カップルに挟まれてる。
カラン!
扉が開いた瞬間、
俺は人数を数えた。
……一人。
だが――
情報量が多い。
入ってきた男は、
肩を落とし、頬をこけさせ、
開口一番こう言った。
「店主……
俺、今……
5人パーティーなんすよ……」
「ほう」
「で、
左右がカップルで、
前後もカップルで……」
「待て」
俺は指を折る。
「お前含めて5人だよな」
「はい」
「……詰んでないか?」
「詰んでます!!」
クリム「きゅ(板挟み)」
ルゥ「わふ(圧)」
男は、
想像しただけでダメージを受けた顔をしている。
「戦闘中も……
『大丈夫?』
『無理しないで』
って……
俺じゃない方向に飛び交うんすよ……!」
「知るか」
「俺、
回復もらったことないです!!」
「それは実力では?」
「違います!!
イチャつき優先です!!」
クリム「きゅ(私情)」
ルゥ「わふ(職務放棄)」
⸻
俺はため息をついて、
棚から瓶を三つ。
コトン。
コトン。
コトン。
「結論から言うと」
男が身を乗り出す。
「解散させる薬は無い」
「ですよね!!」
⸻
一本目。
「【ソロ耐性が上がるやつ】」
「周囲がイチャついてても、
精神ダメージを軽減する」
男は瓶を見て、
真顔になった。
「……俺、
これ飲まないと
生きていけない気がします……」
クリム「きゅ(必須)」
ルゥ「わふ(防具)」
⸻
二本目。
「【空気を読まなくてよくなるやつ】」
「気まずさを感じなくなる。
無言=失敗、じゃなくなる」
男の目が輝く。
「それ!!
それです!!」
「お前、
今まで空気を読みすぎだ」
「はい!!」
⸻
三本目。
俺は少しだけ、
ニヤッとした。
「【第三者ポジションを楽しめるやつ】」
男が、
首を傾げる。
「……楽しめる……?」
「『あ、これ今、
俺がいなくても成立してるな』
って時に、
自分の自由時間だと思える」
間。
男は、
三本目をじっと見てから言った。
「……それ飲んだら、
虚しくなりません?」
「逆だ」
「?」
「縛られてないって分かる」
沈黙。
クリム「きゅ(正論)」
ルゥ「わふ(自由)」
男は、
一拍置いて――
三本目に手を伸ばした。
「……ください」
⸻
会計。
男は瓶を抱えながら、
ふと聞いた。
「……ちなみに……
カップル、
このまま続くと思います?」
俺は即答した。
「半分は別れる」
「ですよね!!」
クリム「きゅ(統計)」
ルゥ「わふ(経験)」
⸻
カラン。
男は、
少し背筋を伸ばして出ていった。
⸻
俺は棚を見て言う。
「……ソロはな」
クリム「きゅ?」
ルゥ「わふ?」
「挟まれてる時ほど、
自由だ」
クリム「きゅ(名言)」
ルゥ「わふ(孤高)」
俺は肩をすくめる。
「次はどうせ、
『全員カップルになった後の
飲み会に呼ばれた』だな」
クリム「きゅ……(地獄)」
ルゥ「わふ……(逃げろ)」
カラン。
今日もこの店は、
パーティ構成の不満で賑やかだ。
――ソロは、
最後まで残る役割だからな。




