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錬金術師のポーション屋。疲れたときはやっぱりこれ  作者: ChaCha


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88/111

消えたんじゃない。見えなくなっただけだ

夜。

店の灯りは落ち着いていて、外の音も少ない。


クリムは棚の上で丸くなり、

ルゥは入口に伏せて、ゆっくり瞬きをしている。


そこへ――


カラン。


「……嫁の魅力が、消えた気がする」


入ってきた客は、椅子に腰を下ろすなりそう言った。

声は低く、疲れが混じっている。


俺はすぐに否定しなかった。


「“消えた”って思った瞬間、何があった」


「別に喧嘩したわけじゃない。

ただ……ときめかない。

昔はあんなに――って、比べ始めたら止まらなくて」


クリムが「きゅ……」と小さく鳴き、

ルゥは「わふ(危険ワード)」と耳を伏せる。


俺は腕を組んだ。


「確認だ。

それ、“嫁の魅力”が消えたんじゃない。

“お前の見る角度”が固定された」


客は黙る。


「仕事、家事、日常。

役割が増えると、人は“機能”で相手を見る。

魅力は“余白”に出るもんだ」


俺は棚から小瓶を三つ並べた。


「これは“恋に戻る”薬じゃない。

“ちゃんと人を見る”ためのやつだ」


◆一本目

【慣れで固まった視点をほぐすポーション】


「まずこれ。

“いつもの姿”を“いつもの枠”で見なくなる。

同じ人でも、見え方は変わる」


客が小さく息を吐く。


◆二本目

【役割から一歩外れるポーション】


「“妻”“母”“家の人”ってラベルを、

一時的に外す。

“一人の人間”として見る時間を作る」


「……それ、忘れてました」


◆三本目

【自分の変化に気づくポーション】


「最後。

魅力が消えたように感じるとき、

だいたい“自分の余裕”も削れてる。

相手じゃなく、自分を見る」


客は三本を見つめて、しばらく黙ったあと言った。


「……俺、

嫁が変わったって思ってたけど……

俺が“見るのをやめてた”だけかもしれない」


「そういうことだ」


俺は頷く。


「魅力は消えない。

“当たり前”の奥に隠れるだけだ」


クリムが「きゅ(隠れんぼ)」

ルゥが「わふ(見つけ直せ)」と鳴く。


俺は続けた。


「いいか。

ときめきは“維持”するもんじゃない。

“見つけ直す”もんだ」


客の肩が、すっと下がった。


「……帰ったら、

少し話してみます」


「それでいい」


俺は瓶を差し出す。


「答えを急ぐな。

今日は“視点のメンテナンス”だけで十分だ」


客は静かに頭を下げ、店を出ていった。


扉が閉まる。


俺は天井を見上げて、ぼそり。


「……次はどうせ

“見つけ直したら照れくさくて何言えばいいですか”

とか来るな」


クリム「きゅ(続編)」

ルゥ「わふ……(夫婦クエスト)」


やれやれ。



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