15.5 ミリアの視点
「ミリアです。ただいま戻りました!」
お昼前、私はいつものようにリース様の館に入り挨拶をする。
レイシアさんが玄関まで迎えに来てくれた。
「ミリア様、お仕事お疲れ様でした。お風呂の準備も出来ておりますのでお好きな時にお入りください」
「うん、ありがとうレイシアさん」
そういって私はレイシアさんに重たい荷物を渡す。
重たいものを持ってることを感じさせないかのように歩く。一切の足音も聞こえない。
いつも思うのですが、荷物重いはずなのになんで軽々と持ち上げられるんでしょうか……
レイシアさんって本当に秘密が多い方ですね。
私はいつものようにお風呂へ向かう。
クエストが終わった後のお風呂が最高なんだよね!
しかもいい香りの石鹸もあるし、何よりもとても広い。思いっきり足を伸ばせるのが本当にリラックスできる。
お風呂に着くと、既に誰かが入っているようだった。畳まれた衣装を見る限り、リース様が既に入ってるみたい。
「リース様、ミリアです。お風呂、ご一緒してもよろしいですか?」
「ミリア? おかえりなさい! いいですよ。ゆっくりお風呂に入りましょう」
浴室から声が返ってくる。
リース様とお風呂に入るのは久しぶりだ。
浴室に入ると湯気が私の視界に入る。
「失礼します」
「お仕事お疲れ様、ミリア。ゆっくり休んでくださいね」
私は汚れた体を綺麗にし、浴槽へ入る。
「そういえばミリア、今日ってこの後時間ありますか?」
「時間ですか? はい、特に予定も入れていなかったので。なにかお手伝いできることとかありますか?」
「えっと、ユズルさんという方が居るのですがその方によければ戦闘の指南をしてほしいのです」
ユズルさん。初めて聞く名前だ。
聞くところによると、テストの最中に護衛に逃げられ、ゴブリンに襲われそうになった所助けられたようだ。
ん? 戦闘が出来ないのにどうやって助けたんだろう?
気になってリース様に聞いてみるがはぐらかされてしまった。スキルについては内緒の方向ということでしょうか?
私は勿論リース様のお願いに了承した。
「勿論大丈夫ですよ。私にできることなら何でもお手伝いしますので」
「ありがとうミリア。それじゃあ私はもうのぼせてしまいそうなので先にあがりますね。ゆっくりしてから上がってくださいね」
そう言い残し、リース様は先に上がられた。
私ももう少しお風呂を楽しんだら上がるとしようか。
◇ ◇ ◇
リース様と屋敷を出た後、私はユズルさんの所在について聞いてみる。
「えっと、確かギルドで冒険者登録を行うといってたのでギルドにいるか、もしくは装備屋に居ると思うのでそちらに向かいましょう」
賑やかな町並みをリース様と並んで歩く。髪の色が同じだったら姉妹にみられてたのでしょうか。
もうすぐギルドに着きますね。ただユズルさんという方はいるのでしょうか……
すると突然大きな声が聞こえた。
「ユズルさーん!」
リース様がユズルさんを見つけたようだ。
軽くお互いに挨拶を行い話を聞いてみる。聞くところによると、ユズルさんは冒険者の経験が無いそうだ。勿論戦闘の経験も一切ないとのこと。
聞けば聞くほどどのようにリース様を助けたのかが気になる。あとでそれとなく聞いてみようかな。
私たちはリース様と離れ、ユズルさんと一緒にギルドに入る。
勿論依頼掲示板に向かうためだ。
とはいえ受けるのはスライム討伐一択かな。いつも掲示されてるし、弱いとはいえ知能のあるゴブリンを初めての戦闘相手にするのは少し申し訳ないからね。
◇ ◇ ◇
ギルドを抜け、よく見る草原へと着きました。
スキルのことを聞いてみると「とらっく」という召喚獣? を使うらしいです。
どのような召喚獣なのでしょうか、気になりますね。
さて、スライムがこの辺に……あ、居た!
とりあえず核のことを説明するために一度手づかみして伝えましょう。
うーん、さすがスライムですね。すごく暴れます。
痛くはないのですが、ちょっとうっとうしいですねぇ。さっさと説明しておきましょう。
説明が終わったのでスライムに手を突っ込んで核を握りつぶす。
その光景を見たユズルさんが少し引いていたように見えましたが……きっと気の所為です。野蛮な人に見られてないはず。
次はユズルさんがスライムと戦う番ですね。
ちゃんと剣を振れてるのは良いのですが、あれは恐らく攻撃を受けるのが怖くて目を瞑っちゃってます。
戦いの中で目をつぶるのは悪手中の悪手です。
本来なら瞬きすらとても怖いですが、さすがに瞬きは生理現象。こればっかりはどうにもすることはできない。
おそらく初めての戦闘だと思いますが注意だけはしておこう。ユズルさんには死んでほしくないですし、ここは心を鬼にしてでも相手を見ることの大切さを伝えなければいけません。
その後、暫くスライムを倒し続けたので今日は一旦休息の意味も兼ねて戻ろうかな。
夕方になってしまうとギルドも混雑をしてしまうし、また必要があれば指南をしていくことにしよう。
ギルドに戻り、受付に声を掛けるとなにやらリース様からの言伝で二人一緒に戻ってきてほしいとのこと。
一体何があったのでしょうか? とりあえず急いで戻ることにしよう。
屋敷に戻りリース様の話を聞くとお母さんが倒れてしまったと。
背中に嫌な汗が垂れる。どうしよう。
悩んでいた所、リース様がエリクサーをお譲りくださった。リース様、本当にありがとう……
私たちの体調も気遣って、お弁当まで持たせてくれました。
本当にリース様にお仕えしてよかったです。
この御恩、一生かけてリース様の為に使わせていただきます。
私は改めてリース様に誓いを立て、ユズルさんと一緒に門を出た。
◇ ◇ ◇
トラック……でっか。
私はユズルさんに言われるがままトラックに乗った。ユズルさんも私の隣に座り、トラックに命を吹き込む。
――ガチャン、ギュルルル
聞き馴染みのない音? が耳に入る。
びっくりしていると『道案内を頼む』と言われました。
そうでした。私が道案内しないとたどり着きません。
軽く道案内をするとトラックが動き出した。すごい、馬車の何倍もの速さがあります!
これだとすぐにつくかもしれません! まっててね、お母さん!
トラックのことを聞いていると聞いたことのある怖い声が聞こえた。
この音をリース様も聞いたことがあるのか。相当怖かっただろうな……
いい機会ですし、私とリース様の出会いについて話しておこうかな?
話をしているとユズルさんは『うんうん』と真剣に聞いてくれてた。
そして時間もいい感じに経っているのでそろそろ休憩を提案した所了承してくれたので、休憩を取ることにしましょう。
ですが休憩よりもお母さんの心配をしてくれました。ユズルさんって優しい方なのですね。
ただ、お母さんも心配だけどユズルさんもきっと疲れてます。カルディアへ付く前にバテてしまえば元も子もありません。
なのでどうしても休息を取りたいと言った所、休憩を取ってくれた。
ずっと座ってたので体を伸ばす。
体を伸ばすときって絶対声出ちゃうんだよね。あれなんでなんだろう?
私はおもむろに弁当を開ける。
あ、サンドイッチですね! 私サンドイッチ大好きなので嬉しいな。
サンドイッチを食べながら先程の続きを話す。リース様にお願いされて専属護衛になったことやそのことが切っ掛けでアルベルト家の方々と仲良くなったことなど……
このことが切っ掛けで冒険者ランクを上げるようになったんだよね。懐かしい。
お弁当も食べ終わり、いい時間が経ったのでそろそろ行こう……と提案しようとした所、ユズルさんから出発しようと言ってくれました。
お母さんのこともやっぱり心配だからね。
◇ ◇ ◇
本当に夕刻に着いてしまった。早くても明日になると覚悟していたので嬉しい反面びっくりした。
村から少し離れたところで降りる。ユズルさん曰く『今このトラックの姿が見えるのは俺とミリアの二人だけだから、誰かがいる場所で降りると何もない場所から二人が出てきたように見えてしまう』とのこと。
そういえば何人かここに来るまでに見ましたが誰も私たちのこと見てなかったのはそういう理由だったんだ!
私はユズルさんを案内して実家へ向かうと、村長さんと――倒れているお母さんがいた。
覚悟していたけどこういうの見るのやっぱりつらいな……
けど私にはリース様から頂いたエリクサーがあるんです。
私はゆっくりエリクサーをお母さんの口に入れていくと突然お母さんが光った。
するとお母さんが起き上がった。治ったのね!!
お母さんからの優しい声に緊張の糸がほぐれ、つい抱きしめてしまった。
背中をポンっポンっと優しく叩いてくれる。子供の頃からそうだ。
私はこれが好きなんだ。本当に無事でよかった……
あ、そうだみんなにユズルさんのこと話さないといけないよね。
私はこれまでのことを話した。
お母さんが元気になり、食事も終えたのでユズルさんをお風呂に案内したらお風呂へ入ったので、ちょっとした出来心でびっくりさせようと考えた。
「ユズルさーん! お風呂ぬるくなったら浴槽の横にある魔石触ってくださいね。そしたらお湯出てくるので! あ、タオルここ置いときまーす!」
一瞬バチャンと音がした。にっしっし、驚いてる驚いてる!
私は満足したので戻ると、おかあさんに『悪戯も程々にしとかないと嫌われるよ』と言われた。
ごめんねお母さん。でもこういうの私大好きなんだ。分かっていても止められない……!
そんなことを考えているとユズルさんが出てきたので次は私がお風呂へ入ることに。
イタズラのつもりで『覗いちゃダメですよ?』って言ったつもりだったけど、聞こえてなかったのか無視されちゃいました。残念。
◇ ◇ ◇
お風呂から上がるとユズルさんの姿が見つかりません。
「おかぁさーん。ユズルさんどこいったか知らない?」
「さっき試したいことがあるから外に出てくるって言ってたよ」
私は驚いた。魔物とか出たらどうするつもりなんだろう。
急いで武器を取り、外に出る。村にある唯一の門を抜けると、そこにはユズルさんの姿が。
魔物に襲われていないようで安心しました。
話を聞くと新技を試していたとか……
クナイが何も無いところから現れ、クナイが木に刺さる。
仕組みを聞いてみたら透明なトラックが武器を発射しているということらしいけど……そんなでたらめなの初めて聞いたよ!
ユズルさんが味方で本当に良かった。
しかし魔物も盗賊も居ない場所から来た……そんな場所本当にあるのでしょうか?
いつか話してくれるといいな。
家に変えると布団が3枚並べられていた。
布団が近い……寝てる時にユズルさん蹴ったらどうしよう。
心配していると、ユズルさんはそんなこと気にしないと言ってくれました。
嬉しいのですが……蹴らないように気をつけよう。
気をつけてどうにかなる問題でも無いのですが。
お母さん本当に良くなってよかったな。おやすみなさい。
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