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16 ミリアの寝相と、届いた朗報

 朝。ミリアの寝相が本当に悪くてユズルが目を覚ます。


(なぜだ。俺達は確かに頭を揃えて寝たはずだ。なぜ顔に足が乗ってるんだ……)


 周りをよく見るとリコさんの姿が見えない。

 完全に目を覚ましてしまったのでリコさんを探しに行こうとすると、台所で料理を作ってるところを見つけた。


「ユズルさん、おはようございます。ミリアがごめんなさいねぇ~。あの子、子供の頃からいつも寝相あんな感じなのよ」

「おはようございます、リコさん。中々苦労されたんですね……」

「苦労ねぇ……苦労といえば」


 リコさんが笑いながらミリアの子供の頃の話をしてくれた。


「あの子が子供の頃……あ、これ話したのミリアには内緒よ? 一緒に横並びになって寝てる時、ミリアの踵落としで一度起きたことがあったの。『仕方ないなぁ』とおもいながら体を元に戻そうとしたらそのタイミングでおねしょしたことがあって。あの時は本当に驚いちゃった」


 凄くニコニコしながら話してくれる。昨日まで倒れてたとは思えないほどの回復量だ。


「そういえば体調はどうですか? つらいとか、体が重いとかないです?」

「前よりもずっと体が軽くて若返っちゃったんじゃないかって思うくらい凄く良いの。ユズルさん、本当にありがとうね」

「いや、俺はただミリアをこっちに運んだだけなんで。でも元気になられて本当に良かったです」


 お味噌汁の香りがキッチンに広がる。こちらの世界にも味噌ってあるんだな。

 ふと横を見ると大きな釜も見える。近づくと昔よく嗅いだ香りが。


 ――米だ。間違いなくこの香りはお米の香りだ。


 まるでおばあちゃんの家を思い出す。家電が殆どない貧相な家の中にあるノスタルジックな雰囲気といったところか。

 縁側に座ってスイカとか食べてたなぁ。この世界にスイカはあるのかな? 急に食べたくなってきた。

 卵もある、米もある、パンもある、味噌もある。

 もしかするとこの世界の食生活は日本のものと変わらないのかもしれない。


 そうこうしてると元気な声が聞こえてきた。


「お母さん、ユズルさんおはよ! うわぁ、お味噌汁のいいにおいする!」

「ミリアおはよう。もう少しでご飯炊き終わるからまっててね」

「はーい! あ、ユズルさんの枕元に足乗ってたんですが、もしかしてやっちゃった……?」


 バツの悪そうな顔で見てくる。

 そりゃそうだ。朝起きたら体の向きが逆になってるんだ、びっくりもするだろう。


「いや、起きたときには何も無かったから大丈夫だぞ。多分俺が出た後に移動してたんじゃないか?」


 ミリアがホッとする。その様子を見てニコニコするリコさん。


「はいはい、ご飯炊けたから2人とも座ってね」

「おいしそう。いただきまーす!」

「いただきます」


 俺達は席につき朝食を取る。

 スーパーの半額シールの貼ってある弁当やコンビニ弁当がメイン食だったから本格的な和食は身に染みる。

 それこそ味噌汁なんて食べたのいつぶりだろうか。少なくとも2~3年は食べていない。

 お米の味も日本で食べたのと同じだ。釜で炊いているからか、和食を誰かと食べるのが久しぶりだからか、そのお米の味はとても美味しく感じた。


「ユズルさん、カルディアはいつ出られるかって決めてますか?」


 ミリアに訪ねられる。特に決めてなかったのでその旨を説明する。


「うーん、後2日は居たいのですがユズルさんも用事ありますもんね……」

「いや、泊まってもいいし王都に戻ってもいいぞ。どっちみち今日は一度王都に帰る予定だったからな。やりたいことがあるから一度戻りたいんだ。言ってくれれば明後日また迎えに来るよ。半日あれば王都からここまで来られるからね」


 ミリアは母親と俺を交互に見る。

 俺は背中を押すように続けて言う。


「それにトラックの中なら魔物に襲われる心配もなければ、盗賊に存在がバレることもない。だから安心してくれ」

「わかりました、ありがとうございます!」


 ほのぼのとした空気が食卓を包み込む。

 まずはリースに今回の礼とリコさんの結果について伝えないといけないからな。

 せっかくの親子水入らずだ。ミリアがお礼を言うのは後でも良い。

 ゆっくり甘えておけよ。


 食事も食べ終わり、陽も高く昇ってきた。

 外からはガヤガヤと村特有の話し声や生活音が聞こえてくる。


「よし、それじゃあちょっと早いかもしれないが先に一度王都に帰らせてもらうよ」

「わかりました。明後日また迎えに来てくださいね! 時間はいつでも大丈夫なので!」

「おう、久々の休暇だろうしゆっくり休むんだぞ」


 そう言い残し、俺はミリアと別れる。

 カルディアの門を出てトラックに乗り込むと俺はステータス画面を開く。

 スキルボードを開いてと……

 昨日残しておいたポイントを早速使おう。


 異世界カーナビ実装(1Pt)

『説明:一度でも把握したことのある場所へ案内が可能になる。一度でも行ったことのある場所、地図を見て把握した場所どちらも有効』


 取得するスキルはカーナビだ。ほぼ直線路だったとはいえ、何度かは曲がっている。

 流石に不安なので実装する。


 スキルを実装すると、カーナビの電源ボタンが赤く点灯する。

 ボタンを押したらトラックのカーナビが起動した。

 問題は音声だ。俺はこちらの世界の言語も、元の言語も両方日本語に聞こえてしまう。

 ボリュームの変更はっと……あった。

 一応ボリュームは0にできるようだ。試しにカルディアと入力し、画面を見るとナビが現れた。


(まもなく、目的地付近です。運転、お疲れ様でした)


 頭の中に直接ナビの音声が入り込んできた。

 なるほど、これならリースを乗せて運転することもできるな。

 よーし、王都に戻るぞ!!




 ――その様子を、少し離れた木の上から見つめている者がいた。


 「……キミがユズルだね」


 だが、その直後だ。

 ユズルの姿が忽然と私の視界から消える。

 そこにはもはや何もない。立っていた場所が空白になっただけだ。

 私は何もない空間を、ただじっと見つめることしか出来なかった。


 ◇ ◇ ◇


 太陽が真上を通り過ぎる頃、俺は王都へと辿り着いた。

 昼下がりの街は、買い物客や大道芸に歓声を上げる人々で溢れ、むせ返るような活気に満ちている。


「えっと、たしかリースの館はここを真っ直ぐ行って……」


 人混みを縫うように歩いていると、どこからか威勢のいい声が飛んできた。


「ミカンおいしいよー! 一個300ゼル! おやつにデザートにどうだい!?」


 呼び声に誘われ、足を止める。並んでいるのは見事なツヤを放つミカンだ。

 パンより高い贅沢品だが……エリクサーのお礼を手ぶらで済ますわけにはいかない。


「おっちゃん、これ10個もらうよ。あと袋も頼む」

「おう、毎度! 10個で3000ゼルだ。買ってくれたお礼におまけに1個つけてやるよ、ほれ!」


 3000ゼルを支払い、袋を受け取る。

 おまけでもらった1個を歩きながら剥くと、爽やかな香りが広がった。

……甘い。これならリースも喜んでくれるはずだ。


 指先に残る故郷の香りを楽しみながら、俺は館への道を急いだ。

 剥いた皮をアイテムバッグに放り込む。ゴミが出ない。あらためてこのバッグの便利さに感謝だ。


 館に到着し、ベルを鳴らす。すると、まるで俺を待っていたかのように門が音もなく開いた。


(自動ドア……じゃないよな。誰かが中から見てるのか?)


 静まり返った庭園を通り、館の扉に手をかける。鍵はかかっておらず、軽い手応えと共に開いた。

 一歩踏み込むと、昼下がりの静寂が俺を迎える。


「ユズルです。リースは居ますか?」


 声を上げると、中央の階段からパタパタと足音が響いた。レイシアさんが上の階から優雅な動作で降りてくる。


「おかえりなさいませ、ユズル様。リースお嬢様は自室にいらっしゃいますが、ご案内しましょうか?」

「お願いします。彼女に話があるんだ」


 案内される道すがら、ふと気づく。応接室とは反対側――ここは家族のプライベートな空間だ。

 昨日の朝迎えに来てくれた時、リースはわざわざここまで俺を迎えに来てくれていたのかと思うと、胸の奥が少し温かくなった。


「こちらでございます」


 レイシアさんが三度、控えめにノックした。


「レイシア、どうしたの? 何かありま……ユズルさん!? 来るなら言ってくださいよ、片付けしてないのに……!」


 扉が開くや否や、リースが慌てふためいて部屋中をキョロキョロと見回した。

 豪華なタンスにシャンデリア、ピンクの天蓋付きベッド。大きな窓から差し込む光に照らされた部屋は、俺の目には十分すぎるほど綺麗に整って見える。


「悪いな、いきなり来て。ミリアのことで、どうしても伝えておきたくて」


 俺の言葉に、リースの動きが止まった。


「……あ、レイシアにも話を通したほうが良いかしら?」

「俺の判断では決められない。まずは2人だけで話をさせてほしい。それで必要だと思ったらリースからレイシアさんに説明してほしい」

「……わかりました。レイシア、少し席を外してくれる?」

「畏まりました。必要な際はすぐにお呼びください」


 ガチャリ、と扉が閉まる。レイシアさんはこちらの事情を察するように、一欠片の不満も見せずに退室した。流石はプロだ。

 部屋が静まり返る。リースは先ほどまでの慌てぶりが嘘のように青ざめ、不安げに俯いていた。


「……ミリアがいないということは、もしかしてお母様が……」


 今にも震え出しそうな肩を見て、俺は思わずその頭に手を置いた。柔らかな髪の感触が伝わる。


「大丈夫だ。リースがくれた薬のおかげで、ミリアのお母さん――リコさんは無事に回復したよ」


 リースが顔を上げた。


「……本当に? お薬、役に立ったのですね……! よかった……本当に良かったです……!」


 溢れ出しそうな安堵の涙をこらえ、彼女は何度も頷いた。


「心配してるだろうと思って、俺だけ先に報告に来たんだ。ミリアは久しぶりに親子水入らずで過ごさせてやりたくてな。明後日の朝、また迎えに行く予定だよ」


 そうして俺はおもむろにアイテムバッグから1つの袋を取り出す。

 先程の青果店で購入したミカンだ。


「よかったら食べてくれ。手ぶらで来るのも少し申し訳なかったから、お土産とお礼にミカンを買ってきたんだ」

「そうだったのですね……。ユズルさん、ありがとうございます。でも、お礼なら私よりもお母様に。エリクサーを譲るのを許可してくれたのは、お母様ですから!」


 フランさんか。少し緊張するが、しっかりお礼を言わなきゃな。


「分かった。でも、フランさんに掛け合ってくれたのはリースだろ。本当にありがとう」

「どういたしまして! 困った時はお互い様です!」


 そう言って笑ったリースの顔は、王都の空に輝く太陽よりも、ずっと眩しく見えた。

読了いただきありがとうございます。

投稿日時は毎週「月・水・金」の週3日としていますので、よろしくお願いします


新規スキルが追加されましたので、現在のスキルを載せておきます。

・言語翻訳

・アイテムバッグ

・MP無限化(車両系スキルに限る)

・トラック召喚

・トラック収納術(生物収納不可)

・魔素燃料化

・トラック移動快適術

・トラック透明+消音化

・荷物噴射

・異世界カーナビ


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