初詣列耐久ポーションは
正月の昼下がり。
店の前の通りは人が多く、
どこもかしこも浮き足立っている。
クリムは棚の上で丸くなり、
ルゥは入口で「今日は落ち着かねぇな……」という顔をしていた。
そこへ――
カラン。
帽子を深くかぶった客が、即座に言う。
「店主。
初詣で並ぶのキツイ!
なんか下さい」
俺は間髪入れず返す。
「並ばなくて済むやつは無い」
「そこを何とか!!
寒いし!人多いし!
後ろの人の吐息が首にかかるし!!」
「あー……あれな。
精神削ってくるよな」
クリムが「きゅ(人の密集は敵)」と鳴き、
ルゥが「わふ(あれは修行)」と同意する。
俺は棚を見て、少し考えてから言った。
「一発で解決はしない。
でも“並ぶ時間を別物にする”やつならある」
小瓶を三つ並べる。
◆一本目
【待ち時間を“無”にするポーション】
「身体の感覚を少し鈍らせる。
寒さ、足のだるさ、
“まだかよ”って思考を薄くする」
「それ欲しい……」
◆二本目
【人混みイライラ緩和ポーション】
「前後左右の他人を
“背景”として処理しやすくする。
押された記憶が残りにくい」
「合法でよかった……」
◆三本目
【願い事を欲張らなくなるポーション】
「初詣で一番しんどいのはな、
“全部お願いしなきゃ”って焦りだ。
これは“一個でいいや”って思えるやつ」
客がふっと笑った。
「……あ、
それ飲んだら、並ぶ意味も軽くなりそう」
「そういうことだ」
俺は続ける。
「初詣はな、
“ちゃんと願うこと”より
“今年もここまで来た”って確認する行事だ」
クリムが「きゅ(生存確認)」と鳴き、
ルゥが「わふ(それ大事)」と尻尾を振る。
客は小瓶を受け取り、肩の力を抜いた。
「……よし。
並んでくる」
「無理すんな。
途中で抜けてもバチは当たらん」
扉が閉まる。
俺は天井を見上げて、ため息ひとつ。
「……次はどうせ
“おみくじ凶だったんで人生立て直したい”とか来るんだろうな」
クリム「きゅ(来る)」
ルゥ「わふ(確定)」
……やれやれ。
正月は、忙しい。




