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7日目(後編)



期待を裏切ってしっくり来ない最終話です。



 体を洗い終わり、浴槽に入ろうとすると、天井が破壊されて何かが落ちてきた。

 その何かは、湯気の所為で解らないが、恐らく人であるのは間違い無いだろう。

 その人影は立ち上がると、俺の下にやって来た。

 同時に正体がハッキリする。

 その正体は柊沢 楓。って、一寸待て!

 楓は今、浴槽に入ってる筈じゃ・・・。

「どうしたの?」

 楓?が首を傾げて俺に訊ねる。

「お前、楓なのか?」

 俺のその問いに楓は「そうだよ」と即答する。

「じゃあ、あそこに居るのは?」

「あれは白川 聡美だよ」

「え、マジ?」

 俺は騙されたと思いながら、浴槽に入ってる少女を確認しに行こうとした。が、楓が俺の腕を掴んで引き留める。

「望くんは私以外の女に近付いちゃ駄目」

「強制しないでくれる?」

「嫌だ」

 うおっ、こいつ楓じゃん!

「あ、そ。で、何しに来たんだ?」

「望くんをたぶらかしたあの女に制裁を加えに」

 そう言って楓は拳をポキポキ鳴らす。

「辞めないか、そう言う事?」

「どうして?」

「一応、此処は公共の場だから、騒ぎを起こすと後々面倒だからな」

「私には関係無い」

 楓、爆弾発言其の一。

「じゃ、そう言う事だから制裁加えてくるね」

「じゃってお前な・・・」

 楓は俺に笑みを見せると、白川の下に移動した。

「一寸あんた!何、望くんを誑かしてるのよ!?」

「あら、これは柊沢さん。一体、何の御用で?」

「あんたを殺しに来たのよ」

「一寸待てー!」

 俺は慌てて駆け、二人の間に入った。

「退いて、望くん」

「否、退かない。つーか殺すのは辞めような?」

「じゃあどうすれば良い?」

「何もするな。仲良くするんだ」

「却下」

 楓はそう言うと、俺を横へ吹っ飛ばした。

「うっ」

 俺は壁にぶつかって呻き声を上げる。

 その直後、楓と白川の死闘が繰り広げられた。

「さあ、掛かってきて下さい。返り討ちにしてあげます」

「面白い。勝ったら望くんは返して貰うからね」

「良いですよ。まあ、あなたでは私に敵うはっ」

 そこまで言った所で、楓の鉄拳が白川の顔面に埋ずまる。

 白川は楓の手首を掴んで顔から退かす。

「不意打ちは卑怯よ」

 言って白川が楓に足払いを掛けた。

 楓はバランスを崩し、転んで水中に潜る。

 白川は水中に居る楓の頭を掴み、顔が外に出ない様、押さえ付けた。

「白川、そいつ多分死な無えぞ」

「そんな超人居ません。そもそも、人間、水中で呼吸が止まったら気絶して呼吸再開。肺に水が入って死亡です」

「否、それが無いんだよ。そいつ、もう死んでるから」

 とその時、楓が白川の体を蹴り上げて立ち上がった。

「誰が死んでるですって!?」

 そう言って俺を睨む楓。

 白川は空中で攻撃態勢に入り、楓目掛けて落下する。

 楓はひらりと身をかわし、タイミングを計って落下して来た白川に回し蹴りを放った。

「キャッ!」

 白川は悲鳴を上げて俺の下に飛来する。

「こっち蹴るなバカ!」

 俺はそう言って咄嗟に蹴り返した。

「んっ!?」

 驚いた楓が慌てて白川の体を蹴り飛ばす。

 白川は放物線を描き、床に背中を叩き付けられる。

「がはっ!」

 吐血する白川。

「白川!」

 俺は白川の身を案じて側に近寄る。

 白川は白眼を剥いて気絶していた。

 こう無防備だと、触りたい放題だな。

「触ったら殺すわよ」

 俺の考えを読んでいた楓が近付いてきてそう言う。

「触る訳無いだろ!?」

 俺はそう言いながら両手を前に出して振るう。

「嘘よ。触りたそうな顔をしてる」

「・・・嘘は吐けないね、俺」

「そんなに女の子の体が触りたければ、私のを触らせてあげるよ?」

「え、マジで?」

「うん。その代わりボコボコだけど」

「すみません。遠慮しときます」

「て言うか、それ仕舞ってくれる?」

 楓はそう言って俺の股間を指差す。

 俺は楓に背を向け、脱衣所に移動して体を拭き、服を着てロビーに出た。

「お返しします」

 と風呂セット一式を返却し、外に出る。

 外では楓が待っていた。

「そう言えばお前、今日でお別れなんだっけ」

「うん」

「寂しくなるな」

「うん。でもまた戻ってくるから」

「否、もう来なくて良いよ。殴られなくて済むし」

ガスン!

 楓は俺を殴って去って行く。

「待て待て。冗談だ」

 と俺は後を追って楓を捕まえた。

「俺はさ、お前に殴られると快く感じるんだ」

「そうなの?じゃあもっと殴ってあげる」

「否、それはっ」

 楓は俺が言おうとしたのを遮る様に殴る。

「うっ!」

 楓のパンチが腹に決まった。

「最高。今度は顔だ」

「本気で行くよ」

ガスンッ!

 楓の本気の拳が顔面に決まり、俺を倒した。

「どうお?気持良い?」

「おう、気持良い。今度は踏んで貰おうか」

「了解」

 楓は高くジャンプし、腹の上に落下して来る。

「がはっ!」

 俺は吐血した。

「ごめん、一寸強かった」

「か、構わんよ」

「そう。じゃあ次は?」

「跨がれ」

 楓はM字開脚で跨った。

「で、どうすんの?」

「後は好きにしろ」

「うん。じゃあ殺す」

「おう。って、それは駄目だ」

 しかし、時既に遅し。楓の手が俺の首に伸びていた。

「一緒に、あの世に逝こう?」

 言ってグッと首を閉める楓。

 俺は呼吸が止まり、次第に苦しくなっていってもがく。

 楓が首から手を離した。

「やっぱ辞めた」

 言って楓は立ち上がる。

「帰ろう、望くん?」

「あ、ああ」

 俺は起き上がり、立って楓と共に帰路に着いた。



 家に着き、中に入って冷蔵庫の前に来る。

「じゃ、帰るね」

「ああ」

 楓は冷蔵庫を開け、中に入って扉を閉めた。

 逝った、のか?

 気になった俺は、冷蔵庫を開けてみた。

 しかし、楓は居なかった。

 どうやって消えた!?

 俺は冷蔵庫を改めるが、怪しい物は見付からない。

「楓?」

 呼んでみるが、返事は無い。

 俺は冷蔵庫を閉め、その場を離れた。

 その時、冷蔵庫が開き、中から楓が飛び出して来た。

 俺は楓を巧くキャッチした。

「ただいま、望くん」

「迅えおかえりだな」

「何言ってんの?一年振りじゃん」

「時間の進み方が違うだけだ。俺はお前を見送ってから一分しか経ってねえ」

「マジで?良かったじゃん」

「ああ。で、今度は何時まで?」

「望くんが死ぬまでだよ」

「マジ!?やった!」

 俺は大喜びで跳び上がった。



おしまいっ


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