11 師弟関係
装備屋を出てギルドに戻ろうとすると見知った人が前を歩いてるのが見える。
「あ、ユズルさーん!」
リースだ。リースの隣に赤い髪の少女が並んでいる。
とりあえずリースの元に向かおう。
「おつかれさま。商会の仕事か?」
リースは赤い髪の少女と俺を交互に見ながら口を開く。
「いえ、ユズルさんに少し用事がありまして。えと、こちらはミリアです。私の専属護衛なのですが、先程王都に戻ってこられまして」
「ユズルさんですね、リース様から話は聞いています。リース様を助けていただきありがとうございます!」
ミリアは会釈を行った。
「ユズルだ。気楽に話してくれて大丈夫だからな」
お互いに軽く自己紹介を行うと、リースが喋りだす。
「ユズルさんって装備を持ってないって言ってましたが、今までモンスターと戦ったことはありますか?」
「いや、まだ一度も戦ったことはないな。強いて言えばリースを助けるために突っ込んでいったっきりだけど、それがどうかしたのか?」
「先程ユズルさんが装備屋に行くということを仰ってたので、戦闘経験無いのかなと思いまして。よければミリアと一緒にクエストへ行って、戦闘訓練を積んでみてはどうかなと思って追いかけてきました!」
願ってもない申し出だ。
正直なところ、自分がこの世界で通用するのか、俺自身まだ何1つ分かっていない。
戦えないまま依頼を受ける不安を抱えていたのも事実だった。
勿論二つ返事で了承する。
「ミリア、ユズルさんのことよろしくお願いしますね」
「はい。お任せください!」
「では私はもう少しで仕事のお勉強をしないといけないので先に館へ戻りますね。ユズルさん、初依頼ファイトです!」
リースが大きく手を振りながら俺達と離れる。
その背中を見送りながらふと気付く。ここから先は、守られる側ではいられないのだと。
俺達はリースが見えなくなるまで手を振り続けた。
「ではギルドにいきましょうか、ユズルさん」
「おう、よろしく」
短く答えながら、胸の奥に小さな緊張を覚えていた。
これが、冒険者としての最初の一歩になる。
賑やかな町並みを歩きながら俺達はギルドへ向かった。
◇ ◇ ◇
ギルドへ入る。相変わらずガヤガヤとした冒険者の声が響き渡り、うるさいと思いつつもどこか安心感を感じる。
(俺もこの空気に馴染める立派な冒険者になれるだろうか)
そんなことを考えながら依頼ボードをチェックする。
「戦闘依頼はっと……あった」
【常駐依頼 スライムの撃破 1体につき20ゼル 依頼可能ランクF以上】
「ユズルさん、まずはこれにしましょう。スライムなら冒険者になりたての方でも十分に倒せる敵ですし、これなら指南もやりやすいです」
「スライム狩りいいですね。わかりました、お願いします」
「では行きましょ! 南門から出たところにある草原に出てくるので案内しますね」
ミリアはギルドを出ようとした。
(あれ、クエストボードにある張り紙を受付に持っていく必要がある気がするけど持っていかなくてもいいのだろうか?)
あたりを見回すと確かにクエストボードを見ただけですぐどこかに行く冒険者もいる。張り紙を受付に持って行く人も居る。多種多様だ。
「あれ、張り紙は受付に持っていかなくても大丈夫なのか?」
疑問に思ったのでミリアに問いかける。
「えっと、クエストには『常駐クエスト』と『通常クエスト』、あとここには張り出されてないけど『緊急クエスト』の3種類があるの」
ミリアが説明してくれる。常駐クエストは受付自体行っておらず、報告のみだけで良いそうだ。
通常クエストが受付必須で、緊急クエストは専属の魔法使いがギルドの上に火魔法を放ち、花火のようにして冒険者に知らせるようだ。
話を聞いているうちに、頭の中が情報でいっぱいになる。
正直、“危なくなったら知らせが来る”くらいの認識で十分だろう。
「そうなのか、ありがとう。それじゃあスライム狩りに行こう」
期待と不安を胸にギルドを出た。
◇ ◇ ◇
南門を出て少し歩くと草原が出てきた。
見覚えのある景色に、自分がここから王都に入ったのだと確信する。
「そういえばユズルさんってなんかスキルや魔法をつかえたりしますか?」
「トラックという大きな馬車のような乗り物を用意することしか今のところは出来ないな。変な目立ち方したくないから街の周辺では使わないようにはしてるが、移動手段であって攻撃手段ではないんだ」
他にも収納系のスキルがあることも伝える。ミリアは『うんうん』と頷きながらユズルの話を聞いている。
「ということは基本的にユズルさんが武器を使って戦う感じになりますね。武器は持ってますか?」
「さっきリースに会う前丁度良い重さの片手剣を買った所なんだ。あとさっき言ったトラックを操縦するときに大きい装備だと邪魔になるから、邪魔ならんよう軽い皮の胸当ても一緒だな」
「私も片手剣を使っているので丁度良かったです。それじゃあ一旦スライム探しましょうか」
「はい」
少し探したらすぐにスライムが見つかった。
なんか想像していたスライムそのものだな。全身が水色で赤い核がスライムの中にあるのが見える。
「まずはこのスライムの倒し方なんですが……よいしょっと」
ミリアは急にスライムの方に歩いていき、スライムを抱きかかえた。
「スライムの中央に赤い核……えっと、石みたいなのがあると思います。これを壊せばスライムは倒すことが出来ます」
「キュイッ、キュイッッ」
抱きかかえられたことに不満を持っているのか、スライムがさっきからずっと暴れている。
『うるさいなー』と文句をいいつつも、スライムの倒し方を説明するミリア。これは中々シュールで面白い。
「えっと、さっきから滅茶苦茶スライム暴れてるけど痛くないのか?」
「冒険者ですからね! これくらいはもう慣れてます!」
そう言ってミリアは手づかみでスライムの核を握りつぶした。
いやいや、これ、慣れでどうにかなるものか!?
ミリアは『ん? どうしたの?』と言わんばかりの表情を向ける。俺のほうがおかしいのか……?
「スライム倒したときに石を落としたと思うのですが、これは魔石と呼ばれるものです。ギルドへ報告する際に渡すとスライムのものだと1つにつき30ゼルもらえます」
ミリアは赤く小さいその魔石を持ちながらユズルに説明をする。
ミリアが言うには、魔物を倒すと、何の魔物を何体倒したかがプレートに自動で記録されるらしい。その数が依頼報酬になり、さらに魔石を渡せば追加で金がもらえる。ギルド報告の度に討伐数がリセットされるそうだ。
仕組みは少しややこしいが、倒せば倒すほど稼げるということだけは理解できた。
「次は剣の使い方ですね」
ミリアはそう言い、少し離れたところに居たスライムの方へと足を運ぶ
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次回
閑話投稿日は2月15日18時半
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