5.黒幕発覚!?
ゲーム二日目にして、事態は急変した。
今日も朝から神代先輩を待ち伏せては空振り、生徒会室に乗り込んでは空振りと昨日と何ら変わりない成果だったわけだが、放課後、とある人物に呼び出しをくらった。
その人物とは、かつて夕香達ミーハー集団を解散させた生徒会ファン代表の女の先輩だった。しかし今回の相手は一人。心配する夕香に軽く手を振り、私は彼女――佐倉田先輩についていった。
場所はプールの裏。季節的に誰も使わないので、秘密の話をするには持って来いの場所ではある。
佐倉田先輩はこちらを振り返り、茶色に染まった長い髪を掻き上げた。ちなみに、とても美人な先輩だと思う。
「……呼び出して悪いわね。アタシ、ホントはもうあなたと話したくもないんだけど」
いきなり攻撃を仕掛けられているのだろうか。まあ、去年のこともあるのだ。私だって同じ気持ちではある。
「単刀直入に言うわ。もう神代につきまとわないで」
仁王立ちで睨まれ、少し怯む。それにしても、予想通りすぎる展開だ。
「あなた、振られたんでしょ? ちょっと図々しいんじゃないの」
「私、告白してません!」
少しムキになって言い返すと、彼女は腕を組んで苛立つようにこちらを見た。
「あんたが告白したかどうかは問題じゃないのっ。振られたくせに、まだ神代と関わってることが問題なのよ! 昨日も公園で一緒にいたでしょう!?」
その迫力に息を呑む。
……ちょっと、恐いです。
というか、公園って。なるほど、神代先輩は佐倉田先輩を見つけたのかもしれない。
しかし、これは私にとってはかなり重要な問題だ。それに犯人さえわかれば、私だって彼に今後近付くつもりはない。
「好きで関わってるつもりはありません。ただ、神代先輩に私の名前でラブレターを渡した犯人を知りたいだけです!」
思いの限りを打ち明けると、佐倉田先輩は額に手を当て、何やらぶつぶつ独り言を呟き始めた。
「……よ」
「え?」
私に伝えようとした言葉のようだが、よく聞こえず聞き返す。
「アタシよ!!」
彼女の張り上げた声に、一瞬意味を理解するのに時間が掛かる。それはつまり、ラブレターの差出人のこと?
「あ、あの……佐倉田先輩が、あの手紙を……?」
「そうよ!」
ほほう……って、なんだその急なカミングアウト!! 堂々と胸を張りすぎだし!?
「どういうことなんですか!?」
「誰が言うもんですか!」
言わないんかい!?
「ちょ、ちょっと待って下さい! 何の意味があってこんなことを……!」
「とにかく!! ……これで神代に付きまとう必要もなくなったでしょ? 今後は一切、あいつに近付かないで!」
私の言葉を思いっきり遮ってくれたけど、それで納得できるか! 大体、佐倉田先輩がラブレターなんか書かなければ、私と神代先輩の接点なんてできなかったはずである。色々と勝手すぎやしないだろうか?
私はどうにか理由を聞き出そうと言葉を探していると、
「佐倉田さん!」
後方から声が聞こえた。振り返ればそこには、生徒会長の前園先輩がなんだか苦い顔でこちらを見ていた。
「ま、前園……!」
明らかに動揺し始める佐倉田先輩。
「何してるんだい?」
前園会長がこちらに歩いて来ると、佐倉田先輩は一歩ずつ後ろに下がり、
「別に! なんでもないわ! じゃあね!」
そう言って彼女は私を一瞥してから、走り去ってしまった。
一体なんなのだ。
「寺石さん、大丈夫?」
会長が心配そうにこちらに歩み寄って来る。
私はなんと答えてよいのかわからず、とりあえず頷いておいた。
「ごめんね。彼女、君に失礼なことを言ったんじゃないかな」
ええ、思いっきり。
……とはさすがに言えず「まあ……」と多少濁して返事をする。
前園会長は何か言いたげにその場に立ち尽くした。
「あの……?」
問い掛けると、会長は意を決したようにこちらを見た。
「彼女から何を聞いたんだい?」
簡単に言えば、神代先輩に近付くなということと、手紙の犯人は佐倉田先輩だったということだ。私はそのまま伝える。
前園会長は「そうか」と何やら納得し、「僕は――」と重苦しく口を開いた。
「今回の件について、大体の事情は把握してる」