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錬金術師のポーション屋。疲れたときはやっぱりこれ  作者: ChaCha


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60/111

未達の年は、ここで畳め

朝と昼のあいだ。

日差しはあるのに、空気だけが年末だ。


クリムは棚の上で丸まり、

ルゥは入口で外を見ている。

人の足取りが、どこか焦っている時間帯。


カラン。


「やばいよーやばいよー」


「どうした?」


「もう……今年があと4日しかない!」


「まぁ年末だからな」


「毎年、今年の抱負を抱いてスタートしたのに未達だ!」


……はい来た。

年末限定・自己査定地獄。


俺は腕を組む。


「で、その抱負ってのは?」


「健康! 貯金! スキルアップ! 人間関係改善!!」


「多い」


クリムが「きゅ……(盛りすぎ)」、

ルゥが「わふ(欲張り)」と同時に首を振る。


客は頭を抱える。


「達成してないから、

今年が失敗だった気がして……

新年を迎える資格がないというか……」


なるほど。

未達=失敗って思い込んでるな。


俺は小瓶を三つ、年末仕様で並べた。



◆一本目

【今年を“途中で終わらせない”ポーション】


「まずこれ」


瓶は落ち着いた色。


「未達でもな、

“やろうとした年”は失敗じゃない」


客が顔を上げる。


「これは、

今年を“途中放棄”じゃなく

“一章分やった年”として閉じるやつだ」


クリムが「きゅ(一区切り)」。



◆二本目

【反省を“来年に持ち越さない”ポーション】


「次」


俺は瓶を軽く叩く。


「年末の反省って、

だいたい“自分責め”に変形する」


ルゥが「わふ(よくない)」と鼻を鳴らす。


「これはな、

“反省はメモ、感情は今年に置いていく”ためのやつだ」



◆三本目

【達成できた“小さい事”を拾い直すポーション】


客が身を乗り出す。


「最後がこれだ」


「抱負は未達でも、

ちゃんとやったことはあるはずだ」


瓶を押し出す。


「起きた日、

出かけた日、

逃げなかった日」


「それを“達成”として数え直す」



客は三本を見つめ、ゆっくり息を吐いた。


「……今年、

ちゃんと生きてはいました」


「それで十分だ」


俺は即答する。


「年はな、

完璧に終わらせるもんじゃない。

“ちゃんと畳む”だけでいい」


客は小さく笑った。


「……ポーション、ください」


「おう」


瓶を渡す。


「未達の年はな、

次の年の“助走”になる」


客は背筋を伸ばして出ていった。


扉が閉まる。


俺は帳簿に書く。


【年末不安:達成主義過多】


肩を回して、ぼそっと。


「……次は来るな」


クリム「きゅ?」

「『来年の抱負がもう重い』って」


ルゥ「わふ……(確定)」


やれやれ。

年末は、畳むだけでいいんだよ。



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