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28 本当の敵は味方!?

 俺達は食事を終え、各々の仕事に取り掛かりはじめた。

 リースとセレナさんは食器を洗い、ミリアは本館へと戻っていく。


「リース、2階の客間をルカの部屋にしたいんだけど大丈夫か? それともどこか別のところが良かったりする?」


 洗い物をしているリースがひょっこりと顔をこちらに覗かしてくる。

 前見たときも思ったんだが、この仕草をしているときのリースが本当に可愛くて仕方がない。

 

「大丈夫ですよ。ただミリアもここに住まわせてあげたいなって思ってるので、私の部屋の隣の空き部屋はそのままにしておいてくれるとうれしいです!」

「わかった。もし足りないものとかがあったらいつでも言ってくれ。その時その時で必要なものを一緒に買いに行こう」

「はーい!」


 リースの許可ももらったのでルカを部屋に案内しよう。

 隣りに居るルカは尻尾をブンブン振り回していてとても機嫌が良さそうだ。


「よし、それじゃあルカの部屋を案内するからきてくれ」

「別にボクはキミと同じ部屋でも良いんだけど。なぁに、ちょっと間違いが起きるかもしれないだけじゃないか」

「あのなぁ……」


 ルカはもう少しだけでいいから恥じらいというものを持ってほしいものだ。

 仮にも女の子だろ。しっかりしろ!


 ルカを客間に連れてきた。ドアを開けて中に入ると、館のものほど豪華とは言えないがそれでも立派な装飾がなされている。

 彼女をみていると、なんか妙にモジモジしている。流石にトイレは人間と同じものを使うだろうし……

 いや、まて。もしかして猫人族は砂使うのか!? 用意してないぞ!?


「ルカ、ごめん! トイレ用の砂まだ用意できてなくて……暫くは人間用のトイレで我慢してくれないか?」


 ルカが今までにない顔をして怒り出し、尻尾を真上にピンッと立てる。


「いや、トイレの心配しなくていいよ! というよりボクも人族と同じトイレ使う……てかデリカシーなさすぎでしょ」


 まずい。ルカが滅茶苦茶怒り出した。

 トイレの話かと思ったら違ったのか。いや、そもそも女性にトイレの話をすること自体間違っていたな。


「少しルカの落ち着きがなかったように見えたからてっきりトイレの心配してるのかと……」

「いやいや。今までこんなに暖かそうなベッドで寝たことがないから緊張しているんだよ。今まではボロボロのタオル1枚にくるまって寝ていたから未だに実感がないんだ。それになんだろう、ボクは今あのベッドに凄く飛び込みたいという感情を抑えられない。けどキミが居るから我慢してるんだ。恥ずかしいところは見せられないからね」


 ベッドに飛び込みたいという欲求があるのは俺だけじゃないようで安心した。

 時間もいい感じだし今日は風呂入って寝ようか。


「それは悪かったな。じゃあ俺は風呂に入ってくるからルカはのんびりしててくれ」


 そうルカに伝えると「はぁい」と一言返事をくれた。

 ドアを閉めた直後、中から「ふみゃああぁ……っ!」という、聞いたこともないような蕩けきった声が漏れてきた。

(……相当我慢してたんだな)

 僕は苦笑しながらその場を後にした。中から聞こえる「バフッ」というベッドの沈む音が、彼女のささやかな幸せを物語っていた。わかる、分かるぞルカ。その気持ち……


 風呂から上がり、ステータスやスキルボードを確認する。レベルは未だ3のまま、スキルポイントも溜まっていない。

 うーむ、よくある無双系主人公みたいにガンガンポイント溜まって一気にヤッホー! ってできないかなぁ。

 まぁいいや。明日はなにをやろうか。

 そうだ、ルカの服を買いに行こう。そしてリースにプレゼントする為に可愛い小物を買ってあげよう。



 ◇ ◇ ◇


 翌日、みんなで朝食を取っていると家のベルが鳴る。

 セレナさんが「私が出ますね」と言ってくれたので任せると、フランさんが食卓へとやってきた。


「朝からごめんなさいね。ユズルさんとルカさん、ちょっと今日時間頂いてもいいかしら?いきなりで悪いんだけどやっておきたいことがあるの」


 あまりにもいきなりの話で驚いた……が、恐らくルカ絡みでなにかあったのだろう。

 俺とルカはフランさんの申し出に承諾をする。

 いや、違う。ディッツさんはルカのことを許していない。もしかしてその事かもしれない。

 なんだろう。ディッツさんと話す時いつも緊張してるな俺。


「ありがとう。ちょっと急ぎの用事だからご飯食べ終わったら館の方に来てほしいの。来てくれたらレイシアちゃんが対応してくれると思うから……急で申し訳ないんだけどお願いね」


 そう言うとフランさんは慌ただしく家を出ていく。

 慌ただしく出ていった割には足音も響いておらず、貴族としての素養が身についているということだろうか。


「お母様やけに慌ててましたね。恐らくルカさんのことだとは思いますが、あそこまで慌てているお母様見るのは久しぶりかもしれません」


 リースがフランさんのことを軽く分析する。

 ただルカのことを許可しないというだけならここまで慌てる必要も無いはずだ。

 きっと何か大事な何かが起こる――そんな予感がひしひしと感じてしまう。


「ちょっとただ事じゃなさそうだから行ってくるよ。リース、セレナさんごちそうさま!」

「ふー、おいしかったよ。ごちそうさま」


 俺とルカは早々に食事を終わらせ、フランさんの後を追うように玄関を出る



 ◇ ◇ ◇


 俺達は少し急ぎ足で館へと向かう。中に入るとレイシアさんが居たので、応接室へと案内してもらうと、ディッツさん、ミリア、フランさん……はわかるけどあと1人。白い髪の初めて見る女性が座っている。

 ミリアが小さく手を振ってくれてるのを見ると、恐らく最悪な話をするというわけではなさそうだが一体……

 

「ユズル君と、えっと、君がルカ君だね。話は家内から聞いているよ。よかったら腰を掛けてほしい」

「失礼します」

 

 応接室の椅子へ俺とルカは腰を掛け、話を聞く体制を取る。


「その前にまず自己紹介っすね。自分、ノアと言うっす。アルベルト商会が出来上がってから割とすぐに諜報員として雇ってもらってずっと仕事してるんすけど、自分のことは気軽に『ノア』と呼び捨てで呼んでほしいっす」

「はじめまして、自分はユズルといいます。こちらに一緒に来ているのがルカです」

「よろしくねぇ」


 3人は自己紹介を終え、ディッツさんから話を伺うことにする。

 

「それで用事というのは……」

「概ね予想はついてると思うがルカ君のことだ。とはいってもユズル君の思ってる内容では無いから安心してほしいのだが、まずルカ君にはネイマール商会について分かることを教えてほしい」


 俺の思ってる内容ではない……? ルカを許さないみたいな話になると思ってたけどそのことだろうか?


「ボクが知ってる情報は正直に言うとあまりないんだ。まず知ってる情報はなぜネイマール商会がユズル君を知っているか。これはトップのヴォルフの方針だそうだが、金で雇ったやつだったり、一時的にスパイとして潜り込ませる目的で雇った人物は盗聴が可能なマジックアイテムをもたせてるようなんだ。ただ、ボクは首に爆弾をつけられてたからかそのアイテムは持たされてなかった。ユズル君を殺しても殺さなくても結局殺されちゃうからだと思う」


「それで、以前リース君を暗殺しようとした冒険者が捕まったというのをたまたま聞いてね。その時衛兵に連れて行かれたときの会話を聞かれてたようなんだ。その空間のどこかで『ユズル』の名前がでてて、それでユズル君のことがネイマールに割れた というのは聞いたことがある」


 やけにノアがニヤニヤしてる気がするが気の所為だろうか。

 そしてバツが悪そうな顔をするディッツさん。……ディッツさん?


「あとはほとんどみんなが知ってるような情報だけかも。奴隷を買って使い捨ての駒にするくらい。ネイマール商会に一時的についていたとはいえ、下っ端も下っ端だったからあまり有益な情報はだせないや」


 ルカの耳がぺたんと垂れる。

 それを聞いて白い髪を揺らし、ノアが楽しげに目を細めながら喋りだす。

 

「ほら、かいちょー。アレじゃないっすか?『ユズル君がいてくれてよかったぁ……』なんて、デレデレしながら独り言してたじゃないっすかー。あれを聞かれてたんじゃないすかねぇ?」

「……っ!」


 ディッツさんの顔が、みるみるうちに赤く染まっていく。


「なんと驚くことに心当たりしかない。私もそれを衛兵詰所で言った記憶がある。それを盗聴の魔道具越しに聞かれていたということなんだな。ユズル君、本当に申し訳ない」


 ディッツさんが深々と頭を下げる。

「いや、大丈夫ですから!」と言ってもその頭が上がることがない。

 どうしようか。


「ディッツさん、頭をあげてください。俺はディッツさんを恨んでないですし、むしろ感謝してるまであります」


 ディッツさんが少し頭を上げた。疑問に思っているのだろう、自分が原因で殺されそうになったのに感謝されてるのだから。


「俺は冒険者をしたことがなく、冒険者になって2日とか3日の新米です。ミリアに戦闘指南をしてもらったことはありますが、それでもまだ不安な新人です。そんな新人の自分に戦闘の得意なルカがこうして仲間になってくれた。その機会をヴォルフさんはくださった……ただそれだけのことじゃないですか。」


 ディッツさんに説明をしているとルカが目を丸くして聞いてきた。


「え、待って!? ボク冒険者になって数日の人に負けたの!?」

「えっと……剣もまだまだ使いこなせないので練習のためにスライムの群生地にいってました……」

「そんなぁ~」


 ルカがショックを受けている……が、今はディッツさんと話しているところだ。

 ルカには悪いが一旦話を戻させてもらおう。


「話はそれてしまいましたが、こうやって一緒に戦闘を行う仲間のルカと知り合うことが出来ました。フランさんからも聞いてると思いますが彼女は既に奴隷化しています。奴隷化するためにディッツさんから頂いたお金も使わせていただきました。なので、叱責こそされど謝罪を受けるほどのものではありません。全部丸く収まったんですからそれでいいじゃないですか」

「そうか。本当にありがとう……」


 

読了いただきありがとうございます。

本編投稿は毎週月水金の3日、閑話投稿日は前話の翌日投稿となります。

詳しい投稿日時については活動報告書を参照ください。


投稿時間については全編一括18時半となります

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