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錬金術師のポーション屋。疲れたときはやっぱりこれ  作者: ChaCha


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57/111

寂しさの延長で掴むな

昼と夜の境目。

店の外が一番ざわつく時間帯。


クリムは棚の上で毛づくろいを中断し、

ルゥは入口で「嫌な予感しかしない顔」をしていた。


――そのとき。


カランカランカラン!!


扉が壊れる勢いで開く。


「てーんしゅっ! 今日はうちのBARに飲みに来てよぉ!」


「そうよ! たまには顔! 出しなさいよ!」


「さびしいじゃなーい!」


――おかまバーず、三人組。


化粧完璧、香水強め、声量最大。

店の空気が一瞬で夜になる。


俺は反射的に言った。


「……そのうち顔みせるよ」


「そのうちっていつよぉ〜!」


「去年も聞いたわよそのセリフ!」


「今年も逃げる気!?」


クリムが「きゅ……(囲まれた)」、

ルゥが「わふ……(終わったな)」と後退する。


すると。


一人がにっこり笑って――

女声から、急に地声へ。


「じゃあ、」


一瞬、空気が変わる。


「今年こそ彼氏を捕まえれるやつ、頂戴。」


……はい来た。


俺は即答。


「捕獲系はやってない」


「そこをなんとか!」


「何のために?」


三人、同時に黙る。


そして一人が、少しだけ声を落とした。


「……一人で帰る夜が、

正直、増えてきてさ」


あー。

笑ってるけど、切実なやつ。


俺はため息をついて、小瓶を三つ並べた。



◆一本目

【帰宅後の“舞台降り”ポーション】


「まずこれ」


瓶を指で軽く叩く。


「接客モードのまま家に帰ると、

孤独が倍になる」


「わかるぅ……」


「これはな、

“今日の役目は終わり”って身体に知らせるやつだ」


クリムが「きゅ(素に戻れ)」。



◆二本目

【一日の終わりをちゃんと区切るポーション】


「次」


「飲んだあと、

誰かに連絡取りたくなる夜が減る」


「刺さるわぁ……」


「恋はな、

寂しさの延長で掴むとだいたい失敗する」


ルゥが「わふ(経験談)」みたいな顔。



◆三本目

【迎えてくれる感覚を整えるポーション】


三人が身を乗り出す。


「これが一番大事だ」


俺は真面目に言う。


「“誰かに選ばれたい”より先に、

“戻ってきてホッとできる場所”を作れ」


瓶を押し出す。


「それがあると、

恋は“捕まえるもの”じゃなくなる」



しばらく沈黙。


そして。


「……なにそれ、

ちゃんと効きそうじゃない」


「ずるいわぁ」


「店主、たまに本気出すの反則」


三人は笑いながら瓶を受け取った。


「で? 彼氏できるの?」


「それは自分次第だ」


俺は肩をすくめる。


「ただしな、

“今年こそ”って気負いすぎると、

恋は逃げる」


「はいはい〜」


「じゃあ今日はこれで!」


「でも絶対飲みに来なさいよ!」


「逃げたら追うから!」


三人は嵐のように去っていった。


扉が閉まる。


静寂。


俺は深く息を吐く。


「……あの勢いで追われたら、

誰でも捕まるわ」


クリム「きゅ(彼氏より先に店主が捕まる)」

ルゥ「わふ……(次くるやつは)」


「『結婚前提でお願いします』って」


……やれやれ。

でもまぁ、

笑って帰れたなら、それでいいか。




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