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ツクモダン  作者: SF42
後編
14/18

鯨 天使 2本の槍

【ツクモダン】



「天野。戻ったか。」


青柳が言う。


「はい。ご迷惑をおかけしました。」


咲卦穂は緋色の言葉が心配だ。

咲卦穂が復帰した以上何が起きるか。


「早速仕事だが、今回は博物館だそうだ。

厄介だぞ。」


「展示品のどれがツクモになってもおかしくないからね。咲卦穂ちゃんは行くことある?」


「…いえ。ほぼないです。」


博物館。

柏樹にある博物館はかなり規模が大きく、

世界的な展示品も多く存在する。


「おし!天野!行くぞ!」


「今回は応援として他の署からも隊員に来てもらう。どうやらツクモは1体じゃないらしい。」












柏樹博物館



かなり広い。


「…クジラの骨格標本はどこだ。」


「え?」


青柳の発言に梶田が驚く。


「いつも天井にぶら下がっているだろう。」


「たしかに…」



「…皆さん!下!影が!」


咲卦穂が叫ぶ。


床に突然クジラ型の影が浮かぶ。


「…ツクモになったか!」



ゴゴゴゴゴゴゴゴ…



ばぁぁぁぁぁん!



クジラが潮を吹いた。


大量の水が博物館の天井を破壊した。



「また水…トライガ!BITE!」


トライガは影に向かって噛みつこうとするが、影は見えてもそこは地面なので噛み付くことができない。


「恐らく、地面に潜っているから俺たちは干渉できないのだろう。」


「じゃあどうする…」




ガラガラガラガラガラガラ!!



ガシン!




急に巨大なクレーンのアームが飛び出して来た。


「…応援が来たようだな。」




「こんにちは!

金寿署の津亀つがめです!

応援に来ました!」


金寿きじゅは柏樹の隣町。



「あのアームはなんですか?」


咲卦穂が青柳に言う。


「あれはクレーンのツクモ。

何でも掴めるそうだ。」



クレーンのアームは地面にめり込み、

クジラを掴み取った。



クジラの骨格標本のツクモであるため、

骨だけである。


「天野。あいつどこから潮吹いたんだ?」


「知らない。」



「ガント!ぶん回せ!」


津亀が叫ぶ。

ガントというのはクレーンのツクモの名前。


ガントはクジラを振り回し、遠心力を利用して勢いよく地面に叩きつけようとする。



「退避!」



咲卦穂たちは慌てて離れる。





ガシャァァァン!





『仮陰剣!』


『仮陰龍』


仮陰虎挟かりのかげのこきょう!』


『仮陰槍!』



梶田は剣を、青柳は龍を、虎城はトラバサミを、咲卦穂は槍を出現させ、地面に叩きつけられたクジラに総攻撃を仕掛ける。



ドガドガドガドガ!



クジラの骨は硬く、なかなか壊れない。



「一点を狙うぞ!頭蓋骨の真ん中!」



ドン!



全員の攻撃が一気にクジラの頭蓋骨の中心部分に命中する。



ガラァァァァァン!



クジラは砕け、青い煙が上がった。






「…先輩!上!空に!」


咲卦穂が叫ぶ。



「Triumph all ye cherubim!Sing with us ye seraphim!Heaven and earthresound the hymn!Salve, salve, salve, Regina!」



大量の天使が歌いながら飛んでいる。



「気味が悪いな。」



天使たちはこちらへ矢を放つ。



「退避!」



4人は瓦礫の裏に隠れる。



「ガント!薙ぎ払え!」



クレーンのツクモは矢を浴びつつも、

アームを振り回して天使の像のツクモと戦う。



「距離が遠すぎて俺たちではどうにもできそうにない。天野!梶田!お前たちは他にツクモがいないか見てこい。虎城は俺と降りて来た天使をやるぞ。」


「…私の方が先輩だっつの。

命令すんなし!」














日本館



「…ツクモが居そうだぜ…」


「そう?まぁ…どうだろ。」



「そこの少年少女よ。止まるが良い。」



「誰だ!」


梶田がそう言いながら周りを見渡すと、

真後ろに甲冑のようなツクモがいた。


「…ツクモだな!」


「いかにも。私は緋色様に命をいただいた九十九体目のツクモ、ムジンだ。」


そう言うと、ムジンの甲冑の腕が通る部分から、槍が生えて来た。


無塵槍むじんそう

それが私のかつての名…」


「は⁈マジで⁈」


梶田は驚く。


「梶田知ってるの?」


「あぁ。昔柏樹近辺を支配してた

九十九つくも よろずっていう武将が使ってた槍だよ!」


「よろしい。間違いはない。

九十九様亡き今、私が九十九様の無念を晴らすのだ!」



「それって…?」



「…天下統一に他ならぬ!」



そう言ってムジンは梶田に急接近する。


「危ない!」


咲卦穂は黒い槍を出して防ぐ。



「女に護られるとはみっともない男だ。」



「…天野、こいつ倒すの手伝ってくれないか?」


「いいよ。2人で倒そ。」









「Our life, our sweetnesshere below, O Maria!Our hope in sorrowand in woe, O Maria!」



天使たちの数はとても多く、まだ半分も倒しきっていない。



「…すばしっこいな…青柳、龍出せない?」


「そうだな。その方が早そうだ。」


青柳は黒い龍を出す。


「龍!適当に暴れろ!」



ギヤワォォォォ!



龍はその巨大な体をくねらせて、

天使を次々とはたき落とす。


「私の出番!」


落ちて来た天使を音を頼りに虎城は蹴り壊して行く。


空にクレーンのアームと天使と龍が舞うその景色と、これから起こる一連の出来事は

HM(Hakuju Museum)事件として

世界各国に知れ渡ることとなる。










「…強い…」


ムジンは梶田と咲卦穂を一方的に追い詰めて行く。


咲卦穂は梶田がいるため、槍を生やすわけにもいかず、かなり苦戦している。


ではどうする。

槍を生やせば身体能力が上がる。

しかし、今槍を生やすのはよろしくない。



「…お前は知らぬのか。天野咲卦穂の正体を。」


「何のことだ!」


ムジンは緋色に作られたツクモ。

咲卦穂の正体を知っていてもおかしくない。


「天野咲卦穂は槍のツクモだ!私と同じ!」


余計なことを言いやがる。

咲卦穂は憤る。


「ツクモ!何を言っている?

私はツクモじゃない!人間!」


「ごまかしが下手だ。おい少年よ。

こいつはツクモなのだよ。」



「天野…本当なのか?」


梶田は少し眉間に皺を寄せて言う。


「…」


「なんか答えろよ。はっきりさせてくれ。」


「…いいよ。気にしないで、まずはツクモを倒そう。」


「なんで否定しないんだよ。人間だよな?」



『仮陰槍』



「…そういや天野、槍なんてどこで覚えた?

そんな形の槍なんて署に置いてない…」


「どうだっていいから早く戦うよ!

槍!貫け!」



咲卦穂の放った槍は簡単にムジンに弾かれる。



「天野…」





咲卦穂は頭から槍を生やしてウニのようになった。




「見よ少年。これが天野咲卦穂だ。」


「天…野?」



咲卦穂はムジンへ斬撃を放つ。


ムジンはそれを弾くが、その隙を咲卦穂に攻撃された。


ムジンは咲卦穂に一刀両断される。


咲卦穂は手を休めることなく、ムジンの頭を掴み、空中に放り投げて連続で突き、ズタズタにした。



「天野…」



咲卦穂は梶田の方を向く。


ウニ頭の咲卦穂の表情は誰も窺い知ることはできない。



「天野お前は…人間の味方だよな?」



梶田は咲卦穂に近づく。



「…来ないで。」



咲卦穂はウニ頭のまま日本館を離れた。



梶田はただその場に立ち尽くしていた。









「梶田!天野!ツクモはいたか?」


「電話繋がってないよ。」


青柳と虎城は天使を全部撃ち落とし、梶田と天野に連絡しようとしていたが、2人とも出ない。



ガサッ!



2人の目の前にウニのような頭のツクモが現れた。

白いスーツを着ている。


「…なんだ。」



プルルルル…



「…梶田、なんだ?今俺たちの目の前にツクモが…」


「天野は…!天野はツクモ!槍のツクモ…」


「そうか…なら…聞いてみるしかないな。」


青柳は電話を切る。

そして、咲卦穂に近づく。



「天野咲卦穂。お前は俺たちの仲間か?

そうでないなら今ここで消す。」



「…私は…人間だけど…ツクモでも…」



「咲卦穂ちゃん⁈嘘だよね?」



「…」



咲卦穂はウニ頭を半分だけ解除する。


目は真っ赤に充血していて、顔も少し刺々しい。



「…味方かはわかりません…まだ今は…」




ズバッ!




「…え…?」




咲卦穂のウニ頭を解除した方の顔から大量の血が溢れ出る。




「青柳!何してんの⁈」



「…今後敵に転ずることがあるなら、

消すほかないだろう。

天野咲卦穂…いや、槍のツクモ!

覚悟しろ、ぶっ殺してやる。」


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