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錬金術師のポーション屋。疲れたときはやっぱりこれ  作者: ChaCha


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77/112

初詣列耐久ポーションは

正月の昼下がり。


店の前の通りは人が多く、

どこもかしこも浮き足立っている。


クリムは棚の上で丸くなり、

ルゥは入口で「今日は落ち着かねぇな……」という顔をしていた。


そこへ――


カラン。


帽子を深くかぶった客が、即座に言う。


「店主。

初詣で並ぶのキツイ!

なんか下さい」


俺は間髪入れず返す。


「並ばなくて済むやつは無い」


「そこを何とか!!

寒いし!人多いし!

後ろの人の吐息が首にかかるし!!」


「あー……あれな。

精神削ってくるよな」


クリムが「きゅ(人の密集は敵)」と鳴き、

ルゥが「わふ(あれは修行)」と同意する。


俺は棚を見て、少し考えてから言った。


「一発で解決はしない。

でも“並ぶ時間を別物にする”やつならある」


小瓶を三つ並べる。


◆一本目

【待ち時間を“無”にするポーション】

「身体の感覚を少し鈍らせる。

寒さ、足のだるさ、

“まだかよ”って思考を薄くする」


「それ欲しい……」


◆二本目

【人混みイライラ緩和ポーション】

「前後左右の他人を

“背景”として処理しやすくする。

押された記憶が残りにくい」


「合法でよかった……」


◆三本目

【願い事を欲張らなくなるポーション】

「初詣で一番しんどいのはな、

“全部お願いしなきゃ”って焦りだ。

これは“一個でいいや”って思えるやつ」


客がふっと笑った。


「……あ、

それ飲んだら、並ぶ意味も軽くなりそう」


「そういうことだ」


俺は続ける。


「初詣はな、

“ちゃんと願うこと”より

“今年もここまで来た”って確認する行事だ」


クリムが「きゅ(生存確認)」と鳴き、

ルゥが「わふ(それ大事)」と尻尾を振る。


客は小瓶を受け取り、肩の力を抜いた。


「……よし。

並んでくる」


「無理すんな。

途中で抜けてもバチは当たらん」


扉が閉まる。


俺は天井を見上げて、ため息ひとつ。


「……次はどうせ

“おみくじ凶だったんで人生立て直したい”とか来るんだろうな」


クリム「きゅ(来る)」

ルゥ「わふ(確定)」


……やれやれ。

正月は、忙しい。


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