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「可愛い女の子から回復魔法をかけられたい!」と思い味方をかばいまくっていたら、過保護パーティーができた  作者: 猫野 ジム


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第37話 なんでこのタイミング?

 せっかく王都まで来たんだから、冒険者ギルドに行ってみようということになった。


 俺とミヤとの小競り合いの後、ダンジョン探索をすることに決まった。その依頼内容はボスを討伐するというものだ。

 ダンジョンにはボスがいる。ゲームならごく普通のことだけど、まさか本当に存在するなんて。


 時刻は正午前。今から出発しても問題ない時間だ。


「カリンカさん、どうします? 今から行きますか?」


「そうだね、そうしようか」




 そして二時間ほどかけてやって来たのはDランクダンジョン。王都から離れた草原にポツンとあり、大岩でできたドーム型のダンジョンだ。

 広さの例えでよく東京ドーム何個分とか言ったりするけど、東京に行ったこともない俺には全くピンとこない例え。


 まあダンジョンは外観よりも遥かに大きいことが多いから、見た目だけじゃその広さは分からない。そのあたりもダンジョンの謎の一つなんだってさ。


 ちなみに王都からの移動は馬車と徒歩だった。Fランクダンジョンなど需要の多い場所とは違って、馬車の定期便など出ていない。


 だけど馬車レンタルという商売があり、お金を払えば御者付きで馬車を使えて、行き先を指定できる。

 さすがにダンジョン直行はできないけど、可能な限り近い場所で降りることができるタクシーのようなシステムだ。

 

 入り口では国家所属の騎士が見張りをしており、中に入るには冒険者カードとギルドからの依頼書が必要となる。


 中に入ったはいいものの、真っ暗だ。Fランクダンジョンなんかだと国や冒険者ギルドが設置したランプが等間隔で壁にあったりするけど、ほとんどの場合はダンジョンにそれらを設置しても、翌日までには消え去っていたりするそうだ。


 俺は道具袋から懐中電灯を取り出した。電気で動いてないから正確には違うけど、形状はほとんど同じ。


 光を放つ魔法を中に封じ込めており、スイッチを入れている間だけそれが解放されて、前方を照らすという仕組みらしい。

 でもやがては魔法が消えてしまい、補充ができないので使い捨てのアイテムだ。


「さあ、行くぞ」


 俺は懐中電灯を持ち、先頭へと躍り出た。するとカリンカさんがすぐさま俺の前に来たので、足を止めざるを得なくなった。


「あの、カリンカさん? 進めないんですけど」


「私が一番前を歩く。だからリクトは私から離れないで」


 どうしよう、「私から離れないで」だなんて、なんだかカリンカさんが大胆なんだけど。

 金髪ポニーテール美人お姉さんからそんなこと言われたら、セルフで『魅了』の状態異常になって味方を攻撃してしまいそうになる。


「大丈夫ですよ。それに明かりがないと危ないですから」


「いいや、君は無茶をするからね。それに明かりなら私も持っているから」


 俺は今【ダメージ調整】を『無傷』に設定しているから、本当に大丈夫なんだけどな。


「安心して。君は私が守るから」


(ゴハァッ……!)


 なんという言葉の破壊力……! そんなこと言われたら、何もかも美人お姉さんにお世話してもらいたいなんて思ってしまう。どっちにしてもナチュラルに言えるカリンカさん、やっぱりすげぇ。


 どうやら【ダメージ調整】は心へのダメージには機能しないようだな。……違う違う、ダメージって失礼な。カリンカさんの真心じゃないか。


「気持ちは本当に嬉しいです。だけど俺だって前衛だから、守られてばかりというわけにはいかないんです」


 俺はそう言ってから、せめてカリンカさんと横並びになろうとしたけど、またもや足を止めることになった。


 左にはミヤ、右にはエミル。美少女二人が俺にピッタリとくっつくようにして、前に出るのを阻止している。

 そして前にはカリンカさん。いつの間にか俺包囲網ができあがっていたのだ。何も悪いことしてないのに。


「エミル、ミヤ、なんで俺の横にくっついて来る?」


「私もカリンカさんに賛成だからよ。安心して、私がしっかり管理してあげるから」


「私もリクトさんが心配なんです。ケガはヒールで治せますけど、やっぱりそれ以前に誰にも痛い思いをしてほしくないんです」


「分かった、みんなありがとう。だけど誰にも痛い思いをしてほしくないのは俺だって同じだ。だからエミルとミヤは下がっててもらえると嬉しい」


 ミヤには気配察知のスキルがあるから、後ろからの気配を察知することができる。

 それに有効距離があるそうなので、後ろにいたほうが結果的にいち早く察知できるみたいだ。


 そして話し合いの末、俺とカリンカさんは横並びになり、その後ろにあとの二人がついてくるという陣形になった。


 ギルドから配布された地図を頼りに岩場を進んでいると、ミヤが声を上げた。


「前からモンスターが近づいてるわね。数は……二体」


 すると本当に前からモンスターが現れた。俺の身長の数倍はあろうかという水色っぽい巨体で、筋肉ムキムキ。原始人が着るような毛皮を身に付け、右手には大木をそのまま持っているのかと思うほどのデカいこん棒を持っている。


 そして一番の特徴は目が一つであること。サイクロプスだ。ギルドからの情報で知ってはいたものの、いざ目の前にするとめちゃくちゃ怖い。


 どう見てもパワー系のモンスターだ。ここは真面目に『無傷』にして戦おう。


「カリンカさん、俺も戦います!」


「二体いるなら仕方ないね。分かった、一体は任せるよ。今のリクトでも十分に倒せるから落ち着いてね」


「はいっ!」


 エミルとミヤを下がらせて、サイクロプスと対峙した。とてつもない身長差だけでも威圧感が凄まじい。


 そしてやはりというか、こいつはこん棒を振り下ろした後に隙ができるらしい。なのでそこを狙って反撃をすればいいはず。


 しかしそれはモンスターに攻撃させなければならないということ。つまりこん棒をかわさないといけない。


 俺がモンスターに近づくと、早速こん棒が振り下ろされた。俺はそれをサイドステップでかわす。こん棒が地面に叩きつけられ、ダンジョン内に轟音が響く。


(ここか!)


 隙ができているので、足を狙って剣を振り抜く。まずは体勢を崩させるところからだ。

 確かな手応えと共に、モンスターの足に傷ができたことを確認した。時間はかかるが、確実に効いているだろう。


 次の攻撃に備えるべく後ろに下がろうと振り返った瞬間、視界に高速で迫り来るものが入った。


 それはサイクロプスのこん棒で、こいつは空振りした後、そのまま薙ぎ払うかのように俺にぶつけてきていた。


「ぐあぁっ……!」


 正面からくらってしまった俺は大きく吹き飛び、そのまま壁に叩きつけられてしまう。

 これはもう全身の骨がバッキバキになっててもおかしくない。でも全然痛くない。ダメージ調整の勝利だ。


(ダメージは無いけど、やっぱり吹き飛んでしまうのか)


 合同探索の時もそうだった。衝撃魔法をまともにくらった時、ダメージは無かったけど盛大に吹き飛んでしまったんだ。


(完全に無敵ってわけじゃない……?)


 そう思い始めたと同時に、久しぶりとなる感覚があった。それは『レベル』が上がった時の感覚だった。


(モンスターを倒したわけでもないのになんで今?)


 俺がしたことといえば、モンスターの攻撃をくらったことだけ。だとすると考えられることは限られる。


(まさかダメージ調整ってエミルのヒールみたいに熟練度で進化するのか……?)

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