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錬金術師のポーション屋。疲れたときはやっぱりこれ  作者: ChaCha


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67/112

不機嫌は感情じゃなく、サインだ

夕方。

外の空が少し灰色になりはじめる時間。


クリムは棚の上で前足を揃え、

ルゥは入口で伏せて、耳だけこちらに向けている。


カラン。


女性が、ため息を一つ置いてから口を開いた。


「……彼が、すぐ不機嫌になるんです」


「頻度は?」


「ほぼ毎日です」


即答か。

それはきつい。


女性は続ける。


「私が何かしたわけでもないのに、

急に無口になったり、

返事が冷たくなったり……」


クリムが「きゅ……(空気重い)」、

ルゥが「わふ……(警戒)」と低く鳴く。


俺は腕を組む。


「で、本音は?」


女性は一瞬黙ってから、言った。


「……理由がわからないのが、しんどいです」


――そこだ。


俺は小瓶を三つ、ゆっくり並べた。



◆一本目

【相手の不機嫌を“自分のせい”にしないポーション】


「まずこれ」


瓶は落ち着いた色。


「不機嫌な人間のそばにいると、

理由を探してしまう」


女性が頷く。


「でもな、

他人の感情は“本人の管理物”だ」


クリムが「きゅ(所有者違い)」。


「これは、

“私のせいじゃない”を

ちゃんと保つやつだ」



◆二本目

【感情の境界線を引くポーション】


「次」


俺は真顔で言う。


「不機嫌をぶつけられると、

無意識に受け取ってしまう」


ルゥが「わふ(受信拒否)」と鼻を鳴らす。


「これは、

“寄り添う”と“背負う”を分ける」



◆三本目

【話すか離れるか、判断を鈍らせないポーション】


女性が少し前のめりになる。


「これが一番大事だ」


瓶を指で軽く叩く。


「不機嫌な相手にはな、

“今話すべきか”“今は距離を取るべきか”

判断が要る」


瓶を押し出す。


「これは、

どっちを選んでも

“間違ってない”って思えるようにする」



女性は三本を見つめ、長く息を吐いた。


「……私、

機嫌を直す役目だと思ってました」


「違う」


俺は即答する。


「恋人でも配偶者でも、

感情の世話係じゃない」


女性は小さく笑った。


「……ください。

少し、楽になりたいです」


「おう」


瓶を渡す。


「不機嫌はな、

愛情の裏返しじゃない。

“余裕が足りない”ってサインだ」


女性は深く頷いて、店を出ていった。


扉が閉まる。


俺は天井を見上げて、ため息ひとつ。


「……不機嫌を愛で包めって話、

誰が広めたんだろうな」


クリム「きゅ(迷信)」

ルゥ「わふ……(訂正必要)」


まったく。

次はどうせ「不機嫌を治すポーションください」とか来るんだろうな。


……やれやれ。

でも来たら来たで、ちゃんと向き合うけどさ。

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