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「可愛い女の子から回復魔法をかけられたい!」と思い味方をかばいまくっていたら、過保護パーティーができた  作者: 猫野 ジム


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第39話 これもチートスキルですか?

 どうやら【ダメージ調整】のスキルも、エミルのヒールと同じように熟練度で進化するらしい。そしてスキルが進化して吹き飛び耐性がついた。


 そこまではいい。だけどこれはどういうことだ? 俺は今、前と両横をパーティーメンバーに囲まれている。


「カリンカさん、この陣形おかしくないですか? これだとまるで俺がみんなから守られてるみたいなんですけど」


「そうだよ。みんなでリクトを守るんだ」


「それはありがたいですけど、ここはエミルのポジションだと思いますよ」


「リクトさん、今はお話ししてる場合じゃないですよね? ね?」


「周りにモンスターいないし、俺はお話ししてる場合だと思うけど。エミルもそう思わないか?」


「みんなで協力してボスを倒しましょうー」


 俺はついにエミルに質問する権利まで失ったようだ。なんで?


 仕方がないのでこのままにしておくことにした。だけどエミルとミヤが近すぎて、こんなにも広い道なのに二人と時々ぶつかりながら進むことに。俺はその度に女の子の柔らかさを知った。


 岩場のダンジョンなのに、なぜか地下へと続く階段がある。それはまるで何者かが意図的に作り出したかのよう。

 そういったことを解明するのも冒険者の役割だという。こうして考えてみると、冒険者ってけっこう大事な職業なんだな。


 そして大きな扉の前へとやって来た。身長の数倍はあるんじゃないかという鉄製で両開きの扉だ。


「この先にダンジョンボスがいる。みんな準備はいいかな?」


 カリンカさんからの問いかけに、全員が静かに頷いた。

 そしてカリンカさんが扉を開き、俺達も後に続く。どうやら他の冒険者はいないようだ。もしいれば共闘することもカリンカさんは考えていたらしい。


 部屋の中は本当に何も無い。岩のような床・壁・天井。ただそれだけ。なのに広さは果てしなく、戦闘のためだけに用意されたのかと思うほど。


「いいかいみんな。事前に説明した通り、ここのボスは眠りの状態異常にさせてくる。残念だけどそれを防ぐことは難しい。でも安心して、私がアイテムでみんなを起こすから」


 ここに来る前、俺達はカリンカさんから説明を受けた。なんでもボスは睡眠ガスを使ってくるそうで、それを吸い込んでしまうと眠り状態になってしまうのだという。


 ガスなので防ぐことは困難だ。耐性があれば大丈夫らしいけど、今のところそれがあるのはカリンカさんだけ。果たしてカリンカさんに足りないものはあるのか?


 なのでもし俺達が眠り状態になってしまったら、カリンカさんが『目覚めの鈴』というアイテムを使ってくれることになっている。

 前のパーティーの時に手に入れたレアアイテムだそうで、使用回数は無限。強引に引き起こされた眠りにだけ有効らしい。


 まあ俺としては眠りの状態異常ってもの自体が怪しいんだけど。だって戦闘中に寝るなんてそんなことある? いくらなんでも気付くでしょ。


 俺としてはそんなことよりも、果たして【ダメージ調整】は状態異常にも有効なのかってことのほうが気になる。

 もちろんテストをしようとした。だけど、自分から状態異常になるって意外と難しい。毒薬を自分から飲めますかって話だ。


 部屋には隠れられる場所が全くないので、ここで俺包囲網が解かれた。エミルだけが後方に下がり、全員で部屋の中心まで進む。


「ボスが来るよ! 私が注意を引くからリクトとミヤはとにかく攻撃して! エミルは離れてて!」


 いつもより大きなカリンカさんの声が戦闘の始まりを知らせる。

 そして俺は片手剣を構え、ミヤはダガーを取り出した。


 すると前方に大きな影が現れ、大きく広がった。つまりは落下してきたということだ。

 そして姿を現したのはドラゴン。いろんな作品で強敵として描かれる、あのドラゴン。

 もしもギルドからの依頼書に書いてなかったら、めちゃくちゃ驚いてたと思う。


 カリンカさんの話によると、ドラゴンにも種類があって下位の存在もいるんだとか。ここはDランクダンジョンなので、Dランク相当のドラゴンということになる。つまり、そこまで強くない。


 とはいえ、ほぼ真上を向かないといけないような巨体に硬そうな紫色のうろこ。鋭く尖った黒光りするツメ。威圧感が凄まじい。


「私が注意を引くからリクトとミヤは後ろに回って! エミルは安全な所に隠れてて!」


 睡眠ガスは口から吐くとのことなので、俺とミヤはドラゴンの後ろから攻撃することになっている。


 俺とミヤは早速後ろに回り込もうとした。でもドラゴンはカリンカさんをツメで攻撃しつつも、俺達に向かってはしっぽを振り回すのでうまくいかない。


「ドラゴンが息を吸い込んだ……! 睡眠ブレスがくるよ!」


 カリンカさんが叫ぶ。だけど防ぐ手段が無い。強いて言うなら息を止めることくらいか。

 そしてドラゴンの頭が少しのけ反り、口から勢いよく白い煙が吐き出された。

 俺は今『無傷』に設定しているが、果たして……?


 やがてモヤが晴れ、俺は視界を取り戻した。そこにはさっきまでと変わらない光景がある。


(なんだ、大丈夫じゃないか……! やっぱり『眠り』なんて状態異常ありえないよな)


 俺はこの隙を逃すまいと、一気に後ろに回り込もうとする。

 すると何か音が聞こえてきた。よく考えると、さっきからずっと聞こえているような? これは……鈴の音?


「——クト! リクト! 起きて!」


 カリンカさんが呼んでいる。気が付くと俺は地面にうつ伏せになっていた。


「リクト! よかった! さあ立ち上がって! ミヤも!」


 俺は夢を見ていた。眠っていないという夢を。つまり睡眠ブレスが効いてしまっていた。でもカリンカさんが目覚めの鈴を使ってくれたから、こうしてすぐに目を覚ますことができたんだ。


(戦闘中に眠るって実はヤバい状態異常なんだな……)


 そんなことを考えていると、レベルアップの感覚にとらわれた。このタイミングということは、【ダメージ調整】が進化したとしか思えない。


 検証したいところだが、さすがにそんな余裕は無い。俺とミヤは再びドラゴンの後ろに回り込もうと試みる。だがやはり猛攻によってうまくいかない。


 そんな中、ミヤが一人でドラゴンの横を通り抜けようと駆け出した。

 するとドラゴンは体の向きを変え、両手としっぽで次々とミヤを攻撃していく。が、ミヤはそれを全て素早く避けていく。とにかく避けまくる。ミヤってこんなに動けたっけ?


「私はもう絶対にケガしないって決めたの! 特に顔! あんなこと何回もされたら私ダメになるっ……!」


 なんという執念。それにしても『あんなこと』って。それエミルに聞かせちゃダメなやつ。


「リクト! こうなったらこっちから攻撃するよ!」


「分かりました!」


 俺はカリンカさんと二人で後ろからドラゴンを攻撃した。俺は足元を狙い、カリンカさんはドラゴンの背中を狙う。

 それに耐えかねたのかドラゴンがこっちを向いたので、俺とカリンカさんはドラゴンから距離をとった。俺達と入れ替わるように今度はミヤが後ろからダガーで何度も切りつける。


 こっちを向いたドラゴンは再び睡眠ブレスを吐き出してきた。……が、全く眠くならない。これは夢じゃない。


(間違いない、ダメージ調整に眠り耐性がついた!)


 一回でスキルが進化した。このままいけば本当に全ての攻撃が無効化できるかもしれない。やっぱりこれはチートスキルだ。


 そしてついにドラゴンを倒し、魔石になったことを確認してから全員が集まった。


「お疲れ様、みんな強くなってきたね。特にミヤ、素晴らしい動きだったよ」


「やった! カリンカさんに褒められた!」


「俺も凄いと思ったぞ。なんというか絶対にケガしたくないって強い意思を感じた」


「あ、ありがと……。リクトってやっぱり意外と素直に褒めてくれるよね」


「そうか? 本当に凄いと思ったからそう言ってるだけだぞ」


 俺はそう言いつつも気付いてしまった。ミヤの顔に傷があることに。おそらくドラゴンのツメで引っ掻かれたのだろう。

 本来ならそれは俺の役目だ。だけど俺だって空気を読む。さすがにボス戦で『無傷』以外を選んだりはしない。


 聖女様が言っていた。今のエミルは魔力の制御がうまくできないから、レベルを上げる必要があるって。

 だから仕方なく! エミルヒールを受ける役目をミヤに譲ろう。


「ミヤ、顔に——」


「さあ! 早く帰ってギルドに報告するわよ! 早く! さあ早く!」


 俺の言葉を遮るミヤ。明らかに誤魔化しているな……。俺だって鬼じゃない、今回はエミルのレベルアップを諦めるか?


「ミヤさん、頬に傷ができてます」


 さすがエミルは気が付いている。きっと誰もケガしてないか注意深く見守っているのだろう。指摘されたミヤは途端に慌て出した。


「えっ!? こんなの大丈夫よ! 適当にポーション使えば治るって!」


「それはそうですけど、私、戦闘中に何もできなくて、いつも守られてばかりで……」


 戦闘中にエミルヒールは使えない。そうなるとエミルの活躍の場は限られる。


「そんなことないわよ! エミルはいてくれるだけでいいの!」


 近づくエミル、後ずさりするミヤ。それはさながらミヤがエミルに襲われているかのよう。


「ミヤさん、私ではもの足りないでしょうか……? 私、もっと頑張りますからせめて治療だけでもさせてください」


「どうしてこの子はそんなにも澄んだ瞳をしているの!?」


 ミヤの足が止まった。そしてエミルが前に立ち、ミヤの顔をそっと両手でつかんだ。二人の身長は同じくらいなので、実にちょうどいい。

 ミヤはこれで三回目のエミルヒールだ。しかも全て顔。二度あることは三度あるとはよく言ったものだなぁ。


「だから近いんだってば! 女の子同士ってどうなのよ!? エミルの手、温かい……。違う! 待って待って!」


「ヒール……」


「あぁっ……! ひゃ……」


 ミヤの両頬を優しくつかむエミルの両手が、薄い緑色の光に包まれた。ミヤの表情は……よだれを拭いてとしか言えん。

 それからさらにエミルが顔を近づけた。傷の様子を確認するためだろうか?


「あふぇ……」


 ミヤがさらに声を漏らす。


(もしかしてエミルヒールに耐性があるのって俺だけ?)


 おそらく俺は世界で唯一のヒール耐性もちだろう。チートスキルなのか? それは。

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