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ツクモダン  作者: SF42
後編
17/18

夢の続きを見せて。

【ツクモダン】



「うぉぁぁぁあぁぁぁぁぁあ!!!」


戦地と化した柏樹町に咲卦穂の叫びが響き渡る。



「天野咲卦穂…目覚めやがった…」


緋色は咲卦穂を見つけられず、苛立っていたところだった。

咲卦穂が気絶しているのは絶好のチャンスだったのに。


梶田はもう動けなかった。

体中が言うことを聞かないのだ。




「緋色!決着つけるぞ!!!」


咲卦穂の叫び声は緋色に恐怖を与えた。

今までの咲卦穂とは何かが違う。


「望むとこ…」


緋色が言いかけたときには咲卦穂はもう、

緋色の腹を槍で貫いていた。


「ガフッ…は?」


「お前、もう、諦めな。」


咲卦穂はもう、

前のようにウニ頭になっていない。


咲卦穂は地面に手を当て、力を込める。


すると、地面から大量の槍が生えてきた。


それらの槍は青柳と戦っているAR、

虎城と戦っているゴーグルの男、

そしてツクモヅクリを下から貫いた。



「え⁈」


「何⁉︎」


ARとゴーグルの男は戦闘中にも関わらず

驚いて、少しの間動けなかった。


AR、ゴーグルの男は2人とも、

スマートフォンのツクモだ。


人間と密接な関係にあるスマートフォンを

装着する特殊な形態。


彼らはある程度以下の衝撃や攻撃を無効化する能力を持っていた。

だから、青柳の攻撃も、虎城の攻撃も彼らにダメージを与えることはできなかった。


しかし、咲卦穂の槍は違った。


大量に出現したことによる質量と、

槍という、細さから生まれる点の圧力という

2つの要素により、ARたちの能力で防ぎ切れるダメージ量を超過したのだ。


そして、青柳と虎城は彼らが動かなくなった一瞬の隙を見逃さなかった。

渾身の一撃を喰らわせ、ARたちの変身を解除した。


そして、スマートフォンを破壊。





ツクモヅクリにも大量の槍が刺さるも、

倒れる気配はない。


「おい!ツクモヅクリ!」


咲卦穂はツクモヅクリの目の前に立つ。


「よくも私たちの街を滅茶苦茶にしてくれたな!報いは受けて!」


咲卦穂は全身に力を溜める。


「私は槍のツクモ、アマノサカホ!

同じく槍のツクモのムジンに出来ることは

私はにも出来る!」


咲卦穂の体から青い煙が上がる。

この煙は、巨大なウニ頭のツクモに変身した。

大きさは、ツクモヅクリと大差ない。


ムジンがやっていた、自身を本体とする二式を作り出すという行為を咲卦穂はやってのけた。



「咲卦穂パイセーン!!」


アカだ。


「オレ、柏樹地域のツクモたちに呼びかけたっす。そしたら…」


アカの背後から複数のツクモが現れる。

その中で、黒い和風の服を着たツクモが

大声で咲卦穂に呼びかけ始めた。


「こんにちわ!アマノサカホさん。

私は、ツクモの保護活動を行なっている、

六法全書のツクモ、ラウです!

是非貴方に加勢させてください!」


咲卦穂はラウ以外のツクモもよく見てみる。


爆弾のツクモ、絵のツクモ、傘のツクモ、

スピーカーのツクモ…


重大案件のツクモたちと一致する。


「私たちは多くの人々を殺しました!

罪を償わねばなりません!」


ラウは叫ぶ。


「…お願いします。ツクモヅクリが作り出したツクモたちを倒してください!」


咲卦穂はラウたちに言う。


ラウたちは黙って動き始めた。


咲卦穂は周りを見渡す。


ツクモヅクリのせいでもう、何もない。


咲卦穂は遠慮なく暴れることにした。

ツクモヅクリを倒すために手段は選ばない。



『仮陰槍』



空中に大量の槍が生成される。



「槍の雨とか一度は想像したんじゃないか?」


咲卦穂の言う通り、雨のように槍が降る。


辺りのツクモやツクモヅクリに突き刺さる。



ツクモヅクリは咲卦穂を避けるように行動し始めた。



「逃げんなよ!」



咲卦穂の背後の咲卦穂の二式、

巨大な槍のツクモが槍を振るう。


その槍はツクモヅクリを斬り払う。


ものすごい衝撃を伴って。


瓦礫や砂埃が舞う。




ツクモヅクリは一度は形が崩れるも、

また、瓦礫が集まり、形が出来てしまう。













景色はまるで地獄のようだ。


建物は全部壊れたし、

足元からは大量の槍、空からも大量の槍、

ウニのような頭の巨人とタコのような瓦礫の塊がぶつかりあっている。


梶田はその様子をただ見ていることしかできない。


いや、見ているだけではダメだ。

梶田はそう思い、周りのツクモを倒す。



ウニとタコの争いが頭上で起こっている。

そのため、瓦礫が常に雨のように降り注ぐ。

槍もだ。


足場も頭上も何もかも、最悪のコンディションだと言える。


大量にいた銃のツクモは咲卦穂の攻撃によってほとんど破壊された。


ツクモヅクリを咲卦穂が食い止めてるお陰で

被害もここ以外それほど拡大していない。


咲卦穂は味方。


そう思っていたはずなのに。


梶田は青柳に報告してしまった。


あそこで秘密にしておくことも出来た。


そうしていればどうなっただろう。


この騒動がひと段落ついたら、天野に聞こう。梶田のことを恨んでいるのか。










ツクモヅクリの体には大量の槍が突き刺さっている。

体を構成していた瓦礫はもはや粉と化し、

ツクモヅクリは砂の塊のようだ。


しかし、ここで咲卦穂は冷静になった。


ツクモヅクリはダメージを負っているはずなのに、全く消える気配がないことに気がついたのだ。


九十九談自体がコアなのだろうか。


だとしたら、そこをピンポイントで狙うしか…


いや、それは現実的ではない。


コアを炙り出す必要がある。


どうすれば…


咲卦穂は頭の中で連想ゲームを始めた。


炙ると言ったらコンロ。

コンロと言ったら鍋。

鍋と言ったら茹でる。

茹でると言ったら調理。

調理と言ったら包丁。

包丁と言ったら切る。


切る。


銀杏切り

短冊切り

輪切り

みじん切り。


みじん切り。


みじん切りと言ったらミキサー。


ミキサーと言ったら刃が回る。



咲卦穂は連想ゲームを終え、周りを見回す。


青柳先輩、虎城先輩、助けてくれているツクモたち、そして梶田。



「聞こえるか!みんな!」


咲卦穂は大声で呼びかける。


「今すぐ離れて!」




咲卦穂の呼びかけが届いたのか、

あたりに味方は誰もいなくなった。



「ツクモヅクリ!九十九談を出せ!」


咲卦穂がそう叫ぶと、

足元の槍、空から降っていた槍たちが集まり、竜巻のようになった。


「ミキサーなら、中のもの全部消えるよな!

ズタズタ。終わらせよう!」



咲卦穂の二式も槍を振り回して、槍の竜巻の中をさらに攻撃する。





ツクモヅクリは再生を繰り返すも、

大量の槍の前には無力だった。













「おい。天野。起きろ。」


青柳が咲卦穂に声をかける。


「あ…」


咲卦穂は気を失ったのか、眠っていたのか。

病室で目を覚ました。


「よかった…咲卦穂ちゃん。

なんか…すごいことになってたから…」


虎城が言う。


「…梶田は?」


咲卦穂は尋ねる。


「状況を本部に伝えに行ってる。

…天野。すまなかった。」


「はい…?」


「お前の話を聞きもしなかった。

結果としては、お前がいなかったら

緋色の計画を止められなかったし、

そもそもツクモヅクリを倒せなかった。」


「…緋色は?」


「緋色は行方不明だ。逃げたか、跡形もなく消えたか…」


不安は残るが、ひとまず終わった…?


「…梶田に会いに行きます。」


咲卦穂は立ちあがろうとするが、

体に力が入らなかった。


「咲卦穂ちゃん。考えてごらん。

鯨の骨、槍、青柳、ツクモヅクリと連続で戦ったんだよ。疲れが半端じゃないよ。」


青柳の携帯に電話が来た。


「…梶田が呼んでる。

羽鳥さんは俺らにも用があるみたいだ。」


「じゃあ、咲卦穂ちゃん。お大事にね。」



2人は帰って行った。




「パイセン。調子どうすか?」


アカだ。


「…まぁまぁかな。」


「流石っす。話したいことも沢山あるんすけど…俺行かなきゃいけないんす。」


「え?」


アカは気まずそうな顔をする。


「実は、俺、死にかけてて…

今、首の皮一枚繋がってるだけなんす。」


「なんで…?」


「パイセンの、気持ちが吹っ切れたんすよ。

だから、いじめられたときの負の感情から生まれた俺たちは消える。というか、消えなきゃならない。」


「いやいや、そんな…」


「ていうか、消えさせてください。

俺たちの意思でもあるんす。

咲卦穂パイセンの苦痛を思い出させないためにも。」


「…なんでよ。」


「咲卦穂パイセン!」


エゾ、ラッパ、フクロ、ガンガゼが現れた。


「「「「お疲れ様でした!!」」」」





「勝手すぎるよ…」


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