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錬金術師のポーション屋。疲れたときはやっぱりこれ  作者: ChaCha


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18/113

通信魔道具依存症(末期)

昼下がり。

クリムは棚の上で毛玉になり、

ルゥは入口で昼寝し、

俺はポーション棚の補充をしていた。


そこへバンッ!! と扉が開く。


「て、店主さん!!! 助けてください!!」


振り返ると、焦りと絶望の狭間みたいな顔した魔法使いが立っていた。

ローブはきっちり、杖も高級品、なのに目の下にクマ。


俺は軽く手を振る。


「どうした、調子でも悪いん――」


「魔道具が手放せないんです!!」


「魔法使いならそりゃそうだろ」


「ダメなんです!!!」


「え? なにが?」


魔法使いは髪をわしゃわしゃとかきむしり、


「通信魔道具依存性みたいに手放せないんです!!!

気づいたら触ってる!! 着信ないか確認してしまう!!

魔力残量なくてもいじってる!!!

寝る前に魔道具見て寝落ちしてる!!!」


俺は無言でうなずいた。


「あー末期ね。末期まできちゃったやつね」


クリムが「きゅ……」と戦慄し、

ルゥは“また厄介なの来た”という目を向けた。


魔法使いは必死だ。


「仕事中も……気が散るんです……

依頼中も……ログみたいなの確認したくなるんです……

パーティ仲間に怒られるし……

会話も減ってるし……

なんなら依存しすぎて“幻の通知音”が聞こえ始めて……!!」


それは本格的だな。


俺はカウンター越しにため息をつき、腕を組んだ。


「で、通信魔道具を手放せない主な理由は?」


魔法使いは胸に手を当て、苦しそうに言う。


「……ひとりになったとき、落ち着かないんです……

誰かとつながってないと、不安になるというか……

“今すぐ返事したい”って気持ちが止まらなくて……

魔力充電する時間すら惜しいんです……」



俺は棚を見やりながら、ゆっくり説明する。


「まず、依存症ってのは“魔道具”が原因じゃない。

“魔道具を使って埋めてる不安や孤独”が原因だ」


魔法使いがびくっと震える。


「やっぱり……!?」


「だから、魔道具そのものを禁止する薬じゃなく、

“不安を落ち着かせる”“集中を回復する”“距離を取れる余裕を作る”

そういうタイプで対応する」


クリムが「きゅ……(まとも…)」と納得し、

ルゥも「それが正解」と言う顔で伏せる。


俺は三本の瓶を出した。



◆一本目


【“心のざわつき静めるポーション”】


「これが最重要。

通信魔道具を手放せないやつの多くは、

“見なきゃ不安”が先に来てる。

それを落ち着かせる。」


魔法使いは涙目で見つめる。



◆二本目


【集中力リセットポーション】


「頭のモヤモヤを一回クリアするやつだ。

これ飲んだ後は“魔道具を見る前にやるべきこと”が思い出しやすくなる。」


「……そんな薬が……!」



◆三本目


【睡眠導入・魔道具遮断ポーション(弱)】


「寝る前に通信魔道具を見るの、最悪だぞ。

こいつを少量飲めば、

“眠気>魔道具”

の状態になって自然に手放せる。」


魔法使いはポーション三本を見て、震える声で言った。


「店主さん……

これ……治るんでしょうか……?」


俺は肩をすくめた。


「治る治らないじゃなくて、

“距離の取り方を思い出す”ための補助だ。

本来、魔道具に人生支配される必要なんてないんだよ」


魔法使いの目が少しだけ晴れた。


「……そうですよね……

魔道具は便利な道具であって……

人生じゃない……」


「そういうこと。

道具との距離は“自分で決めるもんだ”。」


クリムが魔法使いの袖をちょんとつまんで励まし、

ルゥが「やれやれだぜ」と言いながらも尻尾で背中を押した。


魔法使いは深く頭を下げる。


「店主さん……ありがとうございます……

今日から、この三本と……

“自分の時間”を作る努力をしてみます!」


「おう。

依存は一日で治らないから、焦らずやれよ」


魔法使いは涙ぐみながら店を出て行く。


扉が閉まると、俺は大きく息を吐いた。


「……ついに来たか“魔道具依存”。

次は“魔道具のない生活の方法教えてください”とか来るんだろうな……」


クリムは「きゅ〜(絶対来る)」、

ルゥは「わふ(もう覚悟しとけ)」と返した。


本当にこの店、何でも屋になってきた気がする。




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