4 昼のソナタ
3 雨降って地固まる にて、少女がトラックに怯える描写を一部変更致しました。変更したことによる設定の変更等はないのでこのまま見ていただいても大丈夫です!
馬車へと向かうと、そこにはこわれた馬車と大きめの樽が2つあるだけだった。馬車を引いてた馬も逃げてしまったようだ。
見たところ馬車自体に被害はあるようだが、松明で燃やされた跡もなければ荷物が濡れた跡もないことを見ると荷物への実質的な被害はあまりない事が見受けられる。
「この樽が荷物ということでいいのか?」
「はい、こちらを王都まで運ばねばならなかったのですが……お願いしてもよろしいでしょうか?」
「任せろ」
そう軽く会話をするとユズルは樽をトラックの荷台に入れる。確かにこれだと一人で持って行くにはちょっと大変だな。
ユズルは樽を荷台の中に入れてゆく。
入れた樽の姿が見えなくなったのでリースが声に出す
「樽が消えてしまったのですが大丈夫なのでしょうか?」
「あぁ、問題ないよ。これは収納スキルを使ってるんだ。どれだけの量が入るかはまだ調べてないからわからないけど、取り出したいときはすぐ取り出せるようになってるんだ。ほら、例えば樽を運んでるときに樽が転がったら樽に傷つくかもしれない。壁にガンガンぶつかってうるさくなるかもしれない。だから安全に運ぶための機能なんだ」
「素晴らしいスキルをお持ちなのですね!収納していただきありがとうございます!」
「それじゃあここに乗って。王都まで連れて行ってあげるから」
リースは初めてトラックに乗る。最初はトラックに乗ることの恐怖があったと思うが、助手席に乗ってからは『すごい!いい眺め!高い高い!!』と年相応にはしゃいでいる。
「よーし、うごかすぞー。召喚獣に命を吹き込むからちょっとうるさくなるけど気にするなよ」
「はい、ユズルさんよろしくお願いします!」
エンジンをかける。心地よい振動がユズルとリースを包み込み、窓を開ける。
するとリースが窓の外に手や顔を出してるのを見かけたので軽く説明だけしておくことにした。
「この横にある透明な板のことを『窓』っていうんだけど、ここから外に顔とか手を出すのは危ないから外に手などをを出さないでくれな」
「わかりました。少しドキドキしますね……」
彼女は言われた通り、行儀よく膝の上で手を揃えた
ユズルははしゃぐリースを横目に、苦笑いしながらギアをドライブに入れた。
あれ、そもそも王都ってどっちだ?どこに行けば王都につながる?
当然のように王都に連れて行く話になったけど冷静に考えて王都の場所をしらない。そもそも普通の街すらどこにあるのかもわからないし、当然カーナビも機能しない。
「リース、すまない。すごく遠いところに住んでたからここからどっちに進めば王都に行けるかがわからないんだ。どっちに行けば王都にたどり着くだろうか?」
「えっと、とりあえず左に曲がってください。左に曲がって、しばらくすると道につながるのでそこを更に左に曲がってずっと進むと王都にたどり着くことが出来ます!一言で言うならば真後ろ方面ですね!」
ありがとう と一言お礼を言い、リースの案内の通りに進むことにした。他の住民に怪我などをさせてはいけないので速度は落としてゆっくりと。前方、後方、左右の確認を忘れずに常に行う。
しかし見れば見るほど異世界だ。恐らく日本でも探せばこのような場所はあるのかもしれないが現実的じゃなさすぎる。だがその反面この世界、風景、暮らしにワクワクしている自分もいる。今後どのような出会いがあるのか本当に楽しみだな。
「ユズルさん、この召喚獣さんの名前はなんというのでしょうか?」
「一般的には4トントラックと呼ばれている乗り物なのだが、特にこれといって名前はつけていないな。例えばリースは何着か服を持ってると思うけどその服に名前はつけていないように、これはトラックという乗り物なのでトラックとしか呼んでないんだ」
「そうなのですね……うーん、ヨントン……ヨン……。決めました、敬意を込めて今日から召喚獣さんは『ヨ◯様』と呼ばせてください! この世界を駆ける白銀の貴公子様ですね!」
ユズルは思わずハンドルを切りそうになり、慌てて立て直した。バックミラーに映る自分の顔は、驚きで引きつっている。
「いや、それはなんか色んな意味でまずい!!てか今の時代分かる人殆ど居ないよそのネタ」
「今から最後まで使わせていただこうかと思ったのですが……だめですか?」
「だめだ。その名前にするとなんか色んなところから怒られる気がするんだ。俺の為にその名前はやめてくれ」
『そうですか……』とガッカリするリース。いや、偶然だよな。なんか色々と。
未舗装のデコボコ道も移動術スキルのおかげでまるで雲の上を滑るように進んでいく。窓の外を流れる景色は、馬車では考えられない速度で後ろへと消えていった。
しばらくすると、地平線の先に巨大な石造りの壁が見えてきた。
「ユズルさん!あの場所が王都グレイスです!すごい、こんなに速く到着するなんて驚きました!!」
「あれが王都か。もう少しで着くから一旦降りても大丈夫か?門兵の方にトラック見られると警戒されるかもしれないから、一度トラックを送還してあとから荷物を渡すようにしたいんだ、悪目立ちするのは少し苦手なもんでな」
そうリースに告げるとリースは了承してくれた。ほんとええ子や……。
そして王都の入口が見えてきた。案の定門兵が警備を行っていたのでトラックをしまっておいて正解だった。
「おい、そこのお前。初めて見る顔だな。身分証明書は持ってるか?」
身分証明書だと?漫画とかラノベとかなら冒険者カード的なものを持っていればそれが身分証の代わりになるのだがこちらの世界に来たばかりで何も持っていない。まずい、詰んでしまったか?
そう頭の中で状況整理と試行錯誤をしてたら後ろから凛々しい声が聞こえた
「彼は私のお客様ですの。彼の身分は私が保証致します。権力をあまり振るいたくはないのですが、責任は全て私 リース・アルベルトが持ちます。通していただけないでしょうか?」
身分証のようなものを提示しながらリースが堂々と宣言する。リースの姿を見た瞬間門兵は萎縮し『大変失礼いたしました!お通りくださいませ』と通してくれた。
もしかしてとんでもなく凄い人と知り合いになってしまったかもしれない。
読了いただきありがとうございます。
令和の時代に冬のソナタ 微笑みの貴公子ヨン様を知ってる方居るのだろうか……
リースの「今から最後まで使わせていただこうかと思ったのですが……だめですか?」というセリフがありますが、これは冬のソナタのテーマソング「最初から今まで」をもじったものになります。
次回投稿は1月28日18時半になります!




