第一話 日常
これは、俺が死ぬまでの物語だ。
その日はとても良かった。暑くもなく寒くもない、心地の良い晴れた日だった。
僕は、荒れ寺の境内で仰向けでねていた。
すると突然、
「またこんなところで寝てぇ」と声がした。
僕は、頭だけ起こして前を見た。目の前には、自分より少し年上の女が腰に両手を当てて立っていた。
女の名前は”冬雪”と言い、親がいない僕の面倒を見てくれている。
いつものことだろ。僕は言った。
「これで何度目なの?ここには来ちゃダメって言ったでしょう」と冬雪が言った。
たしかに来てはダメと言われたが、掃除するから何処かに行っててと言われたから来ているのであって別に言いつけを破ったわけじゃない。と心の中で思いながら冬雪に襟を掴まれ引きずられていた。
「まったく零ちゃんは、すぐ何処かに居なくなるんだから。私言ったよね今日は隅々まで奇麗にするから手伝ってって」
あれ、そうだっけ。そう僕が言うと冬雪はムッとした。
その顔がたまらなく愛おしかった。
村に着くと,クスクスと笑い声が聞こえてきた。
それが堪らなく恥ずかしかったが、冬雪が、「あんただってこの前幸子さんに怒られてた癖に何言っとるんだい」と、そのうちの一人に言った。
顔を真っ赤にして走り去っていったのを今でも覚えている。あいつの悔しそうな顔が面白くて僕は腹を抱えて笑った。
ほどなくして家に着いた。
戸を開けると物置みたいになっていた空間がきっちり整頓されていた。それは、一目見ただけで冬雪の頑張りが伺えるほどだった。
休む暇もなく冬雪は台所の方に行き予め買っていた食材を切り始めた。
冬雪は、鍋を作っていた。僕は邪魔にならないように横で見守っていた。
僕の方をチラっと見たあと「できたわよ」と嬉しそうに言った。
僕はこの時間が好きだ。
鍋を食べ終えたあと冬雪は素早く使った食器を洗い、押し入れから敷布団を二つ出して寝た。




