お年玉は現金じゃなくて
正午すぎ。
店に日が差し込んで、瓶の影が床に並ぶ。
クリムは棚の上で伸び、
ルゥは入口であくび。
そこへ――
バンッ。
勢いよく入ってきた客が叫んだ。
「俺だって! お年玉が欲しい!!」
俺は手を止めて、ゆっくり顔を上げる。
「年齢」
「成人」
「解散」
「待って!? 気持ちの話!!
正月なのに! 働いて! 何も貰ってない!!」
「あー……“報われ感”不足か」
クリムが「きゅ(わかる)」と頷き、
ルゥは「わふ(年始あるある)」と尻尾を振る。
俺は棚から小瓶を三つ並べた。
「金は出ない。
代わりに“正月の足りない部分”を埋める」
◆一本目
【自分を甘やかしていい許可ポーション】
「まずこれ。
“正月くらいサボっていい”“今日は自分優先でいい”って思える。
意外と一番お年玉っぽいやつだ」
「許可……欲しかった……」
◆二本目
【頑張りの見返り実感ポーション】
「次。
去年やったこと、耐えたこと、ちゃんと拾える。
“何も貰ってない”が“ちゃんとやってた”に変わる」
「……それ、沁みる……」
◆三本目
【小さなご褒美を見逃さないポーション】
「最後。
コンビニの肉まんとか、昼寝とか、
“これで十分だな”って思える感度を上げる」
客は三本を見て、肩の力が抜けた。
「……現金じゃなくても、
ちょっと元気出ました」
「それでいい」
俺は肩をすくめる。
「お年玉ってのはな、
“今年も生き延びたな”って確認作業だ」
クリムが「きゅ(生存確認)」と鳴き、
ルゥが「わふ(大事)」と伏せる。
客は笑って瓶をしまった。
「じゃあ……
今日は自分にお年玉あげます」
「うまいもん食え。
それが一番効く」
扉が閉まる。
俺はカウンターに寄りかかって呟いた。
「……正月に欲しいのは、
金より“ちょっと許される感じ”だな」
クリム「きゅ(許可大事)」
ルゥ「わふ(甘やかせ)」
さて次は――
どうせ
「親戚の集まり回避お年玉ください」
とか来るんだろうな。
……やれやれ。




