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ツクモダン  作者: SF42
前編
7/18

至って冷静

【ツクモダン】



「天野!頑張れよ!受かったら寿司奢ってやんよ。」


「寿司⁈マジで⁈行きたい。約束な。」


「おうよ!」


咲卦穂と梶田は試験会場である神鎮隊本部へやってきた。


咲卦穂は梶田との挨拶を済ませ、中へ入る。



周りを見渡せば大人ばかり。

咲卦穂は不安を感じつつも、試験を受ける部屋へと向かった。





試験まで後10分。


咲卦穂は自分の番号の席に座る。



まずい。冷や汗が止まらない。


咲卦穂はカバンからペンを取り出す。

その手は今まで経験したことがないほど震えていた。

咲卦穂にとって本格的な試験は初なのだ。



残り5分…




4分…




3分…




2分…




1分…






「始め!」



ペラッ  ペラッ  ペラッ



一斉に紙を捲る音がする。



大問1は小問集合。

ツクモに関する法や事件について問われる。


大問2は神鎮師の基本技能などについて。


そして最も難しいのは大問3。

架空の状況をどう対処すべきかを問われる。



咲卦穂は大問2までは好調だった。


しかし、大問3に差し掛かってから

一気に詰まってしまった。



咲卦穂は考える。

考える。考える。ひたすらに考える。



「残り5分。」



まずい。


最後の問題がまだ解けていない。




あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!










よし、解き終わった…


残り時間は?



後5分。



ん?



さっき後5分じゃ…



咲卦穂は焦って試験監督の方を見る。



試験監督は歩行中の姿勢で硬直していた。



おかしい。



周りを見渡すと、皆同じように硬直していた。



「え?」



咲卦穂以外の時間が止まっている?




「気がついたようだね。」



誰かが咲卦穂の背後にやってきた。



「…誰?」



「ん?僕かい?僕はスタシーク。

壁掛け時計のツクモさ。」



ふと見ると、先ほどまであった壁掛け時計がなくなっていた。



「ツクモ…時間を止めたの⁈」


「あぁ。僕の力さ。君以外の全ての時間を止めさせてもらったよ。」


「なんで私は動いていいのさ。」


「僕は君を殺さなきゃならないんだけど。

時間を止めて殺すんじゃつまらないだろう?

君の力を見せて貰おうと思ってね。」



「んじゃ、私が勝ったら時間元に戻せよ?」


「あぁ。もちろんさ。勝つのは僕だけどね。」



咲卦穂はウニ頭に変身する。


咲卦穂以外の全ての時間が止まっているなら、ウニ頭を人に見られることはない。



「いいね…」



スタシークは時計の針のような剣を取り出す。



「てりゃぁぁぁ!!」



ガキン!



槍と剣とが鍔迫り合う。(鍔はないが。)



咲卦穂は間髪入れず足を槍に変化させ、

スタシークに蹴りを喰らわす。



「ウッ…やるねぇ。さすが天野咲卦穂…」



「なぜ私の名前がツクモに知れ渡っているの?最近出会うツクモは皆私の名前を知ってる。」



「うーん…言えないよ。」



咲卦穂はスタシークを槍で突いた。


しかし体が先ほどより硬くなっていた。



「…僕はもう君の攻撃の威力を大体把握したよ。」



鍔迫り合いと蹴りだけで?



「…うざいな。私はお前が嫌いだ。」



「へぇ。」



咲卦穂は蹴りや突き、斬撃などを織り交ぜて

攻撃を仕掛けていく。


この1ヶ月間の経験が生きているのか、

スタシークに何度も攻撃が当たる。


しかし、スタシークの体は硬く、それほどのダメージを与えられていない。



スタシークも剣で咲卦穂に攻撃を仕掛ける。


咲卦穂は頭の槍などを駆使して防御する。



戦いは膠着状態だ。



「…思ってたより強いな…

もうちょっと本気で行かないとね!」


「来いよ時計野郎!」



咲卦穂はさらに攻撃を激化させる。


突き、蹴り、頭突き。



スタシークの動きが異様に速い。


攻撃するも、瞬間移動のように避けられてしまう。




蹴る。避けられる。反撃される。防ぐ。


こんな調子でまだ膠着状態。




「…あんたさ。私を殺す気ある?

なんか…弱い。いや、力を感じられない。」


スタシークは剣をしまい、手を叩く。


「よくわかったね。僕は君をこの手で殺すつもりなんてさらさらない。この止まった時間では君の体だけが歳をとる。君が散るのを待つだけさ。」


「散るって何。ムカつくな。」


「…じゃあ僕はもう君の攻撃を避けることに徹するよ。僕本当は女の子を傷つけるの嫌いなんだよね。」


「傷つけられてんのはどっちだ?

私攻撃されてないし。」


咲卦穂は負けず嫌いだ。


舐められたからいじめられた。


もう舐められたくはない。



「じゃあ私はお前を殺す!」


「怖い怖い。ま、好きにしなよ。」




右手突き。

左サイドに瞬間移動される。


すかさず左蹴り。

上方に瞬間移動される。



全てが読まれているように避けられる。



咲卦穂は怒りを募らせる。



「クソッ…さっさと死ねよ!」


「口悪いと可愛くないよ。」


「ウゼェんだよ!」



咲卦穂は冷静な判断を欠き始めた。



ひたすらスタシークを殴る蹴るするが、

先程よりずっと単調になった咲卦穂の攻撃などスタシークにとって避けることなど造作もなかった。




「あぁぁぁぁぁぁ!!!!

イライラする!イライラする!イライラする!イライラするぅぅ!!!」



咲卦穂は腕の槍で地面を思いっきり刺した。







パキン!







「え…?」


腕の槍が折れた。


今まで一度も折れたことはなかったのに。




怒りで地面を突く腕に力が入りすぎて、

異常な負荷がかかったことで折れたのだ。





「……落ち着け…どうにかするんだ。」



咲卦穂は槍が折れたことで、怒っても自身を追い詰めるだけだと感じた。



考えろ。考えろ…



もう一度、スタシークの動きを観察することにした。




「…頭冷えたわ。フー…絶対当てる。」


「へぇ…頑張れ。」



咲卦穂は右で突くと見せかけて

左で突くなどのフェイントを仕掛ける。



しかし、依然避けられる。



咲卦穂は攻撃を仕掛けて、相手を観察する。



とにかく冷静に。



「…なんか…様子伺ってる?

アップ感がすごいよ。」



「…バレたか。

でも安心しなよ。」



「安心?」



「次は私のターンだから。」

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