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第一話 女神様からのお願い

第三者ではなく、登場人物の視点で書いてあります。苦手な方は注意してください。

 神は天上…空の上、雲の上に住むと言われるのが普通である。

今自分は縁から少し身を乗り出せば雲の中に落ちてしまいそうな天上に居る。依頼がここに住む神からあったからである。


 勿論普通の傭兵が神から依頼される確率は無いに等しい。というか、まずありえない。依頼を受ける方法が有るとすれば「神に通じていること」である。自分の場合、神は上司のようなものだ。

 上司の名は「コア」。随分昔に、人生を全うして眠りについていた自分達を冥界から突然叩き起こした。メンバーは自分を含めて6人。目的は他世界の神からの侵略を防ぐため。その目的も今は無い…というのも、その侵略が結局は起こらなかったからだ。役目を失った6人は自分達の有るべき世界で眠りにつこうとした。しかしコアはその6人を冥界に帰そうとしなかった。「折角大きな力を使って目覚めさせた6人をむざむざ再び冥界に帰すのは勿体ない。何か利用法は無いものか」と考え、結果、神専門に依頼を受ける傭兵団を作った。

 最初は死にたかった(冥界に帰りたかった)が、生活には困らないし、色々な場所に行ける。報酬も約半分はコアの取り分になるとしても十分すぎるくらいある。

 不満はほぼ無い。


 不意に強い気配が今居る天上の神殿に流れた。雇い主の登場らしい。片膝をついて姿を現すのを待つ。礼儀が悪くて報酬を下げられたら困る。

広間の奥から、背から幾つもの純白の翼を生やした女性が現れる。と同時に左右に槍をもつ多数の天使達が現れた。頭上に光の輪をつけた今時珍しいような典型的な天使である。

「コアから使わされた者ですね」

 鈴を転がしたような音とはよく言ったものである。容姿も美人。物腰と雰囲気も優雅な中にも何か厳かなものを感じる。さすが女神様! と言いたい所だが神の中には自分の姿を誤魔化している者も居るのでなかなか侮れない。

「名は?」

「エンジュです」

「ナイトメア、です」

 隣に並ぶのはナイトメア。身体を黒のローブで覆っていてこの場に似つかわしく怪しいことこの上ないが、中身は普通の少女…と思いたい。コアから一緒に使わされた今回の依頼の相棒。他にも色々彼女とは関係しているが。

「ナイトメア? ああ、あの…」と女神。

 彼女は傭兵というより暗殺者、殺し屋である。二つ名は悪夢…ナイトメア。神の間では有名な二つ名らしく、もはや本名と二つ名が逆転している。本人も本名を使うことは滅多に無い。

「ご要望とあらば殺します」

 おい…普通、綺麗事が好きな神族相手に正面きって「殺します」と言えるか!? 報酬が減ったらどうしてくれる。

「そう…」

 女神はしばらく俯き黙っていた。内心、さっきの「殺します」発言に気を悪くしているんじゃないかと凄く心配だった。が返ってきたのは

「では、殺してください」

という言葉だった。良かった、心配は無用だったようだ。

「誰を殺しましょうか?」

 いつの間にか交渉役はナイトメアに移転している。ここは黙って交渉は任せよう。と言うより、俺、最初に名前言っただけで何にも言ってないな。

「創造神たる私に反旗を翻す愚か者、魔王と名乗るものです」

 居る居る。そういうのは今までもよーく見てきた。魔物や悪魔をすべる者。が、言っちゃ悪いが実際には弱い者が多かった。今度の仕事は速く終わるかもしれない。

 そこで疑問に思う。女神が創造神ということは必然的にこの世界では一番強い存在と言っても過言ではない。じゃあ自分で何とかしろよ、と思ったが、何とかできないから傭兵を雇ってるんだった…。

「そして…私の弟だった者…」

 不意に女神が本当に小さな声で呟く。よく耳を澄ましていなければ聞こえなかった。ナイトメアにも聞こえたようだ。兄弟間での潰し合いはよくある事。別にどちらに権力が渡ってもいいが。

 だがこれで女神自ら何とかできない理由が分かった。自らの手で弟を手にかけたくないという事か。

 しかし、創造神の弟となるとかなり力の強い神だ。二人で挑むのは無謀すぎる。当然その事も相棒は分かっていて女神に味方を増やして貰おうと女神に声を掛けた。

「分かりました。ただ、応援がないといささか難…し…い…?」

「…どうしたのです?」

 何をやっている、ナイトメア。苛立ちながら彼女の方を見る。

 光っていた。彼女の身体が。気づけば自分の身体も光っている。こんなことがこの場所でできるのは…

「あのー、女神様? これは…一体…?」

 必死に動揺を抑えてはいるが、きっと黒いローブの中身は冷汗を掻いているだろう。女神はこう答えた。

「魔王の住処まで遠いですし、送ってあげましょう。」

「ちょ…待っ…今すぐは結構です! まだ話は終わってない! 早まるな!」

 つい敬語無しで言葉使いが荒くなるナイトメア。

「女神様の御前である。口を慎め!」と天使がナイトメアを睨みつける。

 これはかなり女神の機嫌も状況も悪いと見た。

「応援が無いと私達の身の危険があるのです」

「遠慮しなくてもいいのですよ…」

 そのお気持ちはありがたいのですが、そんな遠い眼で話を聞かないでください。女神様、俺の言った言葉が右から左へと抜けてますってば。話し聞いてないですね?

 身体に纏わりつく光が点滅し始める。

 まずい。非常にまずい。

「あんた、私を殺す気!?」とナイトメア。

「話を聞いてください!」と俺。

「貴様ら口を慎まんか!」と天使。

『ピロリロリ〜♪』

 喧騒の中、…気の抜けた音…? いや音楽が鳴った。

「来たわ!」

女神が叫ぶと、女神の前に水鏡のような物が出現した。

「もしもし? ヨウ君? サフィ寂しかったよ〜(ハート)…うん。じゃあ今から行くね? …弟? うん、もう大丈夫。心配してくれてありがと(ハート)じゃ、後でね」

……………………………。

「私はこれから用事があるので、弟のことは頼みましたよ。本当ならば私自ら奈落に堕としたい所ですが」

なるほど、そういうことですか。わかりました。命を懸けて魔王を討伐して見せますとも! 嫌だと言ってももう後には引き返せませんよね、勿論。冥界に戻るときは貴女様の恋の成就を祈ってますよ。

「無茶言うな! 2人で高等神族を殺しに行くなんて無理に決まってるでしょーが! 逆に返り討ちに…。」

女神が殺気を籠めた瞳で何も言わずに「黙れ」とにっこり笑う。神の力を使って無理やりナイトメアの口を閉じさせたらしい。

「大丈夫。あなた方ならできるはずです。自分の力を信じてください。」

光が強くなり、足が床に着いていないような錯覚に陥る。

「では、グッドラック♪」


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