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第4話 銀髪美少女と金髪美女

 【龍の巣】と呼ばれる高難易度ダンジョンへ行きたい俺達の護衛を引き受けると言ってくれたのは、重そうな白銀の鎧を身につけた金髪ポニーテールのお姉さんだ。


 前世でいうところのヨーロッパ人のような感じで、薄い蒼の瞳に鼻筋がシュッとした美人。俺より少し年上に見えるけど、いくら俺でも女性に年齢を聞くのはやめたほうがいいことくらいは知っている。


「この護衛、私達に任せてもらえないだろうか?」


 私達ってことはパーティーなのだろう。こんな早く見つかるなんてラッキーだ。


 美人さんは何かのカードを見せてきた。そこには名前の他に、Aランクであることを証明するギルド印などが記されている。


「カリンカさん、ですね。俺はリクトといいます」


「わっ、私はエミルっていいます。こ、この度は依頼を受けてくださって本当にありがとうございます」


 オーラとでもいうのか、そんなに歳が離れているわけでもなさそうなのに、威厳のある佇まいをしたカリンカさんを前にして、エミルが緊張している。

 俺としても美人だからお近づきになりたいというよりは、カッコいい人だなという印象が強い。


「私達としても必要としてくれる人の助けになりたいと思っているんだ。ただ龍の巣となると相応の準備が必要だから、出発は二日後の朝になるけどいいだろうか? もちろんそれまでに他に受けてくれる人が見つかった場合は、こちらをキャンセルしてもらって構わない」


 エミルの妹さんの病を治すための依頼だ。一刻を争うかもしれない。俺はエミルの方を見て、回答を委ねた。


「今は病状が安定していますから、二日後で大丈夫です。よろしくお願いします」


 エミルとしても女性のほうが安心できるのだろう。今の俺は金髪青鎧のパンチ一発で口から流血する男だからな。何かあってもエミルを守れない。


 それからエミルとカリンカさんが握手を交わして依頼成立となった。銀髪美少女と金髪美女の握手。なんだろう、尊くて俺には眩しすぎるくらいだ。


 だけどもう夜なので、予め見つけて予約しておいた宿へと帰ることにする。一部屋しか空きが無いからエミルと同室に……なんてことはなく、別々だけど隣同士の部屋だ。


 エミルに対して変な気を起こそうとは思わない。魅力が無いとかじゃなく、純粋に応援したいと思う。でも『可愛い女の子から回復魔法をかけられたい!』というのは不純ですね、認めます。


 出発は二日後。ということは丸一日空きがあるということに。実はそれは俺にとっては都合が良かった。チートスキル【ダメージ調整】を使いこなせるようにしたかったからだ。


 そのため冒険者としての依頼を受けるつもりだ。登録は今日のうちに済ませておいた。


 どうやら副業として冒険者をすることもできるらしく、一応エミルも冒険者として登録することになった。


 ここは魔法が当たり前のように存在する世界。生まれつき魔法が使える人もいるらしく、それはもうそういう世界なんだと深く考えず、俺は受け入れることにした。


 せっかく使えるんだからとエミルは、村の人達の軽いケガを治療するために、無償でヒールを使ってきたらしい。


 エミルは両親と妹と暮らしているそうで、農業を生業(なりわい)としているとのこと。エミルはそれの手伝いをして過ごしてきたそうだ。


 そして妹の病気を完治させるエリクサーを買うためには大金が必要だけど、自分で薬師に材料を持ち込めばかなり費用を抑えられるらしい。


 妹のためなら金に糸目はつけたくないところだろうけど、金というものは無い時は本当にどうしようもない。貸金業があるのかとか、そのあたりのことは俺にはまだよく分からない。


 きっとエミル達だって、できることはやってきたに違いないだろう。


 俺だってチートスキルでダメージをゼロにできるから冒険者をやってみようと思っただけで、別の仕事をして普通に生きていってもよかったんだ。


 でも一番の理由はやっぱり、『可愛い女の子から回復魔法をかけられたい!』ということだった。今日エミルからかけてもらったヒール、最高だった! 今日はいい夢が見れそうだ。



 翌朝。複数の女の子が俺にヒールをかける順番をめぐって争っているという、ワケが分からない夢の途中で目が覚めた。

 夢の中には深層心理が表れるという。なんてこった、正解じゃないか。いつか実現させてやろう。


 さてエミルはどうしているかな? と思ったけど、まだ寝ていたら起こすのは悪いので、一人で宿の食堂に行き朝食をとった。

 その間もエミルに会うことはなかった。まあ、今日はギルドに行くと言ってあるから大丈夫か。


 ギルドに入った俺は一直線に依頼掲示板へと向かう。本番は明日だから、今日中には【ダメージ調整】をマスターしたいところ。


 掲示板の前では何人かの冒険者がじっくりと依頼書を選んでいる。服装や装備から、なんとなくその人のジョブが分かるな。銃刀法とかどうなってんだろう?


 他にもエントランスで談笑している人がいたり、複数ある受付カウンターで順番待ちをしている人がいたりと、朝9時からギルドはなかなかの賑わいを見せている。


 俺の冒険者ランクはF。7段階のうち最低はF。最高はS。速攻で理解できた。


 で、Fランクの依頼は薬草採取など。でもこれじゃ戦闘経験にはならない。もう少し探していると、Fランクでも入れるダンジョンでの依頼を見つけた。ダンジョンということは、モンスターが出るに違いない。


 俺は掲示板からはがした一枚の依頼書を受付に持って行き、綺麗なお姉さんに堂々と宣言した。


「この依頼を受けます」


 さあ、ここからが俺の不純な異世界生活の本番だ。

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