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あなたの帰る場所はここにあるから

作者: 柊 雨雪

 これは、私が実際に体験した出来事をモチーフに執筆したエッセイのようなものです。


 皆さんは自分はどんな人なのか、深く考えたことはありますか?初めて会う人に自己紹介する時、「自分はこれが好きで」、とか「自分はこういう性格で」と紹介することが一般的なのかなと思います。

でもよくよく考えると、その時によって自分の好きなものや価値観は簡単に変わってしまうし誰にでも理解してもらえるものではないでしょう。少しの「違い」で人は恐怖を感じ、時には自分を守り時には人を傷つけてしまうものです。

 そんなたくさんの価値観が転がっている生活の中で誰しもきっと生きづらさを感じていると思います。私もそうです。皆色んなことで悩んで、足掻いて生きています。私自身、上手くいかない事だらけで「もうやめてしまいたい」「いなくなりたい」と感じることがあります。


 こんな時、皆さんはどうしていますか?家族や友人に相談したりすることもあるでしょう。でもこれが簡単にできることではいと私は思います。強い信頼があって、それでいて自分をさらけ出す勇気がないとできないんです。だから一人で抱え込んでしまって、何も手につかなくなったり今まで楽しかったことが楽しくないように感じたり、不安で寝られない日があったりすると思います。これを読んでくださっている今、心当たりがあればそれはきっと貴方の本心が助けを求めています。これは私個人の考えではありますが、「自分の事は自分が一番分かっている」というのは限られた部分だけだと思います。本当に辛いとき、目の前が暗く先の事なんて考えられないくらいどうしようもなくなってしまう、私も体験しました。


 だから私はこうして文章で、寄り添いたいと思い今も自身の言葉を紡いでいます。私は文章でしか寄り添えないのでなんの足しにもならないかもしれませんが、ここが辛い、逃げ出したくなった時の逃げ場、「帰るところ」になったら幸いです。


 さて、前置きが長くなってしまいましたが本文に入ろうと思います。自分語りですがお付き合いください。


 私は昔から、俗にいう「真面目」な人間でした。学生のころから常に完璧を求め、親の理想の娘になろうと意識をしなくても自分の行動がそうなっていました。ですが高校生になったあたりから、「普通」という言葉にやけに敏感になってしまって、「果たして自分は周りから見たときに普通なんだろうか」と思い始めました。凄く周りの目を気にして、皆がこうしてるから私もこうしないといけない。そんな風に考え始めたんです。皆さんもこんな経験があるかもしれません。でもこれが自分の意思を消してしまっていることに当時の私は気づくことができませんでした。誰かが始めたその普通が、周りを巻き込み皆を変えてしまっている、そう今は単純に思います。当時はそういった周りから見た「普通」ではない人を見るととても目立ったように見えたし、周りと違うことに何か違和感を感じました。

 ですがそれはきっと違います。こうやって人の群れの中で、何にもとらわれず自分らしくいられる人ほどとても心が強く自分に正直なんです。大人になった今、そうできていれば何か変わっただろうなと感じています。だから今、「自分は周りと違っている」と恐怖を覚えたり苦しんでいるのなら、私が伝えます。「大丈夫」です。そのままでいいんです。誰かのために普通になる必要なんてありませんし、いい人でいなきゃいけないなんてことはありません。今は貴方を素直にまっすぐに受け止めてくれる人が傍に居なかったとしてもどこかにきっと居ます。お互いに探しあっているんだと思います。


 こんな風に思えるようになったのはある出来事がきっかけでした。

 私は社会人になって、仕事を始め真面目に働き自立しようと必死でした。でも忙しさのあまり自分の心や体が助けを求めていることに気づけませんでした。眠れないようになって、気分もだんだん落ち込むようになり仕事が手につかなくなってきた辺りで会社の人から病院に行くことを勧められたのです。結果としては不眠症だったり精神疾患を患ってしまいました。仕事を休職、のちに退職し何もない状態の日々が始まりました。もうだめだ、死んでしまいたいと毎日思いましたし、よくないことばかり考えるようになったんです。

当時私は実家に住んでいて、大好きだった家族のお墓が歩いて行ける範囲の離れたところにありました。

辛くなるとよくお墓参りに行き、そこにいないと分かりつつも話しかけていました。「もう疲れた、そっちに行きたいな、だめかな」何度も問いかけたし、何度も泣きました。でも返事は当たり前に帰っては来ませんでした。そんな日常を繰り返しては、何とか生きようとエッセイ本を中心に本を集め、読書やゲーム、映画鑑賞に没頭しました。そんな時ふと、「私はこれが好きだったんだ」とか「本当はこうしたかったんだ」と素直に思いました。今目の前にある仕事という大きな壁から少し離れたとたん、自分の人間性であったり好きだったものを思い出すことができたんです。

 それでも心というものは本当に脆く、今までの人生で一番辛いときが私には訪れました。普段は夜家を抜け出す、なんて事はしなかったけれど辛さのあまり夜中に一人で泣きながら逃げ出しました。「なんでこんな思いをしなくちゃいけないんだ」「私の居場所なんかもうない」「生きてる意味なんてないんだ」ぐちゃぐちゃでどうしようもありませんでした。でも自然とどうせ最後なんだから、と思いまた私はお墓へと向かいました。泣きながらも真っ暗の中たどり着き、心から出た一言目は「助けて」でした。返事が返ってくることなんてないのは承知です。でも最後に私に寄り添ってくれると思ったところがそこしかありませんでした。自分でも何分、何時間そこにいたのかは分かりませんが、今まで我慢してきたこと、ほんとはこうありたかったとかたくさん話したとたん、「家に帰ろう」そう思いました。泣き疲れて歩く速さなんてほんとゆっくりでしたが私には帰り道がなんだか行きよりも短いように感じました。

 ずっと下を向いて歩いていたから外の電柱の明るさなんて気にしなかったしずっと暗いままだったんです。でも付けていないはずの家の玄関の外灯だけが、私を照らしていました。驚きのあまり涙は引っ込んだしなんで付けてないのについてるんだろうって疑問でした。でもすぐにこう思ったんです。きっと亡くなったおじいちゃんやおばあちゃんが、「あなたの帰る場所はここにあるんだよ」と私が迷わないように付けてくれたんだと思いました。こんな話をしても信じてもらえるとは到底思えませんし、家族にすら話していませんが、玄関を開け、閉めるときにはもう灯りは消えていました。本当にそうなのかもしれないと実感し、寝ている家族を起こすことのないようにまた玄関で私は泣いていました。


 こんな体験があり、今私はまだ生きていようと思い今日も必死に生きています。あれからもちろん上手くいかない事だらけですが、自分はこんな人間なんだと大きな壁から離れて気づき、自分に合った仕事、そして働く時間を見つけました。無理に頑張って長時間働かなくたっていいんです。週に何日休もうが、働いていなかろうが生きていることが、そんな単純なことが素晴らしんです。居場所がないと思うなら、私が書くこの文章が、これから書いていく物語が貴方の居場所になります。泣きたいときは泣いていいんだよと、前を、将来の事を見つめるのがしんどいなら一緒に下を向きます。拙い言葉を紡ぎ、ほんの小さな居場所にしか私はなることはできませんが、一人の人間として応援させてください。私も一緒に頑張ります。


 疲れたときは休んでいいです、これまで頑張った自分を褒めて、甘やかして何かご褒美を買ったり、好きなことに時間を割いてみませんか。大きな壁は今破らなくても大丈夫です。一人では無理でもきっと一緒に歩んでくれる家族や友人、仲間がいます。


 私のこの文章が貴方の居場所になれば私はそれだけで幸せです。

そして最後に、「あなたの居場所は、ここにあります」


 読んでくださり、誠にありがとうございました。                 柊 雨雪

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― 新着の感想 ―
[良い点] 自分に優しく、自分の場所を見つけ出せて、本当に良かったです! [一言] 本当の辛さ、痛さ、苦しみは本人にだけしかわかりませんね。でも命を授けられたってすごいことだと思います。今、こうして執…
[良い点] 真面目に頑張って頑張って、どん底を見て“知ってるから”こそ書ける文章ですね! 私には一緒に歩んでくれる家族も友人もいなかったから羨ましいですぞー! 私は「普通」って言葉が大嫌い! まるで…
[良い点] 本当に感動しました。こんなにも素晴らしいエッセイに出逢えて、私は嬉しいです。 自分は今、その普通を嫌うような時期を過ごしています。自分は普通が嫌で、他の人とは違った視点で考えてみたいと思っ…
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