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錬金術師のポーション屋。疲れたときはやっぱりこれ  作者: ChaCha


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62/111

クエストは逃げないが、母ちゃんは強い

昼下がり。

外は穏やかだが、店内は静かすぎて嫌な予感がする。


クリムは棚の上で丸まり、

ルゥは入口で日向ぼっこ――その瞬間。


カラン!


「許せない!!」


「どうした?」


勢いよく入ってきた青年冒険者、拳を握りしめている。


「母ちゃんが!!

魔道具ばっかりしてないでクエストやれって!!」


……ああ。


「……それは、まぁ」


「聞いてくれます!?

こっちは情報収集してるんですよ!

効率化! 最適化!

それを“怠けてる”って!!」


クリムが「きゅ……(母強い)」、

ルゥが「わふ……(勝てない)」と察した顔。


俺は腕を組む。


「で、本音は?」


青年は一瞬だけ言葉に詰まってから、吐き出した。


「……心配されてるのは、わかるんですけど……

口出しされると、やる気が削がれるというか……

自分のペースが……」


「あー」


あるあるだ。


俺は小瓶を三つ並べた。



◆一本目

【言われた言葉を“攻撃”に変換しないポーション】


「まずこれ」


瓶を指で軽く叩く。


「親の言葉ってな、

内容より“言い方”でダメージ入る」


青年が苦い顔で頷く。


「これは、

“心配”と“命令”を分けて受け取れるようにするやつだ」



◆二本目

【自分のペースを取り戻すポーション】


「次」


「母ちゃんの声が頭に残るんです……」


「残るな」


俺は即答する。


「これは、

“自分は自分で進んでる”って感覚を戻す」


ルゥが「わふ(大事)」と尻尾を振る。



◆三本目

【親に説明するとき言葉が荒れないポーション】


青年が目を見開く。


「そんなのあるんですか!?」


「ある」


俺は真顔だ。


「感情のまま返すと、

親子喧嘩は長期戦になる」


瓶を押し出す。


「これは、

“ちゃんとやってる”を落ち着いて言えるようにする」



青年は三本を見つめ、深く息を吐いた。


「……母ちゃん、

クエストで死ぬのが一番怖いんでしょうね」


「だろうな」


俺は肩をすくめる。


「口うるさいのは、

だいたい心配の裏返しだ」


青年は苦笑した。


「……ください。

今日は一回、ちゃんと話してみます」


「おう」


瓶を渡す。


「クエストは逃げない。

でも親は、年取る」


青年は少し照れた顔で店を出ていった。


扉が閉まる。


俺は天井を見上げて、ため息ひとつ。


「……親子案件はな、

魔物より難易度高い」


クリム「きゅ(強敵)」

ルゥ「わふ……(ボス級)」


まったく、

次はどうせ「母ちゃんがギルドに直談判してきました」とか来るんだろうな。


……やれやれ。

でも来たら来たで、ちゃんと向き合うけどさ。



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