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第1話 可愛い女の子からの回復魔法は効果が倍になるような気がする

 俺は普通の高校二年生。今日も今日とて下校後に部屋でゲーム三昧。RPGロールプレイングゲームをプレイ中だ。


(このヒロイン可愛いよなぁ。清楚系で気立てが良くて、ハッキリ言ってタイプだ)


 そして俺には密かなこだわりがある。それは『回復は女の子キャラクターがすること』。そのため回復役の女の子のMP(マジックポイント)だけがいつも極端に減っている。


 うん、まあ実際にあるとしても呪文唱えて終わりなんだろうけど。


 現実に置き換えてみるとどうだろう。自分がケガをしたとして、手当てをしてくれた保健室の先生が美人なお姉さんだとしたら? 応急処置をしてくれたのが学校で一番可愛いといわれてる女の子だったら? 男としては嬉しいはず。


(コンビニ行くか)


 明日は休み。難関といわれるダンジョンを今から徹夜で攻略するつもりだ。俺はその準備としてスナック菓子とジュースを買いに行くことにした。そんな気まぐれがまさかこんなことになろうとは……。




 おそらく俺は今、異世界転生しようとしている。本来ならあまりに突拍子もない話。でも俺は信じる。根拠はこれだ、『何も無い真っ白な空間』。


 よってここは異世界。ラノベやアニメで勉強しておいて良かった。学校の勉強はやる気出ないのに。


 そして俺は今、転生ものアニメに出てくるような女神様から説明を受けている。金髪ロングのセクシーなお姉さんだ。

 俺が転生した理由は、コンビニに行く途中に通り魔に襲われたから。


 思い出したぞ。人通りがまばらな交差点を若い女性が歩いていた。そしてその後ろから走って女性に近づく怪しい男。その手には包丁が握られていた。普通なら刃がむき出しの包丁を外で持ち歩くわけがない。


 直感だった。男は女性を襲おうとしている。俺は全力で近づき、両手を前に突き出した。なぜそうしたのかは分からない。きっと理屈じゃないのだろう。女性か男、どちらかを突き飛ばせれば悲劇を止められるはずだ、と。


 なんとか間に合った俺が突き飛ばせたのは女性のほうだった。当然、女性は転んでしまう。でもともあれ、女性が襲われることは避けられたんだ。

 その代わりといってはなんだが、襲われたのは俺だった。


「そうですか、俺は通り魔に……。そうだ! あの女性はどうなりましたか!?」


「心配いりません。あなたが突き飛ばした時にできた、軽いかすり傷だけで済みました。それに犯人は逮捕されました。なので気にすることはありませんよ。あなたがいなければ、あの女性が襲われていたのですから」


 俺の直感は正しかったのだと証明された。本当によかった。それはもちろんいいことだけど、でもなぁ、俺は別に転生したいとは思ってなかったんだよな。


「突然ですが、あなたに別世界で生きる権利を授けましょう」


「えっ、本当に!?」


「はい。あなたの行動は称賛されるべきことです。それで、その……モンスターがいる異世界でも大丈夫ですか? その代わり魔法もありますよっ!」


 両手を体の前でグッ! と握って、異世界は楽しいとこアピールをする女神様。女神様に対してこんなこと思ったらいけないかもしれないけど、なんだか可愛い。でもそれとこれとは別。


「できれば日本がいいんですけど……」


「そ、そうよね。でもごめんなさい。同じ世界には転生できないの」


 ラノベのようにはいかないか。うーん、どうしよう。モンスターがいるのかー。でも行かなければ昇天待ったなしだ。俺はもう少し()()人生を過ごしたい。


「分かりました。異世界でも大丈夫なのでお願いします。それで一つ聞きたいんですけど、チート能力とかはもらえるんでしょうか?」


「チート? が何かは分からないけど、常人には無いスキルを授けることなら今すぐにでもできま——」


「ください!」


「えっ? ちょっ、早っ! どんなスキルかは聞かなくていいの?」


「教えてください!」


「えっと、今から授けるスキルは【ダメージ調整】といって、どんな攻撃からでも受けるダメージ量を自分で調整することができます」


「自分で? それって仮にダメージ量を数値で表すとして、1にも10000にもできるってことですか?」


「はい。0にすることだってできますよ!」


「0って……。それって実質無敵じゃないですか!?」


「そうなりますね!」


 まさしくチートスキル。少なくとも戦いの中で命を落とすことは無さそうだ。……って、冒険者として生きること前提のスキルじゃね?


「あの、異世界に冒険者という職業ってあったりします?」


「ありますよ」


(やっぱりかぁ……)


 でもいいか。死なないなら冒険者をやってみるのも悪くない。役割はタンク(盾役)一択になるだろうけど。


(……待てよ?)


 魔法がある世界ならきっと回復魔法もあるはず。もしかして、可愛い女の子に回復魔法をかけてもらう夢が叶うのか!?


 いやでもなぁ、傷を負わないと回復はできないだろうから、ダメージゼロじゃそんな機会は無いのか……。


(……いや、あるじゃないか!)


 そうだ、ダメージ調整のスキルでいい感じに痛そうな傷になるようにすれば、回復魔法をかけてもらえるのでは!?




 そして俺は異世界で生きることになった。転生といっても赤ちゃんからじゃなく、実年齢からのスタートで容姿も同じだ。要は日本人。異世界だと浮かないだろうか?

 まあ服装はライトアーマー(軽鎧)で冒険者っぽいから、あまり心配ないかな。


 異世界の季節は春で、降り立ったのはどこかの森の中。大丈夫、慌てない。ラノベとアニメで予習済みだ。そろそろ女の子の悲鳴が聞こえてくるはず。


 ところがそんなことはなく、あっさりと街が見えてきた。森って静かなんですね……。

 スタート地点が森の中だった理由は、人目を避けるためかな? 森にモンスターはいなかったし、女神様が考えてくれたのだろう。


 俺が街に向かって歩いていると、人がいるのが見えた。でも何やら騒がしい。

 近づいてみると、冒険者のような格好をした四人組が揉めてるっぽい。周りには他に誰もおらず、止める人はいないようだ。


「エミル! 今この瞬間をもってお前をパーティーから除名する!」


 白くて清潔感のあるローブを身にまとった可愛い女の子が、立派な装飾が施された青い鎧を身につけている金髪の若い男から、怒鳴られていた。


(女の子が追放されそうになってる?)


「お前はヒーラーのくせにいつまで経っても初級魔法しか使えないじゃないか! お前がどうしてもって言うからパーティーに入れてやったんだぞ!」


 一方的に怒鳴られて、エミルと呼ばれた女の子はずっと下を向いている。


(どうしよう、いきなり追放場面に出くわしてしまった……)


 俺にはそれよりも気になることがあった。怒鳴ってる男によると、女の子はヒーラーらしい。ということは、もし仲間にできたら……?


(俺の異世界生活、勝利の予感しかしない!)

読んでくださりありがとうございます!


しばらくの間、一日三話更新予定です。よろしくお願いします!

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