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「可愛い女の子から回復魔法をかけられたい!」と思い味方をかばいまくっていたら、過保護パーティーができた  作者: 猫野 ジム


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第35話 触らないとできないの?

 エミルが聖女様にヒールをかけると、聖女様から「また明日お越しください」と言われた。というわけで、俺達は今日も城へ行く。


 全員で宿の食堂にあるテーブルを囲んで朝食をとる。ここで俺はそもそもの話をカリンカさんにすることにした。


「聖女様ってどういう存在なんですか?」


 俺がそう言うとカリンカさんは少し首をかしげた。エミルとミヤも同じような反応を示している。


(あ、そうか)


 日本に聖女様はいないけど、どうやらこの世界では常識的なことらしい。

 なのでこの世界で生まれ育ったのなら、聖女様のことを知らないのは不自然ということか。


「いやー、聖女様がなんだか急に身近な存在になったっていうか、エミルがそうかもしれないと思うと、復習のためになんだかカリンカさんから教わりたくなりました」


「そうなんだね。確かに私も驚いてるよ、まさかエミルが聖女様になれるかもしれないなんて」


 きっと異世界もの作品と同じように、ごく一部の選ばれた人にしかなれないのだろう。


「聖女様というのは、世界の安定に不可欠と言っていい存在なんだよ。例えば前にも少し話したと思うけど、街の中や周辺にモンスターが出ないのは、聖女様の結界魔法のおかげなんだ」


「そうですよね、そんな都合よくモンスターが空気を読むわけないですよね。だとすると、もし聖女様がいなければ、モンスターが街に入り放題というわけですね」


「うーん、そう言うよりかは、念のためといった感じかな。ほとんどのモンスターに共通する生態として、生息域から出ないというものがあるけど、全てのモンスターがそうだとは限らないからね。その他には人々の悩みや迷いを聞いて解決の手助けをしたり、懺悔を聞いたり、とにかく多忙だと聞く。昨日、私達と同じように待っていた人は、みんな聖女様に謁見しようと来ていたんだよ」


「めちゃくちゃ忙しいですね。聖女様はどんな人がなれるんですか? やっぱり血筋でしょうか?」


「それもあるけど素質とでも言うのかな、本当にごく稀に、聖女様と同じ魔力の質や能力をもつ女性が現れるそうだよ。そしてそういう人が志願したり、国が人材を発掘したり、経緯は様々だと言われているんだ」


「それがエミルかもしれないということですね」


「それを今日これから確かめに行くのさ」


 エミルは聖女かもしれない。それはとても光栄なことだろうけど話を聞く限り、とんでもなく大変そうなことが分かる。


 もし俺だったら絶対に断るけど、それを決めるのはエミルだ。エミルがそれを望まないのなら、このまま冒険者として一緒にSランクを目指そう。


「エミルはもし本当に聖女になれるって言われたらどうしたいんだ?」


「私がこうして冒険者の活動をしている理由は、自分の力を人々のお役に立てたいからです。もし聖女様になれるのなら、それはとっても素敵だなって思います。……といっても、私にはヒールを使うことしかできませんけど」


 エミルの口から『ヒール』という言葉が出ると、なぜだかドキッとしてしまう。

 それはカリンカさんとミヤも同じのようで、二人は身体をビクッと反応させていた。




 そして城に着いた俺達は、全員が昨日と同じ場所で待機をして、今日も1時間ほど待った後に部屋の中へと通された。


 見上げるほどに大きなステンドグラスの前では、聖女様が両手を前にして立っており、その神秘的なまでの雰囲気を感じた俺は、初めてオーラが見えた気がした。


 エミルヒールにも全く動じていなかったし、他の人とは何か違う力を持っているんだろうな、きっと。


「ようこそお越しくださいました。昨日のお話の続きということでよろしいでしょうか?」


 聖女様との会話はカリンカさん任せだ。


「はい。エミルにはヒーラーとしての素質があることや、他の人には無い何かを感じると昨日おっしゃっていましたが、聖女様のご意見をたまわりたく参りました」


「結論から申し上げると、エミルさんは聖女になり得るお方だと思います。昨日ヒールをかけていただきましたが、魔力の質・流れ・量、どれをとっても他の方には到底たどり着けない領域に達しています。なので結界魔法を使えるという話にも頷けます」


 マジか。エミルが聖女だって? だとすると、エミルと一緒に冒険者活動できるのはこれで終わり……?


「ですが、どうやらエミルさんは魔力の制御が上手くできていないようです」


「魔力の制御……ですか?」


「はい。エミルさんがヒールを使う時に、必要な量よりも大量の魔力が対象者に流れ込んでしまうようです。例えるなら、ほんの一滴の水でいいのに、大きな滝が全て流れ込んでしまうかのような」


「それを改善するにはどうすればいいのでしょうか?」


「これはもうエミルさんの感覚を頼りにするしかありません。一番の近道はレベルアップですね。それに加えて慣れも必要でしょう」


「ということは、ヒールをたくさん使う必要があるということですね?」


「はい。ですがヒールをはじめとした回復魔法は、ケガをした相手にしか効果を発揮しません。なので他のジョブと比べて、ヒーラーのレベルを上げるのは大変でしょう」


 なるほど、聖女様もその認識なのか。でも俺には関係ない話だ。【ダメージ調整】なんてチートスキル、持ってるの俺だけだろうからな。


「聖女様、ありがとうございました。まずはエミルのレベルアップを目的にしてみようと思います」


「お役に立てて何よりです。それで、その……、念のためもう一度だけ確認したいので、エミルさん、私にヒールをかけていただけますか?」


 聖女様マジですか。自ら志願するとは、俺以外にもいた。

 でもまあ昨日だって平気そうだったし、そりゃあ聖女様にとっては楽勝なんだろうな。


 それから昨日と同じく、左に聖女様、右にエミルという構図が完成。相変わらず二人の距離は近い。


「あのっ、今日はどこをケガしたことにすればいいのでしょうか?」


「そうですね、胸の少し上あたりにしましょう。心臓に近いところなので、緊急性が高いですから」


「わかりました」


 エミルはそう言うと、両手でピタッと聖女様の胸の辺りに触れた。


「ヒール……」


 回復魔法の特徴である、淡い緑色の光が聖女様の胸を包み込む。もしもヒーラーが男なら逮捕される位置じゃないかと思ったけど、さすが聖女様、その表情は凛としてどこか勇ましい。


 そしてエミルが聖女様から離れ、再び俺達の横に並んだ。


「やはりエミルさんの魔力は聖女になれる素質を秘めています。あとはエミルさん次第ということになりますね」


「どうもありがとうございました」


 カリンカさんが代表してお礼を言うと、聖女様から質問が飛んできた。


「昨日もお聞きしましたけれど、メンバーのみなさんはエミルさんのヒールで回復をされているのですよね?」


「はい。冒険者とケガはどうしても切り離せないものですから」


「そうですか、本当に凄いですね。また何かありましたら、いつでもお越しください」


 そして謁見が終了。城を出た俺達は、せっかくだからとレストランで昼食をとることに。


「カリンカさんにミヤ。どうやらエミルのレベルアップのためには、ヒールを使うことが不可欠のようです。なのでケガしたらエミルに治してもらいましょう」


 俺はそう提案したけど、二人はソワソワするだけで、あまりいい反応は見られなかった。


(エミルもいいが、そろそろ俺のレベルアップも本格的にしなくては)





【リクト達が部屋を出た直後(三人称一元・聖女)】


 リクト達が部屋から出た後、昨日と同じく聖女は護衛の騎士二人に退室するよう言った。

 それに素直に従った騎士が退室し、広い部屋には聖女だけが残る。


 それから聖女はなんだかソワソワした様子で、いつも使っている背もたれ付きの椅子へ腰掛けた。いや、なんとかたどり着いたと言ってもいいのかもしれない。


 そして聖女は座ったまま天を仰ぎ頭を抱え、さっきの出来事を思い出した。


(やっぱりダメっ、なんなのあの感覚!? 私では表情を崩さないようにすることが精一杯……! しかも咄嗟(とっさ)に胸だなんて言ってしまったけど、また危うく私の初めてが女の子になるところだったよ……! あの子は触らないとできないの? それにしてもやっぱりエミルさんの魔力は本物。だから魔力の制御さえできるようになればきっと……!)


 実は聖女は今回も全然平気ではなかった。だが万が一にも誤ったことを伝えるわけにはいかない。だからあえてもう一度エミルからヒールをかけてもらうという選択をしたのだ。


(それから他の三人、エミルさんのヒールを日常的に受けているだなんて、やっぱり大物に違いないわね)


 聖女は思った。あのパーティーは全員がとんでもない素質を秘めているに違いないと。


(あぁっ……! エミルさん、これからも来てくれるかしら?)


 こうしてリクト達のパーティーは、何もしてないのに聖女から多大なる評価をされ、エミルは聖女からの期待値が爆上がりしたのだった。

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