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「可愛い女の子から回復魔法をかけられたい!」と思い味方をかばいまくっていたら、過保護パーティーができた  作者: 猫野 ジム


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第30話 バグ

 ミヤが料理に取り掛かるため、ひと足先にキッチンへと向かった。


「俺達も行こうか」


「そうですか、ミヤさんと一緒にですか」


 俺もキッチンに行こうと歩き出すと、後ろからエミルの声が聞こえてきた。

 ミヤと一緒に帰って来たんだから、そう見えるだろうな。実際その通りだし。


 俺は「そうなんだよ」と言うため少し振り返った。ところがエミルの姿が見当たらない。先に行ったのかと思ったが、前にもいない。エミルが忽然(こつぜん)と消えてしまったのだ。


「おーい、エミルどこに行ったんだ?」


「私ならここにいますよ?」


 これは間違いなくエミルの声だ。一体どこから? もう一度よく振り返ると今度はエミルの姿を見つけることができた。ただし俺のすぐ後ろにぴったりとくっついた状態で。


 触れてこそいないが、数センチくらいしか離れていない。どうりで少し振り返っただけじゃ視界に入らないわけだ。こんなのフクロウみたいに首が180度以上回らないと無理だろ。


「うわっ! 近いな!」


「あっ、ごめんなさい。リクトさんをびっくりさせたくて。サプライズですねっ!」


「なんで?」


「さあ! ミヤさんのご飯を待ちましょうー!」


「サプライズのしかた間違ってない? なぁエミル? おーい?」


「今日のメニューは何かなぁー? リクトさん、行きますよ!」


 エミルはそう言って先に行ってしまった。カリンカさんに料理ができるか聞いた時といい、俺の質問ってなぜかたまに迷子になるんだけど。


「ただいま」


 玄関に立ったままの俺の耳に聞こえてきたのはカリンカさんの声。


「カリンカさん、おかえりなさい」


「リクト、ただいま。エミルとミヤは帰ってる?」


「二人とも帰って来てますよ。ミヤは夕食の準備をしてくれてます」


「それは楽しみだね。私達も行こうか」


「そうですね」


 なんだろう、カリンカさんと話していると安心する。少し年上の優しい美人お姉さんって最高かもしれない。


 食卓には焼き魚の他に野菜炒めやジャムが並ぶ。ジャムとは、パンに塗るあのジャム。

 そう、この世界には米が無い。箸はあるのに。食に関してそこだけはどうしても物足りなく感じてしまう。


(今日はスープは無し……か)


 焼き魚には塩が振ってあり、身は柔らかくホクホク。舌の上で溶けそうな食感で、飲み込んだあとには舌にわずかな塩味が残る。これがまた絶妙な塩加減で、ますます米がほしくなってしまう。


「やっぱりミヤさんが作る料理は美味しいですー!」


「あぁっ……! やはり食こそが人生一番の楽しみだよ……! あぁっ……! これで明日からも頑張れるっ……!」


「もうー、二人とも大げさだなぁー」


 どうやらカリンカさんの食に対する思いは、俺が考えているよりも大きいらしい。


「ところでリクト、いったいエミルはどうしたのかな?」


「それが俺にも分かりません」


 カリンカさんがなぜエミルを不思議がっているのか。それは俺とエミルの間にある距離がゼロ距離だから。


 エミルは自分の椅子を俺が座る椅子にぴったりとくっつけている。なので箸を持った右手を動かしづらくて仕方がない。


「なあエミル、ちょっと近くないか?」


「そうですか?」


(帰って来てからエミルの距離感がバグってる……!)


 エミルがあまりにも自然にそう言うものだから、なんとなく指摘できない雰囲気になった。


(まあいいか。嫌ってわけじゃないから)


 そんな俺をミヤが無言で見つめていた。




 翌日。今日こそは最高難易度のEランクダンジョンに行こうと、全員でギルドにやって来た。


 そして依頼掲示板から依頼書をはがして、俺が代表して受付のカスミさんのもとへ。


「この依頼を受けます」


「あら、リクトさん。聞きましたよ、合同探索で大活躍だったそうですね」


「えっ? 俺そんな大したことしてませんよ」


「あら、そうなの? 参加者の間ではちょっとした話題になっていますよ。EランクだけどCランクモンスターの攻撃を受けて無傷だったって」


「ああ、あれですか。たまたまライトアーマーの鎧の部分に当たっただけですよ」


「そのライトアーマーだって初心者向けのものだったって聞いていますよ?」


「あの時はそうでしたけど、ちょっといいやつに買い替えました」


「そうなのね。でもリクトさん、ちょっとした有名人になったみたいですよ?」


「俺がですか? もしかして変なあだ名がついてたり?」


「うーん、あだ名というよりは通り名かしら? リクトさん、『軽装タンク』って呼ばれてるみたいよ?」


「なんですかそれは」


 勝手に変な通り名がついていた。

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