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「可愛い女の子から回復魔法をかけられたい!」と思い味方をかばいまくっていたら、過保護パーティーができた  作者: 猫野 ジム


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第21話 みんなそうなる

 イマイチつかみどころが無い美少女に、俺達全員が胃袋をつかまれた。


 面接した日の夜には、その美少女をパーティーメンバーに加えることが決まった。

 その決め手となったものは経験でもスキルでもなく、『ステーキが美味かったから』。きっと前代未聞の理由だろう。


「このパーティー大丈夫か?」と思われるかもしれないが、食というものは生きるうえで欠かせない。毎日美味い飯を食べれば毎日がうるおうというもの。


 なにもあの美少女をメイドにしようというわけじゃない。共同生活をするんだから、家事を分担したほうがいいよねってことだ。

 それにあの美少女は冒険者。もちろん一緒にダンジョンに潜ったりするつもりだ。



 翌日。あの美少女には、昼12時に家まで来てほしいと言ってある。

 この世界には電話のようなものや手紙はあるが、スマホ的なものは無い。もしもこの世界の人々がスマホを見れば、きっと魔法みたいに思えることだろう。


 俺達がリビングで待っていると、玄関からベルの音が鳴り響いた。それからカリンカさんが玄関へと向かい、新メンバーの美少女を連れてリビングに戻って来た。そしてまた面接の時のように座り、カリンカさんが話し始める。


「昨日に続いてわざわざ来てもらってありがとうございます」


「あの、私、合格ですかっ!?」


 またもやガタッと音を立てて椅子から立ち上がる美少女。


「あの、とりあえず落ち着いて」


 そんな彼女を見た俺は、思わずそんな言葉を漏らしていた。


「あっ……! は、はい。どうも私、ひとつのことを考えすぎるみたいで。今だって合格かどうか気になって気になって。友達からはそこが私のいいところでもあり悪いところでもあるとよく言われます」


「そうなんですね」


 俺は無難なあいづちを打ちつつ、「友達は苦労してそうですね」という言葉を飲み込んだ。

 そしてカリンカさんが軽く咳払いをしてから話し始めた。


「それでは結果をお伝えいたします。合格です! これからよろしくお願いしますね、ミヤさん」


「は、はいっ! ありがとうございます!」


 新メンバーの名前はミヤ。水色のミディアムヘアに、それと同じような瞳の色が特徴的な女の子。目鼻立ちはハッキリしており、エミルやカリンカさんと並ぶほどの美人。年齢は16歳でエミルと同い年だ。


 ちなみに俺は17歳でカリンカさんは20歳。冒険者ランクはカリンカさんがAランクで俺とエミルがEランク。ミヤがFランク。


 年齢は近いけど冒険者ランクはバラバラ。こうして改めて考えると、よくカリンカさんが同じパーティーに入ってくれたなと思う。


「それで早速で悪いけど、ギルドに行ってメンバー追加の申請をしようと思うんだ。ミヤさん、準備してもらえるかな?」


「はいっ、分かりましたっ!」


 それから各自が自己紹介をすませた後、全員でギルドに行くことに。


 銀髪ロング美少女、金髪ポニーテール美女、水色のミディアムヘア美少女。まさに異世界でしか実現することのないような組み合わせ。


 もし仮にここが日本だとしたら、その髪色だけで周囲の視線を独り占めだ。

 だけどここは異世界。赤髪や緑髪、ピンク髪に青髪、その他いろいろ。その辺にいる知らない人達とでもすぐに戦隊ヒーローができそうなほど、これはごく自然な光景。



 俺達がギルドに着くと、昼時だからなのか中はかなり混雑していた。

 まるで混雑する時間帯のファミレスのような騒がしさに、人の体温で作り出された熱気。今は夏なので正直言って長居はしたくない。


 それこそファミレスくらいの数があるエントランスの休憩用テーブル席は全て埋まり、依頼掲示板の前には背伸びをして依頼書を見てる人がいるほど。


 カリンカさんいわく、今日は日本でいうところの平日なので多いのは仕方ないとのこと。

 日曜日的な日だと同じ時間帯でもここまで多くはならないそうだ。


 当然、複数ある受付カウンターには人の列ができている。カリンカさんとエミルにはエントランスで待っていてもらい、俺とミヤの二人で並ぶことにした。


 そして待つこと15分。ようやく俺達の順番が回ってきた。余談だけど、並んでいる間はミヤがひたすら話しかけてくれたから、なんとか間を持たせることができた。……面接の時の人見知り設定はどこいった?


「お待たせいたしました。どのようなご用件でしょうか? あら? リクトさんじゃない」


「どうも。今日はパーティーメンバー増員の申請に来ました」


 カウンターの向こうには受付のカスミさんがいる。セミロングの黒髪に黒い瞳が特徴的な日本人のような美人で元冒険者。この世界だと黒髪が特徴的に見えるから不思議な感覚だ。


「それではこの申請書に記入をお願いしますね」


 そう促されミヤが名前を記入するとともに、自分の冒険者カードを提出。


「はい、受理いたしました。それにしても本当にメンバーみんな女の子ばかりなのね。しかもみんな可愛いじゃないの。もしかしてリクトさんはモテるのかなー?」


「いやいや、ほんと偶然たまたまですよ。応募してくれた人が男でも俺は大歓迎でした。応募してくれる人がいるってだけでありがたいですから」


 もちろん建前である。


 それはそうなんだけど、別に男でもいいかなって気持ちはあった。その時は友達になればいいんだから。


 学校のクラスみたいな不特定多数(?)の中だと、「さあ自分で気の合う人を見つけなさい!」と言われてるみたいで、コミュ力が高い者の勝利。だけど、冒険者パーティーだと仲良くなるしかない。


 俺にとってはそのほうが都合がいい。もちろん性格的に合わない人が来る可能性もあるが、そこは他のメンバーもいることだし、なんとかなるだろう。


 無事に申請を終えてエントランスに戻る途中、ミヤに話しかけられた。


「さっきのお姉さん、胸がすっごく大きかったね!」


 それを俺に言う意味とは? そして何と答えればいいのか。俺は少し考えた末「そうだっけ?」と返事して、そこには注目してませんでしたと遠回しに伝えた。


 ギルドをあとにした俺達はカリンカさんの提案で、ミヤの戦闘能力を見ることにした。

 訓練でもあるので、冒険者としての活動じゃないためギルドの依頼は受けていない。


 Fランクモンスターが出るという森に入り、ちょうどいいモンスターを探す。

 ダンジョンに入るためにはギルド印が押された依頼書が必要なので、今は入ることができない。


「ミヤ、気配察知スキルで私達をモンスターのところへ案内してくれるかな」


「はいっ!」


 カリンカさんの指示により、ミヤが集中し始めた。


「ここから右に20メートルほど行ったところにモンスターの気配を感じます。数は……二体」


「よし、そこまで行こう」


 確かカリンカさんも気配察知スキルを持っているはず。きっとさりげなく発動させて、他にモンスターが迫っていないか見てくれているのだろう。


 ミヤが指定した場所に行くと、確かにイノシシのようなモンスターが二体いた。

 気配察知スキル、地味なようだけど使えるのと使えないのとでは、安全性がまるで違う。冒険者には欠かせないみたいだな。


「リクトとミヤで一体ずつ相手して! 大丈夫、私が必ず守るから。それにエミルだっている」


 カリンカさんは無謀なことは言わない。だから俺は楽勝だとして、ミヤでも倒せるほどのモンスターだということだ。


 このモンスターはイノシシみたいな見た目通り、ただ突進してくるだけのワンパターンな攻撃。まさに猪突猛進といった感じ。


 俺はモンスターの相手をしながら、ミヤの戦いぶりを見た。


 右手にダガーを持っており、モンスターの動きをかわしたタイミングで一撃入れている。手数で勝負するタイプらしい。


 その動きは素早く、モンスターの突進をかわしてはいるが次第に間に合わなくなり、ついに突進をくらってしまった。


 ミヤは2・3メートルほど後ろに吹き飛ばされ、地面にズザーッと横たわる形になってしまった。

 それでもすぐさま立ち上がり、攻撃を続けた。どうやら見た目ほどの威力は無いようだ。カリンカさんはそれも見越していたのだろう。


 そしてしばらくしてモンスターが魔石になり、ミヤの勝利が確定。


「やっ、やったぁー! 私、一人で勝てましたよ! 見てましたか!?」


「ああ見てたよ。いい動きだった」


 嬉しそうなミヤとカリンカさん。その様子を見た俺はふと気が付いたのでミヤに話しかける。


「ミヤ、顔に傷ができてるぞ」


「えっ!? あっ、やっぱり……。ヒリヒリするなと思ってたんだ」


 これは一大事。女の子の顔にすり傷ができているじゃないか。さっき吹き飛ばされた時にできた傷に違いない。

 ならばこれはもう勧めるしかあるまい、エミルのヒールを。


「エミルはヒーラーだから治してもらったらどうだ?」


「エミル、いいの!?」


「もちろんですよ! 私のヒールでよければ喜んで!」


「じゃあ私おとなしくしてるから、お願いエミル」


「はいっ!」


 ミヤはその場に立ったままその時を待っている。そしてエミルがミヤの正面に立ち、両手をそれぞれミヤの両頬に当てた。軽く顔をつかんでいるような感じになっている。

 二人の身長は同じくらいだから顔の高さも同じで、なぜかいい雰囲気に。


「えっ……? ちょっ、えっ!? 近っ!」


 突然のことに驚いた様子のミヤ。その表情から察するに恥ずかしがっているようだ。


「あの、エミル、何してるの? 私、女の子同士って考えたことなくて……」


 ミヤが何について考えているのかは深く考えないことにして、二人の様子を俺は温かく見守り、カリンカさんはソワソワした様子で見守る。


「ヒール……」


 エミルがそう(つぶや)くと、エミルの両手が淡い緑色の光に包まれた。そしてそれはミヤの頬にできた傷をも包み込む。

 ゆっくり、ゆっくりとミヤにできた傷が消えていく。


「あっふぁ……」


 そしてミヤが(とろ)けた表情で「あっふぁ……」という声を漏らし——なんだって?


 眉は八の字のように少し下がり、心なしか目尻も下がってトロンとしている。口は少し開いており、おそらく閉じることを忘れてるっぽい。よだれは……出ていないけど、とにかく気持ちが良さそうだ。


 やがて緑色の光が消えると、エミルがそっとミヤから離れた。


「ミヤさんの傷、無事に治りましたー!」


 生き生きしているエミル。その場に立ったまま動こうとしないミヤ。俺とカリンカさんに続き、ミヤはエミルヒールの三人目の体験者となった。

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