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第三話 side Nightmare 2

 登場人物の視点で書いてあります。

 苦手な方は注意してください。

 忘れていた記憶。

 思い出さなければいけない記憶。

 

 全てはあの女神の仕組んだことだった。






 あの女神ぃぃぃっ…!!



 



 今回の仕事は、『魔王討伐』。簡単な仕事…と思いきや、なんとその魔王というのは雇い主である女神の弟だという。女神=創造神で、その弟=高等神族という事実が判明し『二人では高等神族を殺すことはできない。逆に返り討ちになるから応援をよこして欲しい』、と言ったのに女神は…『グッドラック♪』と言い放ち、強制且つ何の準備もさせずに魔王の住処まで転送したのである! 『男が待っているから』という単純明快でくだらない理由のために! …あの媚びた声を思い出すだけで腸が煮えくり返るっ……!

 というわけで、私と相棒エンジュは魔王の住処に――今現在私がいる広間――に送り込まれた。


「…魔王は留守のようだな」

 普段無口なエンジュが、誰もいない玉座を見て言った。よかった…転送されてからすぐに瞬殺されるという最悪の末路は避けられた。ならば話は早い。

「よかった…じゃ、脱出脱出!」

 そう言って玉座に背を向ける。こんな危ないところに長居は無用! 

「……」

「……」

 …そして、闇を目の前に固まった。

「……どうやって? 何処に?」

 エンジュが静かに問う。もっともな質問。だって入り口も出口も、無かったから。広間にある物と言ったら白く光る床と、赤い絨毯と、主無き玉座と、深い闇だけ。

「あ……」

「……」 

 ここで立ち往生しているわけにはいかない。魔王が帰ってくるまでにここを脱出しないと殺される。勿論『二人だけで魔王討伐』なんて論外である。

「探すしかないかあ…」

 別々に脱出口を探し始める私達。早く探さないと、という焦りもあったけど、それで脱出口を見逃したら意味が無いのでできるだけ細かく丁寧に探していった。白い床の一歩一歩、絨毯の下、玉座の裏…何も見つからない。『闇の中に飛び込む』という手もあったが、そこまでする勇気もさすがにない。最後の手段に残しておく。

「あーあ、何でこんなことに…これもあれも猫かぶり馬鹿女神のせいで…」

 思い出したくも無いけど思い出してしまう。そして腹が立つ! エンジュも何も言わないけど相当怒っているだろう。

 さて…相棒は何か見つけただろうか? これで何も無かったら『最後の手段』を使うことになるから見つかっていて欲しいものだけど… 

「エンジュ、何か見つかったー?」

「……」

「あんたが無口なのは百も承知だけど、返事ぐらいしてよ」

「……」

 こいつ…確かに剣の腕では一流どころか神業だけど、その前に、『呼ばれたら返事をする』という常識を持っていない! 剣ではなく常識を学べ、常識を!

「エンジュ・アドノー?」

「……」

「…喧嘩売ってる?」

 ムッとして振り向く。だが…

 キィンと、金属がぶつかり合う澄みきった音が響いた。

「え…?」 

 相棒はいなかった。

「エンジュっ!?」

 エンジュの代わりにいたのは、角を持った異形の者。

 腹部に衝撃が走った。





 そこで記憶は途切れている。






「フェンリル、戻れ」

 魔王が私の手を覆っている黒い物――フェンリルというらしい、闇のように黒い巨大犬――に命令した。しかしフェンリルは動かない。

「フェンリル」

「……」

「……」

「……」

「…予が悪かった。戻れ、フランソワーズ」

 ふ、ふらんそわーず…って…。

「オォン」

 フェンリル…じゃなかった、フランソワーズは一声吠えると私の手から離れ、魔王の元へのしのしと戻っていった。手が涎まみれで気持ち悪い。

「さて…」

 魔王が口を開く。

「ナイトメア、だな?」

「そうだけど…」

「予の部下達を随分と可愛がってくれたようだな」

 さっきの大蛇とスケルトン達は魔王の部下だったか。…弱かったけど。

「折角の客人は酷い事をやってくれる」

 客人…ま、気絶した私をベッドに寝かせてくれたことは客人らしい扱いね。でも

「…人をわざわざ気絶させ、部下に襲わせるのが客人にすること?」

「気絶させたのは仕方が無かった。部下もお前が勝手に抜け出したところを捕まえようとしただけだ」 

 すぐには殺さなかったということは、人質にでもする気だろうか? 私は傭兵。人質の価値は無いと思うけど。

「…本題に入る」

 こいつ…何を考えている。

「予は魔王…」 


 何をされるかと思って、緊張はしてるんだけど…疑問が一つ。そういえばダガーはどこいったわけ? さっきまで持ってたのに。

「今、姉である創造神との戦いの真っ最中である」

『ゴリゴリゴリ…』

 …異様な音が、魔王の横にお行儀良くお座りをしているフランソワーズの口から響いてくる。そういえばこいつ、私の手を口にくわえてて……え…?

「お前も姉から予を殺すように言われてきたのだろう?」

 フランソワーズが何かをべっ、と吐き出した。カランと音をたててそれが転がる。それは…

「姉がその気ならこっちにも考えがある。そこで、だな…」

「ダガー!?」

 フランソワーズが吐き出したものは、紛れも無く、私のダガーだった! 正確にはダガーの柄だけだった! 肝心の刃が無いっ!?

「お前を…って、お、おい…?」

 すぐさまフランソワーズのいる玉座へ駆け上る。

「あんた…これが何だかわかってんの? 私の大っっ事な商売道具よ!? 刃は奇跡の金属『オルトマイト』! 仕込んだ毒は蛇神デドゥヌスから苦労して手に入れた貴重品! それを…それを…こともあろうに食べるってどーいうことよ!?」

「オンッ!」とフランソワーズ。足元に転がるダガーの柄を鼻で押しやる。

 押し出された柄を拾う。涎まみれだ。

「…これ……」

「オンッ!」とフランソワーズが誇らしげに鳴きやがった。

「オンッ!、じゃないっ!! こんなのただの棒切れだ! 刃が無いダガーなんてダガーじゃないわぁっ!」

 柄で思いっきりフランソワーズをぶん殴る! おぉのぉれぇぇぇっ!!

「フェンリルになんてことを!」

 フェンリルだろうがフランソワーズだろうが関係ないっ!

「クゥン…」と大してダメージも受けていないフランソワーズが耳を伏せて、困ったような目で啼く。

「このっ…このぉっ……」

 耳を伏せようが、困ったような目で啼こうが、ダガーは戻ってこない…! そう思うと体の力が抜け、思わず膝をつく。

 何で? 何でこんな目に遭わなきゃいけない? 目を覚まして早々スケルトンが居て驚くわ、大蛇に追いかけられ吹っ飛ばされるわ、挙句の果てにダガーは犬の腹に収まるわ…これもあれも馬鹿女神のせいだ…! 

「もうやだ…」

「……」

「気に入ってたのに…大金掛かったのに…」

「大…丈夫…なのか…?」と魔王。

 魔王、気遣ってくれるとはなかなか優しいじゃん。でもね…この状況のどこが大丈夫だと思ってんの?

「…とにかくだな」魔王が遠慮がちに口を開く。

「予の話を聴」

「聴かない」即答。

 何でダガーをあんたの犬に食われてまで話を聴かなきゃならないの? 説明してよ。神だからってそんな横暴してもいいとでも思ってんの?

「聴け! さもなくば殺す」

「…あっそ。煮るなり焼くなりみじん切りにするなり勝手に殺せばー? そうすればもうあんたの話なんて聴きたくても聴けないだろうけどー」

 もう、どうにでもなれ。どうせ逃げようとしても逃がしてくれないんでしょ? いつでも、それもこの瞬間にでも殺そうとすれば確実に殺されるし。

「何故予が人間ごときに…!」

 魔王は何やらぶつぶつと呟いている。

 人間だろうが神だろうが関係ない。弁償しろっ!

「…どうすれば話を聴く?」

 顔を上げ、魔王をきっ、と睨みつけて言い放つ。

「ダガー、弁償」

 しばしの沈黙。

「何時か必ず弁償しよう。では予の話を」

「何時かって何時?」と、魔王がまだ言い終わらないうちに質問する。

「……」

「……」

「三日後までには弁償しよう。では」

「保証はあるの?」

「……」

 大きくため息をつき、額に指を当てた魔王がパチンと指を鳴らす。床と同じようにぼんやりと白く光る小さな紙とペンらしきものが、何も無い天井からスススッと降りてきた。

「…予の名誉に賭けてナイトメアに誓う…今日から三日後までにフェンリルが食したダガーを弁償する、と。これでよいな? 特徴はあるか?」

 そう言われてダガーの特徴を細かく説明する。お気に入りのダガーだったから随分と説明は長くなるけど、その間魔王は黙ってペンを走らせていた。

 説明しながら魔王の観察をしてみる。

 

 顔は仮面で覆われ、頭の横から牛のように二本の角が生えている。いかにも悪魔・魔物の怪しい風貌だ。

 しかし、黒いマントに零れ落ちる深い海のような藍色の長髪は見事なまでに美しく、こんな言い方をするのもなんだけど艶かしい。本っ当に曲が無くてストレートで、そん所そこらのモデルさんでも何所かのお姫様でもミス・ワールドでも、例え美の女神でも絶対に敵わないだろう。これだけ長いんだからお手入れも大変そうだ。何の特徴も無い栗色の髪を持っている――しかも毛先に少し曲がついている――私から見れば本当に羨ましい限りである。かといってあんまり派手で個性的な髪を持っていても仕事に支障ができるんだけど。

 仮面を取ったら意外と美男子だったりして…。

 でも外見より何より気になったのは所々その身を鮮やかに飾っている宝石だった。

 宝石には少々うるさい私の眼から見てもこれ全部、最高級の天然物魔石!

 魔石――その名のとおり魔力が籠められている石――は基本的には石としての価値・大きさ・籠められている力の大きさ・傷の有無等で値段が決まる。言うまでも無いが、普通の宝石よりも魔石のほうが格段に高級だ。誰かが意図的に石へ力を籠めて作った魔石と、自然に何かの力が石に溜まった魔石の二種類があり、一般的には後者のほうが籠められている力も強く、高値で取引される。

 魔王が身に付けている魔石をざっと見で数えてみると…小さなものから大きなものまで50個ぐらいはある! これだけあれば年平均収入が何年分するだろう…!? いいなぁ…。


「…い」

 いいなぁぁぁ……。

「おい」

 いいなあぁぁぁぁ……。

「聴いておるのかっ」

「…え…あ…はい?」

 いけない。長い間魔石に見とれていたらしい。

「予の話を聴け!」

「ああ…はいはい」

「『はい』は一回!」

「…はい」

 妙なところで律儀な魔王だ。今更だけど本当にこの人…じゃなかった。この神、魔王? いや、その前に…

「ところで何の話?」

 その言葉に魔王は頭を抱えた。

「全部聴いてなかったのか…説明し終わってからずっと黙っていると思っていたら…」

 話してたんだ。全然気づかなかった…。

「…ごめんなさい…」  

 魔王のそのあまりの落ち込みようにはちょっと可哀想なところがあった。

「何故、予が人間ごときにこうも振り回されなければならんのだ…」

 魔王…いや、今だけ一応『様』を付けておこうか。魔王様、ごめんなさい。なんか本当に可哀想になってきた。こんなのがあの馬鹿女神の弟で、本当に魔王なのだろうか…?

「あの…本当に悪かったとは思ってるから…」

「…ちゃんと聴いてくれるか?」

 さっきまでは「聴け」、と命令口調だったのが今度は「聴いてくれるか?」と希望口調になっている。偉ぶってんだかなんだか。この神、魔王じゃない気がする。

「聴く」

 魔王がやっと顔を上げた。

「…では、もうこの際単刀直入に言うぞ」

 真っ向から来る! 緊張の瞬間! 蛇が出るか、鬼が出るか!










「予は、お前を傭兵として雇いたいのだ」

「へ…?」

 えーっと…頭の中がフリーズする。

「……」

「お前には姉への恩義もある。突然言われても迷うだろう。しばし時間を与える。…ただし、もし拒否するならば…」

「……」

「この場で殺す!」

 『殺す』。ころす。その言葉で頭がフル回転して動き出した。

 まず最初に考えたことは…とにかく「身の危険はしばらくない」ということだった。あーよかった。九死に一生とはこのことだ。

 だけど拒否すれば殺されるのか。うーん…もう少し情報が欲しいな…。

「…何が目的?」

 こちらからも真っ向から訊いてみる。すると

「姉をぎゃふんと言わせてやりたいのだ。反論を唱えた予を、天上から追放した姉にな」

 なるほど。ということは立場が逆転するだけで今度は女神の敵になるわけか。で、その女神には…恩も義理もない。残るのは報酬だけ。というか…

 

 恨み満載だし! これでもかというぐらいムカつくっ!! 泣かせて土下座させて靴舐めさせて『どうぞお許しください。ナイトメア様』と言わせて報酬二倍になったとしても許せない! 要するにこの話を破棄する理由はどこにもない! むしろ女神に仕返しするまたとないチャンスじゃん! 

 

 …決めた。

「その話、考えてもいい」

「そうか…。賢明な判断だ。気に入ったぞ!」

 別に気に入られても嬉しくないんだけど! それに…

「ただし!」

 完全に決めたわけじゃない。最後の締めがある。仕事を請ける上で一番大事なこと。これを見極めるのも傭兵の大切な力である。







「報酬よ!」

 報酬。報酬がなければ傭兵じゃない。それがあってこそのこの職業。一番大切なものである。

「報酬か」

「まさか、報酬無しに傭兵を雇おうなんて思ってないでしょう?」

 報酬無けりゃただのボランティアだ!

「だから…それで報酬を払ってちょーだい」

 ビシッと魔王の首元を示す。魔王が柄にもなくびくっと身じろぎした。その報酬は…






「まさか体で…」

 ふふ…ふ…あの姉にこの弟有り。

 できるものなら姉弟揃って一発どころか袋叩きに殴って頭蓋骨叩き割り冥界に送ってやりたいわ。ほんとに。

「ふぅ……っ」 

 息をゆっくり吐き、なんとか怒りの鉄拳を押し込める。

「…赤い魔石」

「魔石?」

 魔王が首元を見る。そこに輝くのは深紅の星。石の種類はルビーだろう。大きさは大人のこぶし大、傷も無く、籠められている力も他の魔石と比べ物にならないぐらい大きな力が伝わってくる。何よりも見事なのはその色で、深みを持ちながらも鮮やかなピジョンブラッドである。

「これに目をつけるとはなかなか眼が肥えているな。これは予のコレクションの中でも一番のものだ」

 一番…ナンバーワン…ベスト! おおっ、余計欲しくなった。

「まあね。宝石にはけっこう詳しいから。じゃあ…」

「だが、やらん」

 ちっ。やっぱりそう簡単にはダメか。でもね、魔王。こうなったら嫌でもそれを譲ってもらう!



「そ。じゃあこの話は無かったことに」

「何!?」

 動揺、してるしてる。『欲は人を強くする』! 人間舐めるな!

「私、それ以外に興味ないから」

「待て! なにも報酬はそれだけではない。金も魔石も他のものならいくらでもやろう!」

「いらない。言っとくけど女神の報酬はもっと高かった」

 言葉に詰まる魔王。

「では…予にその命を差し出すということだな」

「ご勝手に」

 …勿論はったりである。自分の命は惜しいし。それに差し出すのは『魔王』の方だ。

 魔王が立ち上がり、片手に黒い玉を生み出した。

 私は動かず睨みつける。沈黙。

「…拷問にかけて姉の情報を搾り出してやろうか? ん?」

「どちらでもどーぞ」

 はったりのコツは『すばやく強気に冷静に』。

「……」

 困ってる困ってる! そりゃそうだろう。

「一つ質問。さっきから殺す殺す言ってるけど何で今すぐ殺そうとしない? 何か理由でも?」

「……」

 質問の答えはわかっている。

『もったいない。手駒になりそうな者をみすみす消滅させたくない』

 私の『その話、考えてもいい』発言で手駒になる可能性が少しでもわかった以上、余計その思いは強くなったはずだ。姉である創造神との戦いで、使える手駒は喉から手が出るほど欲しいだろう。

「質問に答えて」

「……」

 魔王、観念したら? あんたの弱点は…私を傷つけたくない理由は、わかってんの! 諦めて魔石を差し出せ、よこせっ!

「…………」

 沈黙が続く。聞こえるのは魔王の足元で横になっているフランソワーズの寝息だけ。





 



 魔王が座った。黒い玉が空気に溶け込み消滅する。

「よかろう」   

気づくと目の前に赤い魔石が浮いていた。ということは…っ


「くれてやる…存分に職務に励むがよい!存分になっ!」と苦々しく叫ぶ魔王!


 やったあぁぁー!!!!!! 相場の倍の儲けっ! 万歳っ! 私の宝石コレクションに新たな一ページが加わった!!

「じゃあ、契約成立ね」

「うむ」

 叫び出したくなるのをこらえながら、冷静に言葉を発する。でも…だめだ、口の端がつり上がるっ…! 笑いが止まらない。ふふふ…♪

「早く魔石を取らんか! 報酬だぞ」

「はいはい…じゃなくて、はい」

 苛々している律儀な魔王から魔石を受け取り、胸に抱く。

 このすべすべとした手触りと赤き星の如く輝き、強大な力…もう絶対に放さないっ! 

「…姉をぎゃふんと言わせてくれるのだろうな?」

「任せてよ! 雇い主の命は遂行する」

 個人的な恨みもあるしね。

 ふふふ…見てなさい、女神! あんたの地位も名誉も権力も彼氏も、全て粉々にして不幸と絶望と冥界のどん底に突き落としてやるっ♪ 







「ところで、報酬は役目を果たしたときに貰うから」

「…は?」

「報酬よ、報酬。忘れたわけじゃないでしょう?」

「何を言うかっ! その魔石が報酬であろう!」

「は? そっちこそ何言ってんの? これは依頼の前金。報酬のメインとは違うじゃん」

「な…さっき報酬だと…」

「報酬の『前金』って意味。上司を通してじゃない個人的な依頼は報酬の前金を貰う決まりだから」

「な……」

「契約、破棄する?」

「な……」

「返事が無いってことは、『破棄しない』って受け取ってもいいんだよねー?」

「な……」

「この魔石は報酬の半分。残り半分、よろしく」

「…な………」

「…オンッ」

 

 いつの間にか起きたフランソワーズが元気に鳴いた。主人を見つめて尻尾をパタパタ振る。

 うん、この魔王は扱いやすいな。良い雇い主を持ってよかったよかった。めでたしめでたし。 

 ちなみに『決まり』は正確に言うと『欲に釣られて、たった今私が作った決まり』という意味だが、きっと魔王は気づいてないだろう。なんとも人の良い魔王である。








「報酬報酬報酬報酬報酬報酬報酬報酬…」

 多大な精神的ダメージを受けた魔王の頭脳がしばらくフリーズしたことは、言うまでも無い。 



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