのかわからないサイトを見てました。


  ◇  ◇  ◇


 祭り会場に着いた途端、ヒマが帰ってしまいました。私を思ってのことなんでしょう。実際には、帰ってすらいなく、どこかの物陰で見ているのでしょう。このあとの作戦もありますし。そういえば、さっきのサイトは大変興味深いものでした。えーと確か……。携帯を開いて確認しました。


「押すのが苦手なら……引く……」


 はっ! 口に出ちゃってたかな? ……聞こえてないといいけど……。うーんと、引くってなんだろ? とりあえず、ここを離れよう! これ以上諸星の隣にいたら、自分の熱で死んじゃいそうだよぅ。


「……あっち行ってくる」

「え? あ、ああ。気を付けろよ」

「っ! な、なに言ってんの?」


 ふわぁーん! ど、どうしてそんなこと言うの? いつもは言わないくせに……。うぅ、心臓が激しく動いて顔や体が熱くなっていくのがわかりました。本当に諸星――冬くんのことが好きなんでしょうね……なんて他人事のように考えてみましたが心臓の動きがおさまる気配はしませんでした。


「詩織、ここからが本番よ」

「本当にやるの?」

「もっちろーん!」


 諸星がいるところから少しだけ離れた場所で、ヒマと会いました。偶然ではなく、必然的にです。

 

 ここからが本番というのは、ある作戦のことです。物語の世界ではよくある、女の子が絡まれている所を、助けるとかいうものです。はい。

 打合せした通りにヒマが手招きすると恐そうなお兄さんたちが数人木陰から出てきました。本当にヒマの人脈はどうなっているんでしょう?


「あんまり恐がらないでね。普通に大学生になって浮かれて髪染めちゃった馬鹿な人たちだから」

「相変わらずひどいな、向日葵!」


 ヒマとお兄さんは、仲良くお喋りしています。どういう経緯で、知り合ったんでしょうか。


「さて、ちょっとだけ恐い思いするかもだけど。ごめんね」


 お兄さんは、ウインクしながら言いました。爽やかなイケメン、という言葉が似合いそうです。

 ……諸星と比べると全然だけどね? だって、私の一番は彼なのですから。


  ◇  ◇  ◇


「この辺でいいか……。市姫さん、ちょっとこの木に寄りかかって。汚れちゃわないようにね」


 心配されながらお願いされました。

 そして、言われた通り寄りかかると――。


「おいっ! どうしてくれんだよ!」


 寄りかかった木に拳を打ち付けて言いました。遠くも近くもないところにいる、諸星に聞こえるか聞こえないかぐらいの声量で。


 設定は、私とぶつかったときに、私の持っていた物がぶつかり、服が汚れてしまった、というまた何ともいえない物語ではよくある話です。

 少しビックリしましたけど、すぐに顔を伏せて申し訳なさそうにしました。諸星を不信にさせない為の演技です。

 これを見て、助けに来てくれるのが理想ですが、そもそも捜しに来てくれないことには始まらないのです。


 けれど私には確信がありました。


 小学生のときと比べるのはアレですが、あのときの性格が少しでも残っていてくれたら……きっと助けてくれるはずです。

 それでも、助けに来なかった場合は何とか逃げたけど追い付かれた、という脚本もあります。

 と。


「あっ……」

「ん、どうした? 来た?」

「はい。でも……」


 諸星は迷っているようでした。でも、少しすると、覚悟を決めたような顔で近づいてきました。


「あのー、なにしてるんですか?」

「あ"あ"?」


 お兄さんは威嚇するような声を出しました。諸星は恐がりながらも、


「警備員呼んでもいいんですよ?」

「ちっ……。こいつが俺の服汚したんだよ!」

「そ、そうなんですね。それで、要求は?」

「クリーニング代だ」

「じゃあ、払います」


 冷静に対処していました。カッコいいです。

 ちなみにお兄さんが提示した料金は二万円でした。幾らなんでもそれはひどい気がします。

 お兄さんが見えなくなって、


「はぁ……」

 

 諸星は座りました。ここまでがヒマの作戦です。ここからは私自身が頑張らなければなりません。とりあえず、お礼かな。


「そ、その、あり、がと……」


 つっかえながらも、何とか言えました! けれど、


「ん? あぁ、もういいよ、疲れた……」


 諸星は、疲れた顔で言いました。うぅ、こんなことになったのは私に勇気が無いのが悪いんです……。でも、私は今日、この気持ちを伝えるつもりなのです。結果は何となく分かりますけど。

 とりあえず私は、


「諸星、ごめん!」

「? どうして市姫が謝るのさ」

「ぁ……その、お金……」


 謝りました。どうして、と返されてもこの原因を作ったのは私です、何て言えるはずもないので『お金』について謝っておきました。


「あー、気にしなくていいよ。元々いっぱい持ってきたしな」

「そういうことじゃなくて……」


 そこまで言ってはっとしました。こんなことを言って深く追求されたらどうしようかと思いましたが、諸星は少し考えて、それから言いました。


「……じゃあさ、質問に答えてほしいんだけど」

「……うん、いいよ」


 質問か。なんのことだろう?


「――俺のこと嫌いだよな?」


 …………へ?

 諸星は真面目な顔で訊ねました。その時の私には冷静さがありませんでした。だって、好きなひとに嫌いだよな、なんて訊かれて冷静でいられる女の子なんているわけないもん!


「ふぇっ!? ちちち違うよ! 嫌ってないよ!」

「じゃあ、なんで授業中俺のこと睨んでるんだ?」


 !? 気が付いてたの? どうしよう! 何て言えばいいいのかな!?

 私は声にならない声をあげて何とか言いました。


「~~~~ッ! 睨んでるわけじゃ……。えっと、その。諸星、あっち行こ!」

「え? おい、ちょっ……」


 少しやりすぎてしまったかもしれません。いくらなんでもいきなり手を引くなんて……。

 私たちは屋台が並ぶところまで来ました。


「なあ市姫。手」

「? !? ごめん!!」


 ふり払われてしまいました……。いえ、さすがに自分でもおかしいことをやってるとは思いますよ?

 でも、しばらくは繋いでいたかったなぁ、なんて。

 そのあとしばらくお祭りを楽しんだはずなのですが……少し記憶がありません。けれど私のお気に入りの場所に誘ったことは憶えています。


「えへへ、ここ! すっごい綺麗に花火が見えるんだよ! 私とヒマだけの秘密の場所!」

「そんなところ、俺に教えてもいいのか?」

「う、うん。諸星はその、特別……だから」


 かなり気分が昂揚していて、いつもみたいにドキドキせずに諸星と話せました。それに途中でヒマからメールが来たのですが、内容は、


『なんだ、諸星君の前でもいい笑顔できんじゃん!』


 とのことでした。

 そんなによかったのかな。ていうかどこから見てるんだろう?


 私は、携帯のさっきのサイトを見て、少しだけ間をおいて、彼の名前を呼びました。


「冬くん」


 たった数文字なのに、どうしてこんなにドキドキするのでしょう、胸が熱くなるのでしょう、顔が真っ赤になるのでしょう。

 それはすごく簡単で難しいことです。人間(ひと)であれば、誰しもが体験することです。誰もが持っている権利です。自分が誰かを好きになることは――素敵で、美しくて、素晴らしいことなのです。


「えっ?」

「あぅ……。その、大事な話……していい?」


 心臓が動きすぎてもう死にそうです。それを押さえようと、誤魔化そうと必死に彼の目を見ました。


「ああ」

「何から話そう……私、小学校のときに親が離婚したって言ったよね。それで、名字が変わったの」

「そう、か……」

「やっぱり、覚えてないか」


 残念だけど仕方ないかな。


「それで、その……前の名字は井田っていうんだ」

「井田って、あの、よくいじめられてた!?」

「……うん。冬くんはいっつも助けてくれて。遅くなっちゃったけど。ありがとう」

「ッ! い、いや。あれくらい別に。はは」


 どうやら思い出してくれたみたいです。嬉しいな。

 でも、それと一緒に疑問も浮かんだらしくて、


「うん? じゃあ、なんで授業中睨んでんだ?」

「えっと、それは、その、見てただけ……なの」

「……そ、そう」


 う、やっぱり見てたの気づいてたんだ。睨んでるように見えてたようです。ショックです。


「なあ。宿題渡したときにさバカみたいって言ってたよな」

「……う、ん。怒ってる?」


 少しだけ、聞きづらそうに言いました。それに、ああ言ったのは――。ちょっとだけ、ヒマに嫉妬したからなのです。

 そう言ったら、冬くんは黙っていました。ほんの少し顔が赤かったような気もしますが、それはお互い様です。


「……それとさ。祭りに誘ってきた男子たちを振ったあと、すごい哀しそうな顔してたけど」

「あ、あれは、せっかく勇気を出したのに報われない人もいるんだなって思ったら……。ほら、私も片想い中だし。だからかな。応援してあげたいけど私以外の人となら良いのにって」

「優しいんだな」

「ありがと……」


 ……。どうすればいいのでしょう、静寂が流れて、私たちは沈黙しました。


 報われない人。それは私だって同じはずなのです。でも、期待している自分がいます。この恋が叶えばいいのに、と。冬くんも私のことが好きだったらいいな、と。


 沈黙を破ったのは、私でも冬くんでもなく――。

 花火でした。


 花火は、美しいです。一番高いところまで行ったらはじけて、きれいな花を咲かせて、なくなってしまうのです。

 小学生の時あるドラマを観ました。花火が打ちあがっている中、プロポーズするという……そのシーンしか観れませんでしたが、そのときの私には素晴らしいシーンに見えました。

 そして私に夢を与えたのです。


「諸星、私さ。夢があるんだ」

「夢?」

「うん。子どもの時からの夢。告白するときは、花火の下でっていう子どもっぽい」

「そうか。いい夢だな。子どもっぽくなんかないぞ。ずっと願ってるんだろ?」

「うん、もうすぐ叶うけどね」


 決心しました。覚悟も決めました。もう、誰にも止められません。

 今から私は、冬くんに一世一代の告白をします。


「……よし! 諸星冬彦君、ずっと前からあなたのことが好きでした!」

第三回! 


 文学少女シリーズ知ってますか?

 少し前のライトノベルですが、学校の図書室にあって暇だったから借りたら......。


「めちゃくちゃおもしれえ!」――と電車の中でやや大きめの声で叫びましたよ。ええ。人が少ない列車と時間で良かった......。

 文学少女は物語、つまり紙をむしゃむしゃ食べちゃう女の子と、振り回される後輩の男の子の物語です。

 シリアスでコメディですね。時間があれば是非どうぞ。


 誤字脱字などあったら、教えてください。

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