10 支度
門を出て、右に暫く進むと葉っぱの絵が描かれた看板の雑貨店があった。
そこを曲がり、少し進むと立派な建造物がある。看板に文字らしきものが書いてはいるがなんと書いているかが読めない。
しかしなぜだかその文字が『ギルド』と書いてあることは把握できる。翻訳ってすごいな。
ギルドに入ってみよう。
「あら、あまりみない顔ですね。冒険者登録でしょうか?」
受付の方が案内してくれる。
「あぁ、登録と、できれば簡単な依頼をいくつかやらせてほしいのだが……」
「ではこちらの用紙に必要事項をご記入ください。必要でしたら代筆も行いますがいかがなさいますか?」
悩むな。確かに文字を読んだり見たり聞いたりすることは可能だけど、日本語を書いて通じるのだろうか?
ここは念の為に代筆をお願いしよう
「それじゃあ申し訳ないが代筆してもらってもいいだろうか」
「わかりました。お名前がユズルさん、年齢30歳で職業は……ドライバー? すみません、ドライバーってどういった職業なのでしょうか?」
受付の方が悩む。適当に答えたけど流石にドライバーと言ってもわからないか。
なら他になんと伝える? 運送業、行脚人、何もしっくりこない。
かといって使ったこともない剣を使った剣士と決めるのもなにか違うものを感じる。
「んー特に決まった職業があるわけではないんだが、その場合ってどうすればいい?」
「でしたら空白でも構いませんよ。冒険者になってからあの職業の方が良いかもといって変更される方もいらっしゃいますので」
なら空白にしておこうかなと考えていると、受付が続けて説明する。
「しかし、パーティ登録を誰かと行うとなった場合、職業を持っていたほうが有利になりやすいです。一つの職業に特化してる人と、複数の職業をそこそこ使える器用貧乏の方だとどうしても職を決めている方のほうが声を掛けやすい傾向があります。なので、『これだ!』と思う職業があれば早めに登録することをオススメします。……あ、この小さい四角の枠にどの指でもいいので3秒触れてもらってもいいですか?」
ユズルは登録用紙の隅にある四角い枠に指を置く。
「わかった。その時はまた寄らせてもらおう。えっと、指はこれで大丈夫か?」
「はい、ありがとうございます。個人の魔力を鑑定する装置が備わっていますので、皆様にご協力頂いてます。身分証の本人確認のためと、身分証決済というシステムがありまして、そこでご本人様の魔力照合が必要になります。身分証決済についてはご存知ですか?」
身分証決済……たしかリースが教えてくれたやつだよな。
「知人に聞いたからそこは大丈夫だ」
「わかりました、身分証作るのでご自由にお過ごしください。30分ほどお時間いただきますので、時間が来たと思ったらまた受付にお声がけください」
そう言われ、暇つぶしに依頼掲示板を眺める。
家の掃除から逃げたペットの捜索依頼、魔物退治、護衛任務など多種多様に渡るようだ。
そうこうしているうちに30分ほど経ったので受付に戻る。
「おまたせしました。こちらがユズル様の身分証プレートになります。なくさないようにしてくださいね」
ペンダント型のプレートを手に入れた。プレートにはユズルの文字とFの文字。
「では簡単にランクシステムについて案内させていただきます。全ての冒険者様はFランクから開始し、依頼の達成率によってランクが上下します。Fから始まり、E,D,C,B,Aと続き、最高ランクがAの上にSランクがございます」
なるほど、よくある異世界漫画にあるランクシステムと同じだな。
続けて依頼の受注方法や依頼成功率によってランクが下がる可能性があることなども聞いた。概ね想像通りのシステムだ。
「以上で簡単な説明は終わりますが何かわからないことなどはありますか?」
特に聞きたいことは……そうだ。装備を何もつけていない。
依頼を受けるために一度装備を整えておこう。
「そうだな、ついでに聞いておきたいんだが、武器や防具を売ってる店ってこの近所にあるか?」
「装備でしたら、ギルドを出て右に曲がってしばらくするといくつかお店が並んでるので足を運んでみてはいかがでしょうか?」
「ギルドを出て右だな、ありがとう。また依頼を受けに来ると思うからその時はよろしく頼む」
俺はそう言い残し、ギルドを出る。
ギルドを出て右へ曲がると、街の空気が少し変わった。
金属が打ち合わされる乾いた音――鍛冶仕事の音や、革の匂いが風に乗って漂ってくる。
どうやらこの先が、冒険者向けの店が集まる一角らしい。
鍛冶といえばドワーフだが、この世界にドワーフは居るのだろうか? エルフや獣人族も今のところ見てないが、もし居るなら会ってみたい。
そんなことを考えながら、一件の店へと足を運んだ。
「らっしゃい。兄ちゃんここいらでは見かけない顔だな。新人さんかえ?」
「冒険者になろうと思ってな。ちょっと色々見せてほしい」
「おう、なんかあったら呼んでくれ」
装備屋のおっちゃんは武器の手入れをするために何やら瓶を開けた。
何かの薬品だろうか、独特な香りが店内を包み込む。
あたりを見渡すと、剣から槍、杖といった攻撃に使うものから大きな盾や鎧も陳列されている。
(うーむ、オーソドックスなのはやはり剣士かな。)
剣が陳列されてる場所へ向かう。
レイピアから双剣、片手剣から大剣まで……
一通り見て回り、一番軽そうな片手剣を手に持った。中々手に馴染む。
重すぎず軽すぎず。しかし刃渡りはそこまで短いというわけでもなく。これにしよう。
防具も動きやすいもののほうが良いな。甲冑とかだと流石に運転に支障をきたす。
あとはやりたいことがあるが、クナイほどの短剣置いてあるかな?
「店主、すまない。短剣はどれくらいの量置いてある? 手のひらサイズの小さいものがいくつか欲しいのだが」
「ひょっとしたらクナイのことかえ? ほんなら四十本在庫がある。ほれ、そこの箱の中だ。1本500ゼルだぜ」
「なら全部もらおう。あと、この剣と皮の胴当ても一緒に」
「全部!? ……はは、毎度あり! 全部で14万ゼルでな。支払いはどうする? 身分証決済と現金どちらでもええよ」
「持ち合わせはあるから大丈夫だ。現金で頼む」
身分証決済でも良かったんだがまだ身分証決済をやったことがない。いきなり使うのは流石に不安だ。
アイテムバッグから14万ゼルを取り出し、店主に手渡す。
「確かに14万ゼルだな、毎度。手入れが必要になったら片手剣は5000ゼルで請け負うから必要になったらまた来てや」
店主に礼を言い、装備屋を後にする。
さて、依頼にでも受けに行くかな。
読了いただきありがとうございます。
現在のユズルの所持品が更新されたので現在までの所持品になります。
・爪切り
・HDMIケーブル
・ガラス製のコップ
・プリンター用インクカートリッジ (赤)
・布団
・小石
・身分証 (プレート)
・片手剣
・皮の鎧
・クナイ40本
投稿日時は毎週「月・水・金」の週3日としていますので、よろしくお願いします




