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野に咲く華は愛される

作者: 紅葉

こんにちは。

この小説は夕葉が書いています。

私にとって初投稿です。

ぜひ読んで行ってください。

「野愛!結城くんが生徒会長に立候補したんだって。当選確実って言われてるらしいよ?」

そんな話を親友の由依から聞いたのはつい昨日のことだった。


何度か見かけたことのある顔も同じなのに今目の前にいる男とあの「結城利久斗」、が同一人物にはとても見えなかった。


結城利久斗はまず入学式から新入生代表でその時あまりに綺麗な容姿に会場がざわめいたものだ。

その後、テストでは今まで毎回主席。

優しく、人当たりもいいと聞く。


そんな人物がまさか、暗い路地裏一月の冷たい風が吹く中でホームレスを殴っているなんて…。


よくみると殴っているのは利久斗の周りにいる人間で、利久斗は直接手は出さずに指示だけしている。


「何してんのよ!?」


あまりの腹黒さに頭に血がのぼって怒鳴りつけると、全員がこちらを振り向いた。

さっきは暗くて見えなかったけど、5、6人の高校生くらいの男がいる。


「へぇー。君可愛いね~。お兄さん達と一緒に楽しいことして遊ばなぁい?」

金髪の男に 酒の匂いとともにかけられた声。

「嫌よ!」

そんなの嫌に決まってる。

即答すると金髪男はこちらに殴りかかってきた。

私の脇腹を狙ったらしい随分と甘い攻撃かわして逆に蹴り上げた。

飛ばされた男に他の男たちが怯んだすきに蹴りを繰り出す。

殴り返してくるやつもいたが、私の方が速い。

護身術を習っていたのだから、これくらいは出来る。


必死に応戦するが、人数が違うのでだんだんこちらが不利になってくる。


「……はぁ……っ!」


「まだやるか?」


その光景を利久斗はおもしろそうに眺めていた。


野愛はゴミ捨て場から缶を取り出して、投げつけた。


ホームレスの男性を連れてにげる。


少し走って曲がり角を3つ程曲がったところで、立ち止まって聞いた。

「大丈夫でしたか?」


「あぁ……。さぁ、もういくといい。ありがとな」


しわがれた声に素直に従って歩き出す。


ホームレスについては社会科の授業で習ったばかりだった。

ホームレスの中には、社会のせいで職を失った人も多いのだと。

女性や子供には保護してくれる施設もあるけれど男性にはない。

だから50~60代の男性が一番多い、とも。


その事を知っていて、結城利久斗はホームレスを殴らせたのだ。


そんな奴が生徒会長になったら弱者が虐げられる学校になってしまう。




次の日、学校のセーラー服をきて朝ごはんを食べ終えお母さんに見送られて家を出た。


「野愛?」


「あ、志貴っ!おはよっ」


幼馴染の志貴が隣の家からちょうど出てきたところだった。

志貴は1学年上だけど、3月生まれだから年齢は私と2ヶ月しか変わらない。


いきなり腕を掴まれて引き寄せられる。

「ここ……どうした?」

指差された場所は左手。どうやら殴り合いになった時に

少しかすっていたらしい。

私はさっきの話を志貴に話した。


「野愛が……生徒会長になればいい。」

「え?」

「その男を……生徒会長に、したくないんだろ?」

「……」

「俺も協力するし」

「うん、考えとく」

すっかり葉の落ちた寒々しい木々を眺めつつ、志貴と一緒に登校した。



学校に着いて早速由依に相談した。


「どう思うっ?」


「結城くんてそんな人だったの?でも、あそこまで完璧だと逆にありそう……。」

がっかりしたようにつぶやいた由依そのまま続けた。


「野愛が生徒会長に立候補するのは賛成よ、向いてそう。うちの学校の会長は権力ある分大変だから頑張って!」

「う……」


そうなのだ。まずこの学校の会長になるには、学力テストで一位にならないといけない。



野愛が立候補したその日から地獄のような勉強が始まった。


学力テストまであと11日しかなかったのだ。

志貴は学力だけなら利久斗の上を行く。

勉強を教えてくれるかと頼むと、二つ返事で受けてくれた。



「野愛……。ここ、違う」

志貴が示したのは数学のノート。

数学が一番苦手な野愛は小さくため息をついた。



勉強会が始まって3日たった。

空は初雪が降っていた。

雪が少ないこの地域では珍しく、積もるほどになっている。

校庭では幾人か男子生徒が雪合戦をしている。


「やっぱ数学無理っ」

野愛は窓の外を眺めていた由依にこぼした。

「……でも、野愛は数学以外は利久斗くんと同じくらいできるじゃない。きっと、大丈夫よ」

由依の言葉に背中を押されるように数学の問題集を開いた。



そんな調子で時は経っていき、テストの3日前。

野愛は連日の徹夜でフラフラと廊下を歩いていた。

下りの階段に差し掛かったとき野愛の身体が傾いだ。

次の瞬間支えられた手に安心して野愛は意識を手放した。


目を覚ますと利久斗の整った顔が目の前にあった。

白い天井、横をみるとクリーム色のカーテンがしめられている。

どうやらここは保健室のようだ。

「あの日……見たんだろう?」

あの時の冷たい顔に

「見た、けど……」

一瞬震えた声を押し隠す。

「どう思った?」

まっすぐな瞳に違和感を感じた。

今の利久斗は噂の「結城利久斗」でもあの冷たい利久斗でもなかった。

「サイテーだと思ったわ」

だから……正直にいった。

「だよな。……高校にはいる時に引っ越してそれから……色々あって、止めらんなくて」

苦しげな表情に

「私があなたの、上に立ってあなたを、止めて見せるから」

と返すと、利久斗はとっても綺麗な微笑を浮かべた。

「勝てよ?」

「当然!」

利久斗は振り返ることなく出て行った。



テストも明日に迫っていた。

私は昼休みも志貴のもとで勉強していた。


「ふふっ!結城くん何言ってるの?」


「いや、言うだろ!あれは可愛すぎた」

自分の教室に帰る途中、由依の声が聞こえた。

……なぜか胸の奥がズキッと痛んだ。



テスト当日、私はできる限りの勉強をしてきたはずだった。

最後に復習しようと開いたノートには「頑張って」と志貴の文字。

立候補者23名を眺める。

それだけ、この学校の生徒会長になりたいものは多い。


利久斗と目があった。


「ーー始め!」


問題用紙を開く音。

シャープペンのコツコツという音。



結果は私が利久斗に一点差で勝っていた。

そのことを知った時利久斗は零れるような笑みを浮かべた。












読んでくださった方ありがとうございます。

感想、アドバイスなど大歓迎です!

評価していただけたら泣くほど喜びます。

よろしくお願いしますっ

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[一言] とても面白かったです!!期待と応援しています((*´∀`)
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