メリークリスマス、ここは休憩所
――バーン!!
文字通り、爆音と一緒に扉が開いた。
「うおっ」
一瞬、強盗かと思った。
違った。
いつものメンバーが、ドヤドヤと雪崩れ込んでくる。
チキン。
酒。
ケーキ。
謎にでかい包み。
なんか光ってる瓶。
全員、両手がふさがってる。
俺はカウンター越しに目を細めた。
「……ガイル。お前たちか」
「やっ! 店主!」
ガイルが親指立てる。
後ろでミーナがケーキを落としそうになって叫ぶ。
「ちょっ、ガイル! ぶつからないで!」
「店主ー! 酒置いていい!?」
「チキン温かいうちに!」
「ここ、座っていいよね!?」
完全に自分の家のテンションだ。
クリムは棚の上で「きゅ!?(パーティ!)」と飛び跳ね、
ルゥは入口で「わふ!(警備不能!)」と尻尾を振りすぎて滑った。
俺は頭を押さえる。
「……誰に許可取った」
「店主だろ?」
即答。
「ここ、冒険者の休憩所だよな?」
「今日だけな」
「やった!」
勝手に始まる準備。
テーブル拡張。
酒の栓が抜かれる。
チキンの匂いが店を制圧。
ミーナが俺を見る。
「店主、メリークリスマスです」
一瞬だけ、胸の奥が温かくなる。
「……ああ。メリークリスマス」
エドがニヤニヤしながら言う。
「で? 今日はどんな無茶ぶり来た?」
「今日は来るな」
「絶対来るよね」
「来るな」
その瞬間。
カラン。
全員、一斉に入口を見る。
……が、誰も来ない。
ガイルが笑った。
「今日はさ、
無茶ぶりなしでいいだろ」
「珍しいこと言うな」
「だって」
ガイルはチキンを掲げる。
「今日は生きて帰ってきた日だ」
静かになる。
俺は息を吐いて、棚からグラスを出した。
「……じゃあ、乾杯くらいは付き合うか」
「おっ、店主飲む!?」
「一杯だけだ」
「絶対一杯で終わらないやつ!」
笑い声。
クリムがケーキに鼻を突っ込み、
ルゥがチキンの前で座って待つ。
「はいはい、分けるからな」
夜が更ける。
外は寒いが、
店の中は、うるさくて、あったかい。
俺はグラスを置いて、ぽつり。
「……悪くないな。こういうのも」
ガイルがにっと笑う。
「だろ?
ここ、帰る場所だし」
俺は少しだけ照れて、言葉を切った。
「……食え。冷める」
「はいはい!」
メリークリスマス。
今年も、生きてる。
それで十分だ。




