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5日目

 5日目の朝、俺は寝坊してしまった。

「何で起こしてくれなかったんだよ!?」

 と、俺はリビングで平日の朝にやっている幼稚なアニメを観ている楓に訊ねた。

「五月蝿い、黙れ」

 ・・・・・・忘れていた。楓はアニメを観ている時は誰とも口を聞きたがらないのだ。

 俺はテレビの前に行き、主電源をオフにした。

ゴン!──楓の投げたテレビのリモコンが俺の頭に当たった。

「痛っ、物投げるなっ、物!」

「望くんが消すからいけないんだよ!」

「消される様な態度を取るお前も悪い」

 楓は俯いた。

「一寸来い」

 俺は警戒もせず、楓の下に行った。

 すると楓は顔を上げてニヤリと笑って立ち上がり、俺の腹に拳をお見舞いした。

「ぐはっ!」

 俺は勢いよく吹っ飛び、テレビにぶつかってそれを破砕した。

「痛。俺お前に何かしたか?」

「何度も起こしたのに起きなかった」

 楓は俺を睨んだ。

「ごめん・・・」

 俺は取り敢えず謝った。楓の御機嫌が斜めだったから。

「早く支度して頂戴。学校行くわ。まぁ、今から行っても1限は間に合わないでしょうけど」

 俺はふと時計を見た。短針は9、長針は6を指していた。

「うん、一寸待ってて」

「解った。じゃあ先に外出てるね」

 楓はそう言ってソファに置いてあるスクールバッグを取って家を出た。

 俺は2階に上り、支度を済ませて外に出た。

「望くんっ、遅い!」

 プクッと膨れる楓。怒られてしまった。

「先輩、お早う御座います!」

 その声と共に俺にゾッコンの白川 聡美が現れた。

「出てくるのずっと待ってましたよ!」

 その言葉に楓は振り向き、白川に眼を飛ばした。

「何ですか先輩?」

 と、睨み返す白川。

 俺はそんな二人をよそにドアを施錠して「置いて行くぞ」と、二人の横を通過して学校に向かった。

 学校に着くと、俺達三人は校門の前にいた教師に捕まった。

「お前達、今何時だと思ってるんだ!?」

 教師は時計を見ると、

「もう10時だ!トックに2限始まってるぞ!」

 その時、楓が教師を睨んだ。

「何だその顔は!?文句でもあるのか!?」

「五月蝿えんだよ糞教師」

 楓はそう言って教師を蹴り飛ばした。

 教師は数メートル程地面を転がった。

「ちょっ、今のはまずいんじゃ・・・?」

「良いの良いの。それより早く教室に行こう?」

 楓は俺を見てニッコリと笑った。

 やれやれ。

 俺は片手を額に当てた。

「ほら、何してるの?」

「うぉ!?」

 楓は俺の手を取り、校舎に駆けた。

「先輩、待って下さーい!」

 と、白川が後を追う。



 放課後、俺と楓は教室で補習をしていた。

「むむむ・・・」

 楓が課題用紙を睨みながら唸り声を上げた。

「楓、どうした?」

「よくぞ聞いてくれた!実は答えが解らないのだよ」

 楓がそう言って課題用紙を俺の前に置いた。

 無回答だった。

 言い忘れていたが、楓はバカの固まりだ。全教科の試験点数は0点。小中高のテストで1点以上の点数を採った事が無い(本人談)。

 そんなんでよく高校を合格したな。一体どんな手を使ったのだろうか、疑問符。

「望くん、これやってくれない?一生のお願い!」

 楓が手を組んで頭を下げた。

「一生ってお前、もう死んでるだろ」

「じゃあ、一死?のお願い」

 やれやれ。

 俺は楓の補習課題に手を付けた。

 どうして俺は楓にあまいんだろう、疑問符。

ガラガラ、トン──扉が開き、「先輩、一緒に帰りましょう!」と白川が入って来た。

「悪いな白川、今補習やってるんだ」

「えっ、どうしてですか?」

「遅刻したからだ。それよりお前はやったのか?」

「私は、やってないのです」

 白川はそう言ってニパッと笑った。

「何故やってないんだ?」

 その問いに白川は「面倒だからです」と答える。

「望くん、手が止まってる」

「あっ、悪い悪い」

 俺は慌てて楓の補習課題を再開する。

「あの、所で先輩は、何故お隣の方のを?」

「何でだろうね」

「何でって、やってるからには理由があるんじゃ・・・?」

「無いよ。てか何でやってるのかが解らない」

 そんな事を言ってる間に、楓の分の課題が終わってしまった。

「ほらよ」

 俺は楓に用紙を渡すと、自分のをチャチャッとやって終わらせた。

 さて、帰り際に職員室に寄って行こう。

 俺は席を立ち、帰り支度をして教室を跡にし、職員室に向かった。

「待って望くん、置いて行かないで」

「先輩、待って下さい」

 と、二人が俺を追い掛けて来て横に並んだ。

 両手に花とはこの事を言うんだろうな。

「ねえ、望くん?」

「何だ?」

「帰ったら何して遊ぶ?」

 楓が俺に訊ねると、白川が俺を左側に移動させた。

「駄目です!先輩は私と遊ぶ約束をしてるんです!」

「何言ってるのよ!?」

 今度は楓が俺を自分の右側に移動させた。

「望くんは私だけの物よ!誰にも渡さないから!」

 お互いの目から細い光線が出てバチバチと火花を散らせる。

「否、俺は誰の物でも無いし」

 すると楓は俺の唇に人差し指を置いた。

「命令よ。望くんは黙ってなさい」

 俺は「はい」と返事をして口を閉ざした。

「白川さん?」

「何ですか?」

「明日の放課後、屋上で待ってるわ。望くんを賭けて決闘よ」

 はぁ!?

「面白いですね。良いですわ。その勝負受けて立ちましょう」

 何乗ってんだよお前!?つうか俺は戦隊物の人質か!?

 こうして、俺を賭けて、楓と白川は、明日の放課後、決闘をする事に為った。




楓帰還迄、後2日!



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