サンタに会える夜は、眠りの中にある
閉店前。
店内は静かで、クリムは棚の上、
ルゥは入口で丸くなっていた。
そこへ、こつ、こつ、と小さな足音。
小さな子どもが、両手で大事そうに紙を持って立っていた。
俺の前まで来て、そっと差し出す。
「……お使いか? えらいな」
こくり、と頷く。
俺は手紙を受け取って、目を通した。
――
「サンタにあえるやつを渡してやってください」
――
俺は即座に顔を上げた。
「幻覚系はダメだ!」
子どもがびくっとする。
クリムが「きゅ……(言い方)」、
ルゥが「わふ……(落ち着け)」とたしなめる。
俺は膝をついて、目線を合わせた。
「ごめんな。
びっくりさせたな」
子どもは少し考えてから、ぽつり。
「……ほんとに、いるか、しりたくて……」
ああ。
欲しいのは証明じゃない。安心だ。
俺は小さな瓶を三つ、ゆっくり並べた。
⸻
◆一本目
【帰る場所が“特別な夜”になるポーション】
「まずこれ」
瓶は星みたいな色をしている。
「家に帰ったら、
今日は“いつもと違う夜”って空気を作る」
クリムが「きゅ(わくわく)」と鳴く。
⸻
◆二本目
【眠る前に想像を整えるポーション】
「次」
俺は指で小さな円を描く。
「これは“見る”ための薬じゃない。
“想像していい時間だよ”って合図」
ルゥが「わふ(夢は安全)」と静かに尻尾を振る。
⸻
◆三本目
【朝に“届いた気持ち”が残るポーション】
子どもが身を乗り出す。
「これが一番大事だ」
俺は真剣に言う。
「サンタはな、
会えたかどうかより、
“ちゃんと想ってくれた”って気持ちを
朝に残してくれる」
瓶をそっと差し出す。
「それがあれば、
会えなくても、
ちゃんと来たって分かる」
⸻
子どもは三本を抱えて、少し考えたあと、笑った。
「……これで、いい?」
「おう」
俺は頷く。
「本当に大事なものはな、
目で見るより、
朝まで残る」
子どもは深く頭を下げて、走って帰っていった。
扉が閉まる。
俺は棚を見上げて、息を吐く。
「……幻覚は出さない。
夢は、守る」
クリムが「きゅ(合格)」、
ルゥが「わふ(それでいい)」と同時に丸くなった。
さて――
次は来るな。
「トナカイに会わせてください」とか。




