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8.5 レイシアの視点

 お嬢様がテストに向かわれてはや3日。お嬢様は無事にテストを進められているだろうか。

 すると遠くから「レイシア!」とお嬢様の声が聞こえた。よかった、無事に帰ってこられたのですね。


 おや、見たことのない御方がいらっしゃいますね。

 一見すればどこにでもいる平民の男性のようにも見えます。

 ですがそのお召し物は見たこともない素材やデザインで作られており、何よりその手は剣士のそれとも、学者のそれとも違いました。

 まるで何か大切なものを支えるためだけに鍛えられたような独特な厚みのある手……。

 果たしてどのような背景をお持ちの御仁なのでしょうか。いえ、お嬢様のお客人です。不要な詮索はやめておきましょう。


「こちらは私のお客様のユズル様です」


 なるほど、お客様の名はユズル様ですね。覚えておきましょう。

 滅多に屋敷に人を呼ばないお嬢様がお連れになった方なので丁重にお出迎えしなければなりませんね。しかし周りを見ても荷物も馬車も護衛の方も一切見受けられないのは不自然ですが、何かあったのでしょうか……。


 お嬢様から認識阻害の結界を貼るようにとの御用命を受けたのでしばらく結界を展開していると、何やら一瞬地鳴りのようなものを感じた。その後すぐにお嬢様から『結界解除して大丈夫よ!』との声が。そこには先程までは無かったテスト用の荷物が。

 ユズル様の能力で荷物を仕舞っていたのでしょうか。しかしあの荷物が入るほどのアイテムバッグや魔法は聞いたことが有りません。

 なるほど、それで認識阻害の結界ということですか。さすがお嬢様。


 私は所定の位置に荷物を運び、ユズル様のおもてなしをする準備を始めた。

 好き嫌いなどがないか確認しましたが特に苦手なものもなさそうですね。

 それなら比較的早く用意できるクッキーと紅茶にしましょう。


 数分後――


 さて、クッキーと紅茶も出来上がりましたし、お嬢様とユズル様の待つ応接室に向かいましょう。


 ◇ ◇ ◇

 

 コンッコンッコンッ

 いつものようにノックし、応接室に入る。そこで目を疑うような光景を見た。

 お嬢様がユズル様と手を繋いでいる!?

 ダメ、堪えるのよレイシア! 今は仕事中だから口角上げるのはダメ!!

 そう心のなかで叫んでもやはり邪推を色々してしまう。


 お嬢様とユズル様の邪魔になってはいけないので素早くクッキーと紅茶を配膳し、素早く退出する。

 だ、だめだ……こういうの見ると止まらない。


「フランさまぁー!!!」


 今目の前で起きていた出来事を共有したくて一目散に奥方様を探す。

 こういうのって本当に何歳になっても好きなんですよね。


 奥方様の部屋へノックし、入室する。


「失礼いたします。お取込み中とは存じますが、リースお嬢様のことで取り急ぎご報告がございます」

「リースちゃんに何かあったの!? 内容は?」

「先程応接室にクッキーと紅茶を持っていったところ……2人が手を繋いでました!!!」


 奥方様の表情が仕事モードから一気にニヤニヤモードとなりました。

 わかります。この手の話、奥方様もお好きですもんね。私も大好きです。


「レイシア、情報共有ありがとう。これは本当に彼がリースの旦那となる日が来るかもしれないわね」


 すごい、今まで見たことがないほど奥方様がにこにこしている。かくいう私も同じような顔しているのだろう。


「では私はお夕食の準備を行ってまいります。ご静謐(せいひつ)を乱す非礼、大変申し訳ございませんでした」


 私は退室し、キッチンへと戻った。


 ◇ ◇ ◇


 食事を運んでる途中に穏やかではない会話を聞いてしまった。

 お嬢様の護衛が逃げた? ゴブリンに襲われた?

 昼間馬車も護衛も無かったことを思い出し、理解した。


 しかし私が奥方様やお嬢様と同じように怒りを露わにした所で私はメイド業務しか出来ません。

 私には何も出来ないので静観させていただくことにしましょう。

 お嬢様がつらそうにしていないかを観察し、もしつらそうにしていたらフォローをしましょう。

 ユズル様、本当にお嬢様を助けていただきありがとうございます……私は何度も心のなかでユズル様へ感謝の言葉を述べた。


 ◇ ◇ ◇


 ユズル様を浴室に案内し、その入浴を見計らって樽の前へと向かった。

 生活魔法で中身の洗濯と乾燥を済ませる。

 服を畳んで置き、お姿と鉢合わせるような失態を演じぬよう急いで脱衣所を後にする。

 ひと段落ついたところでようやく私の食事の時間だ。


 お嬢様も食事を終えられ、食堂には私1人。ですがこれでいいのです。

 私はアルベルト家にお仕えするメイド。何度か一緒にお食事を誘われたこともありますが、公私混同してしまうといつか本当に大事なときに大切なものを守れなくなるかもしれません。それだけは絶対に避けたい。


 暫く経つと浴室のアラートが鳴ったので、急いで口の中の物を飲み込み水で軽くすすいでユズル様の元へ向かう。

……そうでした。確かにまだユズル様の向かう客間への道案内を行ってませんでした。

 そういえばユズル様に石鹸の説明するの忘れてたのですがふわっと石鹸の香りがしてましたね。

 ユズル様の故郷には石鹸が使われていたのでしょうか?


 私はユズル様を客間へご案内し、そのまま退場する。

 残りの食事も終わらせてさっさと片付けてしまいましょう。


 片付けも終わったので私もお風呂に入って寝ることにしようかな。

 旦那様、奥方様、お嬢様。そしてユズル様。本日も1日お疲れ様でした。おやすみなさいませ……

読了いただきありがとうございます。

次回投稿日は2月9日18時半になります

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