二柱の誕生祭。私、同じ誕生日なんです!
カラン!
扉が開いた瞬間、
俺は嫌な予感しかしなかった。
なぜなら――
紙吹雪が舞ったからだ。
「おめでとうございまーーーす!!!」
「してねぇ!!」
俺の即ツッコミを無視して、
客は満面の笑みでカウンターに突撃してきた。
クリム「きゅ!?(なに!?)」
ルゥ「わふ……(騒音)」
「聞いてください店主!!
今日、二柱の誕生祭ですよね!?」
「そうだな」
「で!!
私も同じ誕生日なんです!!」
「知らん」
「でも!!
誰も!!
私の誕生日を祝ってくれないんです!!!」
息継ぎなし。
勢いだけで生きてる。
俺は額を押さえた。
「……で?」
「私も祝われたい!!」
「神と並ぶな」
「同日です!!
誕生日は平等です!!」
クリム「きゅ(強い)」
ルゥ「わふ(メンタル)」
⸻
俺はカウンターに肘をつく。
「結論から言うと」
身を乗り出す客。
「祝われたいポーションは無い」
「ええ!?」
「祝われるのは他人の行動だ。
俺が介入できるのは、お前の状態まで」
「じゃあ!!
お祝いされなくても平気になるポーションください!!」
「それは悲しすぎるだろ」
「じゃあどうすればいいんですか!!」
俺は棚を見る。
今日は軽めでいく。
コトン。
コトン。
コトン。
⸻
一本目。
「【自分でケーキを買っても
罪悪感が消えるやつ】」
「……え?」
「誰かに祝われない=
ケーキ食っちゃダメ、じゃない」
客は瓶を見て、
じわっと目を見開いた。
「……それ、
ずっと欲しかったです……」
クリム「きゅ(切実)」
ルゥ「わふ(わかる)」
⸻
二本目。
「【誕生日を申告しても
図々しくならないやつ】」
「『今日誕生日なんだ』って言っても、
空気が凍らない」
「……それ!!
それです!!」
両手で瓶を掴む。
「毎年、
言えなくて終わるんです!!」
「言え」
「はい!!」
⸻
三本目。
俺は少しだけニヤッとする。
「【祝われなくても
今日は特別だって分かるやつ】」
客が、一瞬黙った。
「……それ……
ちょっと……」
「ん?」
「……自分で思うやつですね……」
「そうだ」
間。
クリム「きゅ(大人)」
ルゥ「わふ(成長)」
客は、
三本目を見てから――
ちゃんと自分で手を伸ばした。
「……ください」
⸻
会計。
客は瓶を抱えながら、
ふと思い出したように言う。
「……二柱って、
祝われてますよね」
「年中な」
「……いいなぁ」
俺は即答した。
「神はな、
祝われなくても平気だから神なんだ」
クリム「きゅ(深い)」
ルゥ「わふ(多分)」
⸻
カラン。
客は振り返って言った。
「じゃあ、
今日はケーキ二個食べます!!」
「食え」
「ろうそくも二本立てます!!」
「立てすぎだ」
⸻
扉が閉まる。
俺は肩をすくめる。
「……誕生日ってのはな」
クリム「きゅ?」
ルゥ「わふ?」
「誰かに祝われる日じゃなくて、
自分が自分を甘やかす日だ」
クリム「きゅ(正解)」
ルゥ「わふ(太るぞ)」
俺は棚を見回す。
「次はどうせ、
『誕生日忘れられすぎて
年齢分からなくなった』だな」
クリム「きゅ……(怖)」
ルゥ「わふ……(来るな)」
カラン。
今日もこの店は、
祝われたい人で賑やかだ。
――神より先に、
自分を祝え。
私は恵方巻きと炒り豆をしっかり食べました!




