筋肉は裏切らないが、急かすとキレる
日差しが強くて、瓶の中の液体がきらきらしている時間。
クリムは棚の上で日向ぼっこ、
ルゥは入口で伸びをしてから伏せた。
そこへ――
カラン。
「筋肉を強化できるプロテインみたいなポーション、ありますか?」
入ってきたのは、見るからに鍛えてる冒険者。
肩幅が扉より広い。
俺は即答した。
「“飲んだ瞬間ムキムキ”なら無い」
「ですよね!」
「でも“筋肉が裏切らなくなるやつ”ならある」
冒険者の目が輝いた。
「それです!!!」
クリムが「きゅ?(危険ワード)」
ルゥが「わふ(期待値調整しろ)」と鳴く。
俺は小瓶を三つ並べた。
「いいか。
筋肉は“足す”より“整える”が先だ」
◆一本目
【筋疲労回復・回り改善ポーション】
「まずこれ。
鍛えた後に飲む。
乳酸を流して、回復を早める。
筋肉が“ちゃんと育つ土台”を作る」
「おお……効きそう……」
◆二本目
【フォーム意識クリアポーション】
「次。
無意識のクセを減らす。
同じ回数でも“効かせる場所”がズレてると
筋肉は不貞腐れる」
「筋肉、感情あったんですか」
「ある。わりと繊細」
クリムが「きゅ(わかる)」
ルゥが「わふ(拗ねる)」と頷く。
◆三本目
【休養をサボらせないポーション】
「最後。
“まだいける”を止めるやつだ。
筋肉は休ませた分だけ強くなる。
これは“やめ時が分かる”」
冒険者は三本を見て、少し黙った。
「……俺、
強くなりたくて、
ずっと追い込んでました」
「それで伸び悩んでる」
「……はい」
俺は肩をすくめる。
「筋肉はな、
努力は裏切らないが、
無茶は普通に裏切る」
冒険者が苦笑した。
「じゃあ、
この三本で……」
「おう。
あと飯はちゃんと食え。
タンパク質だけじゃ生きられん」
「はい!!」
元気よく頭を下げて帰っていった。
扉が閉まる。
俺は棚を見上げてぼそり。
「……次はどうせ
“筋肉と会話できるポーション”
とか来るな」
クリム「きゅ(来る)」
ルゥ「わふ……(絶対来る)」
やれやれ。




