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錬金術師のポーション屋。疲れたときはやっぱりこれ  作者: ChaCha


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76/112

2026年 正月の朝。


店の扉は開いているのに、

街の空気がどこか寝ぼけている。


クリムは棚の上で餅みたいに丸くなり、

ルゥは入口で「今日は人来るのか?」みたいな顔をしている。


俺は湯気の立つカップを片手に、カウンターにもたれていた。


そこへ――


カラン。


勢いよく入ってきた常連が叫ぶ。


「店主!!

正月なのに実感が湧かない!!

一発効くやつください!!」


俺は即座に返す。


「落ち着け。

正月は逃げない」


「でも!!

昨日と今日の差が分からない!!

気持ちが追いつかない!!」


「あー……あるあるだな」


クリムが「きゅ(年跨いだだけ)」とでも言いたげに鳴き、

ルゥは「わふ(暦の暴力)」みたいな顔をした。


俺は棚から小瓶を三つ並べる。


「一発は無理だ。

だから“段階的に効くやつ”な」


◆一本目

【朝の現実に戻るポーション】

「まずこれ。

寝正月でズレた体内時計を戻す。

“今日は今日だ”って感覚を身体に思い出させる」


「ほ、ほう……」


◆二本目

【去年を置いていくポーション】

「次は頭の中。

“やり残し”“後悔”“未達”を

今日だけ棚上げするやつだ。

反省会は来週でいい」


「それ欲しかったやつ!!」


◆三本目

【今年を怖がりすぎないポーション】

「最後。

抱負とか目標とか、

重く考えすぎると動けなくなるだろ。

“とりあえず生きる”くらいの気持ちに戻す」


常連は三本を見つめて、ふっと笑った。


「……あ、なんか正月来た気がする」


「それでいい。

正月なんて“実感したら負け”くらいでちょうどいい」


そのとき。


カラン、カラン、バーン!


仲間や常連がどやどや入ってくる。


「店主ー!飲み物ー!」

「まだ正月休み気分だぞー!」

「去年は世話になったな!」


クリムが棚の上で跳ね、

ルゥが嬉しそうに尻尾を振る。


俺はカウンターの向こうで肩をすくめた。


「やれやれ……

今年も騒がしいな」


誰かが声を上げる。


「せーの!」


店の中、全員で。


「「「明けましておめでとう!!!」」」


笑い声が弾み、

新しい年が、ようやくこの店にもやってきた。


……さて。


今年もぼちぼち、

やっていきますか。



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