表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
錬金術師のポーション屋。疲れたときはやっぱりこれ  作者: ChaCha


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/112

推しを生成したい

カラン。


「推しの髪の毛を入れたら、

手乗りサイズの推しが産まれるようなポーションありますか?」


俺は顔を上げて、即答した。


「ホムンクルスは提供してない」


「そこをなんとか!」


「何のために?」


「こう……日々の癒しに……」


「犯罪臭しかしない」


クリムが棚の上で「きゅっ(即却下)」、

ルゥが入口で「わふ(線越え)」と二票目。

はい、議決終了。


青年は肩を落としながらも、ぽつりと言う。


「……毎日、帰るのがつらくて……

誰とも話さないまま夜になって……

“そこにいてくれる感じ”が欲しかっただけなんです……」


俺は一拍置いた。


「……欲しいのは“推し”じゃないな」


青年が顔を上げる。


「“帰ってきた自分が休める状態”だ」


俺はカウンターに小瓶を三つ並べた。



◆一本目

【帰宅後の緊張をほどくポーション】


「まずこれ。

一日中、気を張りっぱなしだろ。

家に帰っても戦闘終了してないタイプだ」


瓶を軽く指で弾く。


「これ飲むと、

玄関くぐった瞬間に“今日は終わり”って身体が理解する。

鎧を脱ぐ合図みたいなもんだ」


クリムが「きゅ(大事)」、

ルゥが「わふ(まず休め)」と伏せる。



◆二本目

【一日の終わりに頭を切り替えるポーション】


「次はこれ。

頭がずっと外向きのままだ」


青年が小さく頷く。


「反省も不安も、全部寝る前にやる必要はない。

これは“今日を閉じる”ためのやつだ。

考えるのをやめるんじゃない。

明日に回すだけ」


青年の肩が、すっと下がった。



◆三本目

【非生命体への愛着を満たすポーション】


「最後がこれだ」


青年が身構える。


「言っとくが、生き物は作らない。

意思も人格も、複製もしない」


「……ですよね……」


「でもな、

“そこにいてくれる存在に癒される”感覚自体は正常だ」


俺は続ける。


「ぬいぐるみ、置物、推しグッズ。

動かないものに向ける安心感を、ちゃんと満たす。

安全で、健全で、後腐れなし」


クリムがぬいぐるみ棚をちょんと叩き、

ルゥが「わふ(これでいい)」と太鼓判。



青年は三本を見つめて、静かに息を吐いた。


「……推しを作りたかったんじゃなくて、

迎えてくれる何かが欲しかったんですね」


「そういうことだ」


俺は肩をすくめる。


「癒しは作るもんじゃない。

整えるもんだ」


青年は深く頭を下げて帰っていった。


扉が閉まる。


俺は帳簿に一行足す。


【ホムンクルス:不可】

【癒し:可(非生命体)】


肩を回しながら、ぼそっと言う。


「……次は来るな。

『推しと会話できるポーションありますか?』って」


クリムが「きゅっ(来る)」、

ルゥが「わふ……(確定)」とため息をついた。


……やれやれ。

来たら来たで、線は守るけどさ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ