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錬金術師のポーション屋。疲れたときはやっぱりこれ  作者: ChaCha


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65/109

最後の一手前が、いちばん人を削る

夜。

閉店前で、店の明かりが少し落ち着く時間。


クリムは棚の上で丸まり、

ルゥは入口で「これは長くなるぞ」という顔。


カラン。


客は椅子に座るなり、淡々と列挙し始めた。


「靴下脱ぎっぱなし……

炊飯器にスプーン一つ分の白飯残して保温……

水筒、ポットは“すこーし”残して置く……

トイレットペーパーも芯に一枚分だけ残す……」


「……」


(相当たまってるな……)


クリムが「きゅ……(積み重ね)」、

ルゥが「わふ……(致命傷)」と低く鳴く。


俺は腕を組む。


「で、誰がやってる?」


客は一拍置いてから、静かに言った。


「……同居人です」


「あー」


「悪い人じゃないんです。

手伝ってくれないわけでもない。

でも……」


言葉が止まる。


「……“最後だけ人に押し付ける”感じが、

毎日、じわじわ来る」


――それだ。


俺は小瓶を三つ、音を立てずに並べた。



◆一本目

【小さな苛立ちを“即・毒化”させないポーション】


「まずこれ」


瓶はごく薄い色。


「この手のストレスはな、

一つ一つは小さい」


客が頷く。


「でも溜まると、

“人そのもの”が嫌いになる」


クリムが「きゅ(危険)」。


「これは、

“今の怒りはどれ?”って

切り分けられるようにする」



◆二本目

【注意するとき、言葉が尖らないポーション】


客が少し前のめりになる。


「言ったことはあるんです……

でも毎回、私が神経質みたいになる」


「なるな」


即答。


「これはな、

“頼み”と“説教”を分けるやつだ」


ルゥが「わふ(大事)」と頷く。


「『全部やれ』じゃなく、

『最後までやって』が言える」



◆三本目

【自分だけが気づいている、を手放すポーション】


客の目が揺れる。


「……それ、欲しいです」


「だろ」


俺は静かに言う。


「“気づく側”はな、

無意識に仕事量が増える」


瓶を押し出す。


「これは、

“気づいたからやる”を

“共有する”に変えるためのやつだ」



客は三本を見つめ、長く息を吐いた。


「……私、

怒ってる自分が嫌で、

さらに疲れてました」


「よくある」


俺は肩をすくめる。


「生活の苛立ちはな、

だらしなさじゃなく、

“最後の一手を誰がやるか”の問題だ」


客は小さく笑った。


「……ください。

爆発する前に」


「賢明だ」


瓶を渡す。


「我慢し続けると、

ある日“靴下一本”で戦争が始まる」


客は苦笑して立ち上がった。


扉が閉まる。


俺は天井を見上げて、ため息ひとつ。


「……生活系の魔物は、

HP低いくせに、

持続ダメージがえげつない」


クリム「きゅ(DOT)」

ルゥ「わふ……(解除必要)」


まったく。

次はどうせ「キャップ閉めない問題」とか来るんだろうな。


……やれやれ。

でも来たら来たで、ちゃんと向き合うけどさ。



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