未達の年は、ここで畳め
朝と昼のあいだ。
日差しはあるのに、空気だけが年末だ。
クリムは棚の上で丸まり、
ルゥは入口で外を見ている。
人の足取りが、どこか焦っている時間帯。
カラン。
「やばいよーやばいよー」
「どうした?」
「もう……今年があと4日しかない!」
「まぁ年末だからな」
「毎年、今年の抱負を抱いてスタートしたのに未達だ!」
……はい来た。
年末限定・自己査定地獄。
俺は腕を組む。
「で、その抱負ってのは?」
「健康! 貯金! スキルアップ! 人間関係改善!!」
「多い」
クリムが「きゅ……(盛りすぎ)」、
ルゥが「わふ(欲張り)」と同時に首を振る。
客は頭を抱える。
「達成してないから、
今年が失敗だった気がして……
新年を迎える資格がないというか……」
なるほど。
未達=失敗って思い込んでるな。
俺は小瓶を三つ、年末仕様で並べた。
⸻
◆一本目
【今年を“途中で終わらせない”ポーション】
「まずこれ」
瓶は落ち着いた色。
「未達でもな、
“やろうとした年”は失敗じゃない」
客が顔を上げる。
「これは、
今年を“途中放棄”じゃなく
“一章分やった年”として閉じるやつだ」
クリムが「きゅ(一区切り)」。
⸻
◆二本目
【反省を“来年に持ち越さない”ポーション】
「次」
俺は瓶を軽く叩く。
「年末の反省って、
だいたい“自分責め”に変形する」
ルゥが「わふ(よくない)」と鼻を鳴らす。
「これはな、
“反省はメモ、感情は今年に置いていく”ためのやつだ」
⸻
◆三本目
【達成できた“小さい事”を拾い直すポーション】
客が身を乗り出す。
「最後がこれだ」
「抱負は未達でも、
ちゃんとやったことはあるはずだ」
瓶を押し出す。
「起きた日、
出かけた日、
逃げなかった日」
「それを“達成”として数え直す」
⸻
客は三本を見つめ、ゆっくり息を吐いた。
「……今年、
ちゃんと生きてはいました」
「それで十分だ」
俺は即答する。
「年はな、
完璧に終わらせるもんじゃない。
“ちゃんと畳む”だけでいい」
客は小さく笑った。
「……ポーション、ください」
「おう」
瓶を渡す。
「未達の年はな、
次の年の“助走”になる」
客は背筋を伸ばして出ていった。
扉が閉まる。
俺は帳簿に書く。
【年末不安:達成主義過多】
肩を回して、ぼそっと。
「……次は来るな」
クリム「きゅ?」
「『来年の抱負がもう重い』って」
ルゥ「わふ……(確定)」
やれやれ。
年末は、畳むだけでいいんだよ。




