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「可愛い女の子から回復魔法をかけられたい!」と思い味方をかばいまくっていたら、過保護パーティーができた  作者: 猫野 ジム


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第24話 実在してました

 いよいよ今日は合同探索の本番だ。この時のためにミヤは急ピッチでEランクになった。


 昼12時にギルドに集合することになっている。そして今の時刻は朝7時。パーティー拠点からギルドまでは徒歩10分くらいなので、どう考えても早起きしすぎだ。

 どうやらまだ前世で学校に通っていた頃の体内時計が変わりきっていないみたいだな。


 水でも飲もうと思い部屋から出て、キッチンがある右方向へ行こうとすると、隣の部屋のドアが開いた。中から出てきたのは水色のミディアムヘアの美少女、ミヤだ。


「ミヤもこんな早く目が覚めたのか?」


「リクト!?」


 俺に声をかけられるとは思っていなかったのか、ミヤは俺を見るなり、やや裏返ったような声を出した。


「何にそんな驚くことがあるんだ? 部屋が隣同士なんだから偶然タイミングが合うことだってあるだろう」


「それはそうだけど!」


 そして俺とミヤは歩き出した。同じ方向へ。


「なんで付いてくるの?」


「俺は水を飲みにキッチンまで行く途中だ」


「そう。私はこれから朝食を作るの。できたら起こしてあげるから、まだ寝てていいよ」


 四人で住むようになってから、食事の用意は全てミヤ任せ。その代わり他の家事は三人で分担しているんだ。ミヤは毎朝、誰よりも早く起きて朝食を作ってくれている。


「いつも悪いな。ありがとう」


「リクトって意外とそういうことをきちんと言うよね」


「もしかしてお礼のことか? そりゃ俺だってありがとうくらい言うぞ。あと意外とは余計だろ」


 これは俺が大事にしていることで、お礼はきちんと伝えるようにしている。

 まあ当たり前のことなんだけど、感謝の気持ちを持っていれば自然と出てくる言葉だと思う。


「ねえリクト。リクトはタンク(盾役)として冒険者を続けるの?」


「どうだろうな。完全に専念ってわけじゃないけど、まあ防御には自信あるから自然とそうなる感じだな」


「そうなんだ。でもあの森に行った時みたいにリクトだけが危ない目に遭うじゃない」


「それは逆に言えば危ない目に遭うのは俺だけってことだ。だから問題ないんじゃないか?」


「いやダメだよね。ねえ、もしもリクトがまた無茶しそうな時は、どんな方法をとってでも止めていい?」


「ん? あ、ああ……。それだけ俺を心配してくれるってことだな、ありがとう」


(なんかちょっと引っかかるものがあるけど、まあ大丈夫だろ)


 それから俺はありがたく二度寝をさせてもらい、その後メンバー全員でミヤが作った朝食をとった。朝からなんて贅沢な光景なんだろう。



 俺達がギルドに行くとたくさんの冒険者が外に出ており、それが合同探索の参加者であることがすぐに分かった。


 その人数はざっと50人ってところか。なかなかの大所帯だな。


 この場にいる冒険者それぞれが思い思いに出発の時を待つ。するとある男がやって来て、用意されてある台に上がった。


 冒険者は全員が静かになり、壇上にいる男に注目しているみたいだ。それはまるで学校の朝礼のようだった。


 で、校長先生のようなポジションに立っている男はどうやらギルドマスターらしい。

 40代半ばといったところで、茶色い短髪が逆立って天を向いている。見るからに体が大きく、日頃のトレーニングを欠かしていないことがうかがえる。


 そしてギルドマスターは壇上から野太い声で、この場にいる全員に向かって話し始めた。


「本日の合同探索に参加してくれたこと、ギルドマスターとして深く感謝する。ありがとう! そこでまずは全員が無事に帰還できるよう、儀式を行う!」


 ギルドマスターはそう言って、一人の女性に壇上に上がるよう促した。


 その女性はフード付き純白のローブを身にまとっている。フードがあること以外はエミルと似たような格好だが、そのローブには綺麗な刺繍が施されており、高級品であることがうかがえる。


 おそらく20代で、その顔は思わず見とれてしまうほどに美しく、どこか上品さを感じた。


「カリンカさん、あの女性は誰ですか?」


 俺は隣にいるカリンカさんに小声で質問した。


「あの方は聖女様だよ」


(あの人が本物の聖女様か……)


 いやいや、本物の聖女って何だ? ちょっと前にミヤがエミルのことを「聖女なの!?」って言ってたことに引っ張られてしまった。

 それよりも、聖女って本当にいるんだな。転生者だったりして。


「冒険者のみなさん、いつもありがとうございます。みなさんのおかげで私達はモンスターに怯えることなく、安心して暮らすことができるのです。そんなみなさんが少しでも安全に探索ができるよう、私にできる精一杯のことをいたします。どうか全員が無事に帰って来られますように」


 聖女様は優しい声でそう言うと、体の前で両手を合わせ目を閉じた。指の間を指でうめるようにガッチリと組み、それはまるで祈りを捧げているかのようだ。


 まるでその時間だけがとてもゆっくりと流れているようで、ギルドマスターや冒険者の全員が静かに聖女様を見守っている。


 やがて聖女様はその両手を下ろし、再び冒険者達に向けて口を開く。


「私にはこのくらいのことしかできませんが、みなさんの無事をいつでも願っています」


 そして聖女様は壇上から降り、ギルドマスターだけがそこに残る。


「さあ、ここにいる冒険者みんなで明るい未来を作っていこうじゃないか!」


 ギルドマスターの雄叫びにも似た力強い声に、この場にいる冒険者達が「おおぉーっ!」と歓声にも似た声を上げた。どうやら士気は十分に高まったようだ。


 そして勇ましく次々とダンジョン行きの馬車に乗り込む冒険者達。俺達もそこに混ざって進む。


 その途中で俺は、ギルドマスターが馬車とは逆の方向に帰って行く様子を目撃した。そして俺はこう思ったのだ。「あんたは帰るんかい!」と。

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