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錬金術師のポーション屋。疲れたときはやっぱりこれ  作者: ChaCha


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63/112

帰省は移動じゃなく、耐久戦

夕方前。

外は明るいのに、店の中は静かだ。


クリムは棚の上で丸くなり、

ルゥは入口で伏せて、扉の向こうを見ていない。


カラン。


しょんぼりした女性が、そっと入ってきた。


「……義実家へ……帰省したくないんです」


「……うん」


即、否定もしないし、驚きもしない。


女性は、椅子に腰を下ろすなり、ぽつぽつ話し出した。


「気を使うし……

ぶっちゃけ義母と合わないっていうか……」


「あー」


「何にもしない夫は、

実家に帰ると子供化して味方になってくれないし……」


クリムが「きゅ……(よく聞く)」、

ルゥが「わふ……(戦場)」と低く鳴く。


俺は腕を組んだ。


「で、本音は?」


女性は少し黙ってから、言った。


「……私だけ、

ずっと気を張りっぱなしになるのが、しんどい」


――そこだ。


俺は小瓶を三つ、ゆっくり並べた。



◆一本目

【帰省用・緊張を外に置いてくるポーション】


「まずこれ」


瓶は淡く、落ち着いた色。


「“良い嫁モード”を一時的に解除するやつだ」


女性が目を見開く。


「完璧に振る舞おうとすると、

帰る前から疲れる」


クリムが「きゅ(外していい)」と頷く。



◆二本目

【相手の言葉を真正面で受け止めないポーション】


「次」


俺ははっきり言う。


「義実家で一番削られるのはな、

“悪意じゃない言葉”だ」


女性が苦笑する。


「これを飲むと、

“これはこの人の価値観だな”って

一歩引いて聞ける」


ルゥが「わふ(距離大事)」と鼻を鳴らす。



◆三本目

【自分の味方がいる感覚を保つポーション】


女性が一番食いついた。


「これが一番大事だ」


瓶を指で軽く叩く。


「夫が子供化しても、

義母と分かり合えなくても」


俺は静かに言う。


「“私は一人じゃない”って感覚を、

ちゃんと持っておく」


瓶を押し出す。


「味方が増えなくてもいい。

減らさなければ、それでいい」



女性は三本を見つめ、肩の力を抜いた。


「……行かなきゃダメだと思ってました」


「“無理して頑張らなきゃ”とは違う」


俺は即答する。


「帰省はな、

仲良くなるための修行じゃない。

“無事に帰ってくるイベント”だ」


女性は少し笑った。


「……ください。

生きて帰ってきたいです」


「おう」


瓶を渡す。


「疲れたら、

“体調が”で席を外せ。

それは嘘じゃない」


女性は深く頷いて立ち上がった。


扉が閉まる。


俺は天井を見上げて、ため息ひとつ。


「……義実家イベントは、

装備と心構えが九割だな」


クリム「きゅ(高難度)」

ルゥ「わふ……(撤退判断重要)」


まったく。

次はどうせ「帰省から帰ってきたら燃え尽きました」系が来るんだろうな。


……やれやれ。

でも来たら来たで、ちゃんと向き合うけどさ。



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