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錬金術師のポーション屋。疲れたときはやっぱりこれ  作者: ChaCha


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79/112

夢は寝てる間に、勝手に来る

深夜と早朝のあいだ。

店の灯りは半分だけ。


クリムは棚の上で毛玉になり、

ルゥは入口で丸くなって、たまに尻尾だけ動かしている。


俺は帳簿を閉じたところだった。


そこへ――


カラン。


静かに入ってきた客が、遠慮がちに言った。


「……初夢……みたことないんですよね……

一回くらい、みてみたい」


俺はペンを置いて、顔を上げる。


「正月だからって、

夢は義務じゃないぞ」


「分かってるんですけど……

みんな“いい夢だった”とか“縁起がどう”とか言うじゃないですか……

俺、いつも“寝たら朝”で……」


クリムが「きゅ……」と同情し、

ルゥが「わふ(意外と多い)」と小さく鳴いた。


俺は少し考えてから言う。


「まず確認だ。

“見たい”のは、夢か?

それとも“ちゃんと休めてる実感”か?」


客は一瞬黙って、ぽつり。


「……後者、かもしれないです」


「だろうな」


俺は棚から小瓶を三つ並べた。


「夢は“作るもの”じゃない。

“入り口を整える”ものだ」


◆一本目

【帰宅後の緊張をほどくポーション】


「これ。

寝る前まで気が張ってると、

脳が“夢どころじゃない”状態になる。

まずは“今日は終わった”って身体に教える」


客が小さく頷く。


◆二本目

【一日の終わりに頭を切り替えるポーション】


「次。

反省会とか、明日の心配とか、

全部ここで区切る。

夢は“余白”に入り込むからな」


「……余白……」


◆三本目

【夢を邪魔しない安心感を残すポーション】


「最後。

無理に“夢を見せる”んじゃない。

“見てもいいし、見なくても大丈夫”って状態を作る」


客は三本を見つめて、少し笑った。


「……見られなくても、いいんですね」


「ああ」


俺は軽く肩をすくめる。


「夢ってのはな、

“見よう”とすると逃げるし、

“なくてもいい”と思った夜に、ふらっと来る」


クリムが「きゅ(照れ屋)」と鳴き、

ルゥが「わふ(猫みたいだな)」と欠伸した。


客は瓶を大事そうに受け取る。


「ありがとうございます……

今年は、“ちゃんと休む”ところから始めます」


「それが一番縁起いい」


客が帰ったあと、

俺は棚を眺めて小さく呟く。


「……初夢より、

朝ちゃんと起きられたほうが勝ちだろ」


クリム「きゅ(完全同意)」

ルゥ「わふ(夢はオマケ)」


さて次は――

どうせ

「初夢で嫌なやつ見たんで上書きしたい」

とか来るんだろうな。


……やれやれ。



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