年末は、身体が先に反省する
夕方。
外はやけに忙しなく、風が冷たい。
クリムは棚の上で丸くなり、
ルゥは入口で「察した顔」をしている。
カラン。
「あいたたた! あーイタタタ」
「どうした?」
「年末掃除をギリギリまでやらなかったらさ」
「あー」
全て理解した。
客は腰を押さえ、肩を回し、
動くたびに顔が歪む。
「張り切ったんだろ」
「張り切った……
普段使わない筋肉を……
一気に……!」
クリムが「きゅ……(計画性)」、
ルゥが「わふ(分割しろ)」とため息。
俺は小瓶を三つ並べた。
⸻
◆一本目
【年末用・筋肉なだめるポーション】
「まずこれ」
瓶を指で叩く。
「急に働かされた筋肉を、
“いや、今日はもういいから”って
落ち着かせる」
「神……」
⸻
◆二本目
【動いた自分を責めないポーション】
「次」
客が首をかしげる。
「掃除で一番ダメなのはな、
“なんでこんなに溜めたんだ”って
自分を殴り始めることだ」
ルゥが「わふ(メンタル直撃)」。
「これは、
“やっただけ偉い”って
思い出させるやつ」
⸻
◆三本目
【今日はここまで、を許すポーション】
「最後」
俺は真顔で言う。
「年末はな、
“全部終わらせる日”じゃない」
瓶を差し出す。
「“ここまでで良し”って
線を引くためのやつだ」
⸻
客は三本を抱えて、ほっと息を吐いた。
「……掃除って、
戦闘だったんだな」
「しかもボスは“過去の自分”だ」
客は苦笑して立ち上がる。
「助かった……
今日はもう、休みます」
「それでいい」
俺は頷く。
「年末はな、
身体を壊してまで片付けるもんじゃない。
生きて新年迎えたら勝ちだ」
客はゆっくり帰っていった。
扉が閉まる。
俺は棚を見渡して、ぽつり。
「……次は来るな」
クリム「きゅ?」
「『雑巾がけで人生を振り返りました』って」
ルゥ「わふ……(ありそう)」
やれやれ。
年末は、痛みから学ぶ人が多すぎる。




