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錬金術師のポーション屋。疲れたときはやっぱりこれ  作者: ChaCha


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119/119

ハッピーバレンタイン

ドヤドヤドヤ。


カラン、カラン、カラン。


扉が鳴る前からうるさい。


「店主ー!!

ハッピーバレンタイン!!」


「生きてるかー!」


「今日は逃がさねぇぞー!」


俺はカウンターの向こうで、

深く、長く息を吐いた。


「はいはい。

ハッピーバレンタイン」


なだれ込んできたのは、

見慣れた顔ぶれ。


前に出るガイル。

その横で腕を組むミーナ。

荷物を抱えたハイド。

一番後ろでニヤニヤしてるエド。

静かに様子を見てるミスティ。


クリムが棚の上で目を丸くする。


クリム「きゅ!?(多い)」

ルゥは入口を塞ぐように座った。

今日は逃がさない構えだ。


ガイルがドン、とカウンターに紙袋を置く。


「なぁ店主」


「嫌な予感しかしない」


「チョコ。

まだ誰からも貰えてないだろ?」


即、ミーナが被せる。


「言い方!!

でも事実でしょ」


「事実を突きつけるな」


エドが横から身を乗り出す。


「これ!ぜひ!!

遠慮すんなって!」


ハイドが眼鏡を押し上げる。


「一応言っておくと、

成分は安全だ。

保存性も考慮してある」


「チョコに学術的配慮いらん」


ミスティが、

最後の袋をそっと差し出す。


「……手作り、です」


一瞬、静かになる。


エドが間髪入れずに言った。


「おすすめは酒入りだ!」


「お前が言うな」


「大人の味だろ!」


「胃を労れ」


クリムが俺の肩に避難する。


クリム「きゅ(圧がすごい)」

ルゥは尻尾で床を叩いた。

完全包囲。


俺は袋をまとめて受け取る。


「……お前ら……」


ガイルがニッと笑う。


「世話になってるからな」


ミーナが肩をすくめる。


「死にかけた回数、

数え切れないし」


ハイドが淡々と続ける。


「店主がいなければ、

今ここにいない確率は高い」


エドが軽く言う。


「生存祝いってやつ?」


ミスティが小さく頷く。


「……生きてるから、

渡せる日です」


俺は一拍、黙ったあと、

袋を棚の下に置いた。


「……分かった」


全員が身を乗り出す。


「今日はポーションの話は無しだ」


「えー!」


「ただし」


俺は棚から小瓶じゃなく、酒瓶を出した。


「一杯だけな」


「少なっ!」


「帰れ」


クリム「きゅ(正論)」

ルゥ「わふ(門番)」


グラスを並べる。


「……生きて帰ってきた祝いだ」


ガイルが先に掲げる。


「乾杯!!」


「乾杯!!」


店内が一気に騒がしくなる。


クリムはチョコの袋に埋もれ、

ルゥはガイルの足元で寝転がった。


俺はグラスを拭きながら、ぼそっと言う。


「……バレンタインってのはな」


誰も聞いちゃいない。


「生存確認で十分だ」


エドが聞こえてないふりで言った。


「なぁ店主。

ホワイトデー期待していい?」


「期待するな」


「するだろー!」


……やれやれ。


カラン。


今日は、

この店も少しだけ甘い。


次はどうせ、

全員二日酔いで来るんだろうな。


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