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14 癒やしの光

「……っていうのが、私とリース様の出会いだったんです。あの時のリース様の小さな手の温もりを、私は今でも覚えてます。それが、私と彼女の、決して切れることのない絆の始まりなのです」

「それから、私がファイヤーボールを空高く放つことで、ご家族の方に目印にしてもらって。……無事、合流することができました」


 ミリアの声が、トラックのエンジン音に混じって車内に落ちた。

 語り終えた彼女の横顔は、少しだけ寂しそうで、けれど誇らしげでもあった。


「なるほどな……」

「だから、先程の召喚獣の声を聞いた時は、私も少し驚いたんです。あの時のガーディアンの声に似ていましたから……。リース様も、きっとそれを思い出してしまったんでしょうね」


 俺はハンドルを握る手に、無意識に力を込めた。

 あのバック音声が、リースにとってはただの「知らない言葉」ではなく、ガーディアンを思い出させる絶望の音だったんだな。そんなトラウマを抱えたまま彼女は俺を信頼してトラックに乗ってくれたのか。


 確かに、あの時のリースの怯え方は異常だった。

(……今後は、この世界で安易にウインカーやバックを使わないようにしないとな。いや、いっそ音だけ消す方法がないか、後でスキルボードを調べてみるか)


「よし! ユズルさん。食事にしましょう。今いる辺りが丁度王都とカルディアの真ん中らへんなので一度休憩を取りたいです」

「でもいいのか? 休憩してる分、薬を届けに行くのが少し遅くなるが」

「休憩しなくて不測の事態が起きて薬を届けられなくなるという方がよっぽど危ないですからね。ユズルさんもご飯食べてないでしょうし、召喚獣の操縦するのも疲れるかと思います。休息というのは行動を起こすために必要な要素です。休まなければ万全は生まれないですよ」


 ミリアが力説してくる。そうだな、ここはご厚意に甘えることとしよう。

 トラックを止め、二人でトラックを降りた。心地よい風がふわりと流れる。


「んーーっ!!」


 ミリアが伸びた。こんなに長い事椅子に座ることもなかなかないもんな。

 俺とミリアは草原に座り少し遅めの昼食を取る。

 開けられた弁当を見てみると、そこには沢山のサンドイッチがあった。

 卵にハム、レタスのような野菜も沢山あり、見栄えが非常に綺麗に映る。この世界にも卵を調理するという文化はあるんだな


「あ、ご飯はサンドイッチですね! いただきまーす!」

「いただきます」


 暫くご飯食べながら談笑をする。

 聞くところによると、ミリアがリースの専属護衛になったのは先の救助の件もあり、リースがお願いしたそうだ。

 最初はミリアも戸惑っていたが今では専属護衛となって良かったと笑顔で話ししてくれた。

 そんな他愛もない話をして食事が終わる。


「よし、じゃあそろそろカルディアへ向かおうか。またちょっと長く座ることになると思うから、しんどくなったら言ってくれな」


 先程のミリアの伸びをしたことを思い出し、ミリアに軽く言う。一言『わかりました』とミリアは言い、カルディアへの旅路に戻る。



 時が暫く経ち、空が茜色に染まる。トラックのライトをつけようか考えてた頃。


「ユズルさん、あの遠くに家がぽつぽつと見えてるのがカルディアです! 本当に今日中に着きましたね!!」


 そのままトラックを走らせると、前方に村が見えてきた。

 低い家々と畑が広がる、ごく普通の村だ。

 人の営みを示す煙が、いくつか空へ昇っている。


「そうだな、ちょっとだけ速度を上げるか」


 俺はアクセルを少し強めに踏み込む。トラックの速度が上がり、窓から入る風が強くなる。

 ミリアは『は……速いです……』と少しびっくりしたものの、バックミラー越しにミリアを見ると、そこには少し楽しそうな表情を見せてる彼女がいた。



 それからまもなくしてトラックはカルディア付近についた。

 このままカルディア入口で降りてしまえば、何も無い空間から俺とミリアが出てくるように見えてしまって混乱をさせてしまう。

 変に混乱を起こしたくないので少し離れた場所へとトラックを止める。


「よし、着いたから降りようか。お母さんを治してやろうな」

「はい!」


 俺とミリアはその足でカルディアへと入村した。



 ◇ ◇ ◇


 ミリアに案内され、ミリアの母親が居る家へと入る。


「お母さんただいま! 倒れたって聞いたけど大丈夫!?」


 ミリアの母親は横になっている。と、その前に知り合いらしき方を見かける。


「おぉ、ミリアちゃんじゃないか久しぃねえ。今はリコさん寝てるから少し静かにしてやるんじゃぞ」

「村長さん、お久しぶりです。手紙を読んで、すぐに駆けつけました」


 ミリアは急いで古びた寝台の傍らへ駆け寄った。

 部屋には、鼻をつくような薬草の匂いが満ちている。寝台に横たわる女性は、俺が見ても分かるほど衰弱し、呼吸は今にも途絶えそうなほど細かった。


「医者も匙を投げてしもうたんだ。もう、静かに見送ってやるしか……」

「いいえ、まだ諦めません! リース様から……これを、預かってきたんです」


 ミリアが震える手で取り出したのは、黄金色の光を内包した小さな小瓶――エリクサーだった。


「エ、エリクサーだと!? そんな伝説の霊薬を……」


 村長の枯れた声が驚きに跳ねる。ミリアは返事をする余裕もなく、祈るような手付きで瓶の栓を抜いた。その瞬間、部屋の重苦しい空気が一変した。瑞々しい果実のような、命そのものを凝縮したような香りが広がる。


「お母さん、お願い……飲んで。帰ってきて……!」


 ミリアは震える手で、一滴ずつ慎重に唇へ流し込む。

 液体が喉を通り抜けた直後だった。母親の体が柔らかな光に包まれ、土色だった頬がみるみるうちに鮮やかな朱が差していく。


 止まりかけていた時計の針が、猛烈な勢いで動き出すような――


「……ん……っ、ぁ……」


 母親のまぶたが、ゆっくりと持ち上がる。その瞳に、涙を溜めたミリアの姿が映った。


「……ミリア? おかえりなさい。あなた、そんなに泣いてどうしたの……?」

「お母さん……っ! 体は!? どこか痛いところはない!?」


 戸惑いながら母親は自分の腕を上げ、何度も握りしめた。


「痛くない……。石のように重かった体が、まるでお風呂上がりのように軽いわ。私、さっきまで死ぬ夢を見ていた気がするのだけど……」


「――お母さんっ!!!」


 耐えきれなくなったミリアが、弾かれたように母親の胸に飛び込み、強く、強く抱擁した。


「痛い、痛いわよミリア。もー、いくつになっても甘えん坊さんなんだから。よしよし」


 笑いながら娘の背中を叩く母親の手は、震えずしっかりと包みこんだ。



 ◇ ◇ ◇


「ところでそちらの方はどなたなのでしょうか?」


 ミリアの母親が俺の方を見て質問する。


「この方はユズルさん。ユズルさんの持っているスキルのお陰で早くカルディアに来ることが出来たんだ」

「ユズルさんね。はじめまして、ミリアの母のリコと言います。娘がお世話になってます」

「村長のバルドじゃ。だがみんなは村長と呼んでくれてるから好きな名前で呼んでくれると嬉しいぞ」

「はじめまして。冒険者をやってるユズルといいます。戦闘の指南などをミリアさんに行っていただいており本当にお世話になってます」


 お互いに軽く挨拶を交わす。

 リースとの出会い、ミリアとの出会い、今はリースの家にお世話になってることやトラックのことも軽く説明した。


「なるほど、王都へ手紙を出してから来るのが速いと思ったらそういうことじゃったか。ユズルさんや。リコさんを助けてくれてありがとう」

「いえ、お世話になってますし、これくらいはさせてください」


 ミリア家に暖かい空気が流れる。

 温かい空気を流せる架け橋になれて本当によかった。



 それから時が経ち、ミリアの家で食事を行った。

『病み上がりなんだから』と村の人がリコさんの代わりに料理を作ってくれる。賑やかだなと思うと同時に慕われてるんだと認識した。


「ユズルさん、よければ泊まっていってください。布団も予備がありますし、お風呂も小さいですがあるので」


 リコさんが提案してくれる。トラックに布団もあるし、荷台で寝るのも悪くないかなと思ってたが、せっかくのお誘いだから泊まっていくことにしよう。

 体を洗い、お風呂に浸かる。


「ユズルさーん! お風呂ぬるくなったら浴槽の横にある魔石触ってくださいね。そしたらお湯出てくるので! あ、タオルここ置いときまーす!」


 突然ミリアの声が聞こえて慌てる。特にやましいことをしているわけでは無いのだが、お風呂入ってる時に声かけられるのは流石にびっくりするな。

『はーい』と返事だけして、のんびりとお風呂に浸かる。


(そうだ、スキルポイント確認しよう。スライムも結構倒したし、ポイント増えてると良いな)

 俺はステータスを開く。レベルが1から3に上がっている事に気がついた。スキルボードを開くとスキルポイントが2増えていた。なるほど、レベルが上がると1つスキルポイントが上がるのだろう。

 そして俺は以前から決めていた能力を試そうととあるスキルを手に入れる。


「荷物噴射(1Pt)」

『説明:トラック収納術で格納された任意のアイテムをトラックから噴射する。噴射物は念じるだけで任意の場所へ飛ばすことが可能』


 昼間に買ったクナイを収納しておけば、これで攻撃の手段として使えるのではないか?

 試してないので実践で使うのはまだ難しいが、試しておいて損はない。

 残ったスキルポイントはとりあえず残しておこう。



 よし、温まったしそろそろ風呂を出ようかな。

 脱衣所へと俺は向かい、タオルで水滴を拭き取り服を着る。


「お風呂ありがとう。凄くさっぱりしたよ」

「満足いただけたようで良かったです! じゃあ次は私がお風呂いただきますね」


 そう言い残し、ミリアは脱衣所の方へ向かった。途中で『覗いちゃダメですよ?』と言われたが聞かなかったことにする。


(とりあえずスキルの確認しにいくか)


 俺はリコさんに少しだけ外に出ていくと告げて、暗い外へと足を運んだ。

読了いただきありがとうございます。

公開日時は毎週「月・水・金」の週3日としていますので、よろしくお願いします


新しいスキルが追加されたので整理用に記載しておきます。

・言語翻訳

・アイテムバッグ

・MP無限化(車両系スキルに限る)

・トラック召喚

・トラック収納術

・魔素燃料化

・トラック移動快適術

・トラック透明+消音化

・荷物噴射


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