第29話 何かしてた美少女(暗躍)
俺は冷静にこの状況を考えることにした。俺は今からミヤと二人で出かける。……以上。
(つまりデートだな……)
なんてこった、初デートってこんないきなり決まるもんなのか!? いや、しかし相手は美少女だぞ。なんだかんだ言ってミヤも可愛いのだ。
さすがにライトアーマーでデートに行くわけにはいかない。俺はこの世界の一般的な服に着替えた。今は夏なのでTシャツにチノパンみたいな感じ。
(なんだろう、緊張してきたぞ)
毎日美少女たち三人と同じ家で暮らしているのに、いざ二人で出かけるとなるとなぜか意識してしまう不思議に、改めて俺は贅沢な暮らしをしているのだなと知った。
準備を終えてミヤの部屋の前に行き、「ミヤ、入るぞ?」と声をかけると、中からミヤの声が聞こえてきた。
「ちょっ、待って! 来るの早くない!? 私まだ履いてない!」
「履いてないはどう考えてもいらんセリフだろ!」
中で何してるのかは分からんけど、そんなことを言われる俺って男としてどう思われてるんだろう。あ、靴下を履いてないってことか、きっと。それなら普通のことだな。でもそれならあんなに慌てないか。
数分後に部屋から出てきたミヤは白いワンピース姿。青のミディアムヘアによく似合っており、見た目は清楚な美少女といった感じ。やっぱり可愛いな。
ところで、普通ワンピースは『履く』じゃなくて『着る』って表現になると思うんだ、俺は。いったい何を履いてなかったんだろう。
ついでかい声で騒いでしまったけど、カリンカさんとエミルが変に思わなかっただろうか?
リビングを通ったけどそこには誰もおらず、俺はミヤと二人で外に出た。
季節は夏。日本ほどじゃないけど異世界も十分に暑く、この世界にも熱中症という概念があるのか気になった。
「ミヤ、熱中症には気をつけような」
「熱中症? 何それ? 何かに熱中しすぎてしまう病気か何かなの? でもそれっていいことでもあると私は思うけど」
「いや、そういうことじゃなくてだな……。つまり暑さ対策をしようってことだ」
「なんだ、それならそうと言ってよねー。日焼け止めを塗ってあるし、きちんと水筒だって持って来たから大丈夫よ」
ミヤはそう言って右手に持っているバッグを指さした。意外としっかりしている。
「それで今からどこに行くんだ?」
「それなら私に任せて!」
俺は恥ずかしながらミヤに任せることにした。だって女の子と二人で出かけるの初めてなんだから仕方ないね。
まず最初に訪れたのは防具屋。……ん?
「ミヤ、ここって何の店か知ってるのか?」
「失礼ね、防具屋に決まってるじゃない」
デートに防具屋ってどうよ? もしかして異世界じゃ普通のことなのか?
中に入った俺達だけど、俺は昨日一人でここに来てライトアーマーを買ったばかりだ。
「いらっしゃい。……って、来てくれたのか」
スキンヘッドの40代くらいの男性店員からそう声をかけられた。いけないことじゃないのに、なんとなく恥ずかしい。
「はい、そうなんで——」
「そうなんですよー! 今日は連れて来ちゃいましたー!」
俺が返事するより先になぜかミヤが店員に向かって返事をした。
「そうかー! 昨日はあんなに真剣に選んでたもんな! そこの彼氏はずいぶん幸せ者だな……って、昨日来た兄ちゃんじゃねえか」
「どうも」
「これは面白れぇな。カップルが同じ日に別々で店に来てただなんて」
「カップルだなんて、もう! そんなぁー! それで私が昨日いいって言ったライトアーマーってありますかー?」
「ああ、バッチリ取り置きしておいたぞ」
店員がそう言って店の奥から持って来たのは、俺が昨日買ったのと同じライトアーマーだった。
「あれ? これって俺が昨日買ったやつと同じだ」
「そうなの?」
「そういえば確かに同じだな。でもな兄ちゃん、この嬢ちゃんは兄ちゃんのためにわざわざ下見に来てくれてたんだぞ。こんないい彼女がいるなんて幸せ者だな!」
「そ、そうですね……! 俺にはもったいないくらいですよー!」
(言えない……! ミヤが勝手に俺を彼氏だと言ってるだけなんですとは……!)
「同じの買ったのならまた買う意味はないよね! ごめんなさい、悪いけどキャンセルでお願いします」
「気にすんな、いいってことよ! それよりも兄ちゃん、彼女を大切にしろよ!」
「は、はいっ」
結局は何も買わずに店を出た。あの店員さん、めちゃくちゃいい人だな。
「それよりもミヤ、昨日はあんなことしてくれてたのか」
「だってリクトが心配なんだもん」
「そうか、ありがとう」
「えへへー、どういたしまして!」
ミヤはそう言うと腕を組んで体をピッタリと寄せてきた。
(近っ! 暑っ! 柔らかっ!)
「暑いから離れろって」
「じゃあ力ずくで離してみてよ」
それからミヤを離そうとしたが、意外にもミヤが粘ったので少し時間がかかってしまった。それはさながらイチャイチャしてるカップルのようでした。
「実はミヤって可愛いのでは?」なんて思ってた時期が俺にもありましたが、行く先々で俺のことを勝手に彼氏だと言いまくるため、「やっぱりよく分かんねえ」と思いました。
ミヤはパーティー唯一の料理番なので、夕方になる前には家に帰った。するとエミルだけが玄関まで出迎えに来てくれた。
「リクトさん! お出かけしていたんですね」
「そうなんだよ。ミヤから急に誘われてな」
「待たせてごめんねエミル。今からすぐ夕食の準備に取り掛かるからね」
そう言ってキッチンへと急いで行ったミヤ。
「俺達も行こうか」
「そうですか、ミヤさんと一緒にですか」




